青島広志コンサート&トーク「 恐ろしく怪美なアルトの饗宴」~アルトとお付き合いする人生ってのも~

7月14日(水)に、カワイ表参道のコンサートサロン パウゼで開催された、青島広志先生のコンサート&トーク、「恐ろしく怪美なアルトの饗宴」を鑑賞。今日はその感想を。

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コンサートちらし。曲目見ただけでなんだかぞわぞわしますよねぇ。アルトあるいはメゾが歌うオペラアリアを並べると、どうしても「魔女」だの「占い師」だの「老婆」だの「霊媒」だの、大変オカルトっぽいキャラが多くなるので、演奏会のタイトルもそういうニュアンスのタイトルになり、実に夏場にふさわしいコンサート、という感じでした。(待てよ、このコンサート、もともと五月頃に開催予定だったのがコロナで延期になったのか?このチラシの写真の日付も5月になってますね。5月の怪談。)

MCにせよ、選曲にせよ、エンターテイメントとアカデミズムがシニカルな諧謔で絶妙にブレンドされた青島先生ワールド全開。楽しく笑いながら音楽の歴史や背景や原典まで学べてしまうという、世の中の学校の授業がみんなこんな風だったらきっと日本の子供達はもっと学校が楽しくなっただろうなぁ、と思わせてくれる本当に楽しい時間でした。演奏会の後に、今度青島先生が書かれた新作オペラ「瓜子姫の夜」の原作者、諸星大二郎先生の作品群を巡って青島先生と少しお話できたのも凄く嬉しかった。青島先生がお好きだという「栞と紙魚子」シリーズ、私も大好きなので、もっと色々語りたかったなぁ。

怪美、なんて言われてちょっとおどろおどろしい印象を強調されたアルトの歌い手さん達4人、どの方も青島先生の諧謔にも負けず本当に素敵なパフォーマンスを見せてくれました。今回登場されたソリストの方々のうち、三橋先生、三津山さん、久利生さんは、女房の公演で共演させていただいたことも多く、舞台を降りた後に言葉を交わすことも何度もあるんですけど、歌が素敵なだけじゃなくて、お三方とも本当にキャラがいいんですよ。おどろおどろしいなんてこと全然なくって、なんともさっぱりしたいい方達ばっかり。三津山さんは、実は2000年(もう21年も前!)に、大田区民オペラの「コシ・ファン・トゥッテ」でドラベッラを歌ってらして、その時合唱団にいた私のことを覚えてくださっていた。「よく覚えてますよー」って言われて本当に嬉しかったです。

そう思って身の回りを見回してみると、アルトとかメゾソプラノの方ってのは結構いい方多いんだよねぇ。ずいぶん昔に、この日記で、ソプラノ、アルト、テノール、ベース、という声の声部と性格が多少リンクしてるんじゃないか、みたいな分析をしたことがあったんだけど(こちら→ 声と性格 - singspieler’s diary )、そのときにアルトについて書いたところを抜粋してみると、こんな感じ。

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あまりこだわりがなく、何でも包容してしまう。あんまりこだわりがないので、音程にもこだわりがなく、かなりテキトーな音を出していることがある。あんまり包容力がありすぎて、律儀なアルトは、自分で抱え込みすぎて自爆することがある。律儀でないアルトはなんでも笑って済ませてしまう。笑い声が豪快なので、笑うと済んでしまう、という利点もある。意外と自己主張がなく、高い声で自己主張するソプラノに流されてしまう傾向あり。平均年齢が高い合唱団では多数派を占め、平均年齢が低い合唱団では少数派で希少価値あり。豪放な声の割りには女性らしく、包容力ある優しい性格なのだが、オペラでは逆で、男勝りの自己主張の強いキャラクターを演じることが多い。ソプラノの中には、そういった役への憧れから、強い「メゾソプラノ願望」を持つ人がいるらしいが、当のアルトたちは、そういう自分に対するこだわりもあんまりない。

 

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こう書くと多少ディスっているように思われるかもしれないけど、単純にアルトっていい人が多いと思うんだよなぁ。プライド高くて自分中心でみんなに注目されないと気が済まなくて人に厳しくてベースが少し音を外しただけで刺し殺すくらいの視線でにらみつけてくる声の高い女性パートの方々より大変温厚で心が広くてそのくせちょっと控えめで優しい方々が多い気がする。アルトの方々とお付き合いする人生ってのもよかったのかもしれないなぁ。あれ、オレの女房の声部ってなんだっけ?