ドラマと楽器

いい陽気になってきました。来週からはいよいよGWに突入。とはいえ、こちらは29日のお芝居のことで当面頭が一杯です。GWはのんびりしたい、という以外に何の予定もない・・・ま、こういうのもありかな。

さて、昨夜、久しぶりに、「古畑任三郎」を見てました。フジテレビのCS放送で、「白い巨塔」の後枠で放送が始まったんですが、やっぱり面白いですねぇ。三谷さんの脚本って、キャラクターがすごく「立っている」んですよね。キャラクター造型の素晴らしさと、田村正和さんをはじめとするキャスティングの妙のおかげで、どんどん引き込まれてしまう。「古畑任三郎」シリーズは、回によってストーリの出来・不出来が結構ある気がするんですが、(回によっては、本当によく考え抜かれたストーリの時もあるけど、相当強引なストーリもある気もするんです)でも、「このキャラクターが、次に何をしてくれるだろう」という興味と、その興味をどんどん引っ張っていってくれるキャラクターの予想外の行動に、結局最後まで見てしまう。さすがです。

さて、でもここでは、古畑任三郎の中で使われている音楽について、ちょっと面白いなぁ、と思ったこと。

ご覧になった方はご存知だと思うのですが、古畑任三郎の音楽には、歌はなく、全てがビッグバンドによるインストゥルメンタル演奏です。いわゆる「劇伴」というやつですね。本間勇輔さんという方が作曲・編曲されているのですが、この音楽がドラマを非常に盛り上げている。ジャズを基調としながら、正統派のクラシック音楽のようなアンサンブルもあり。その音楽がドラマに絡むときに、ある意味、楽器の持つ特性を極端なまでに強調することで、「古畑任三郎」というドラマ全体に流れる「ハッタリ精神」ともいえるものが、非常に印象づけられている気がするんです。

例えば、主題曲なんですが、冒頭で、バイオリンが短いパッセージをピアニシモで刻むと、なにか、犯罪者のひたひたとした足音や、緊迫した空気が伝わります。バイオリンというのは、数で押してくる楽器なので、こいつがピアニッシモで迫ってくるのは結構怖い。主旋律をガンガン鳴らすのではなくて、バイオリンが細かく刻む音って、いろんな雰囲気を出すのに向いてますよね。あの「美しき青きドナウ」の冒頭のせせらぎとか。
ここに、トロンボーン(だと思うんだけど)で、古畑任三郎のテーマが流れる。トロンボーンというのがミソかなぁ、という気がする。トランペットとかじゃなくて、ボーン。ボーン、という通称自体、トロンボーンのちょっと間抜けた感じが出てますよねぇ。間抜けた音質で奏でられるテーマが、これがとてもかっこいい。このあたり、かっこいいのにどこかおかしい「古畑任三郎」のキャラクターと、楽器のキャラクターを、すごく合わせている気がする。
なんか、そういう、「楽器の本来持つキャラクター」と、場面や登場人物の色つけとが、極端なくらいにシンクロしている気がするんです。このあたり、楽曲分析に疎い私にはちょっと手に余る作業なんですが、各場面に流れる音楽と合わせて分析していくと、結構面白いかも・・・なんて思っちゃいました。

・・・そう考えると、ドラマの「劇伴」で、どんな場面にどの楽器が使われているか、なんていうのを、統計的に調査してみると、これは結構面白いかもしれませんね。殺人のシーンでは、トランペット、とか、のどかな田園風景では、ホルン、とか。そういう関連性って、結構あるんじゃないかと思うんです。「古畑」では、そういう関連性を極端に強調することで、ドラマの「パロディ性」みたいなものを表現できている気がします。芸大の学生さんとか、こういう論文書いたりしないかなぁ。結構面白いテーマだと思うんだけど。