三日坊主

基本的に怠け者なので、決めたことが守れたためしがあまりない。その一方で、不必要に高いプライドに、実際の能力が伴っていない、という自覚もある。そういう私が、突如として、向上心に目覚めるのが、4月である。

しかし、多分こういう人は他にも多いはずだ。4月は環境が変わる季節である。着慣れないスーツに身を固めた新入社員が通勤電車の混雑度を上げる。通勤電車にも慣れていないため、時々駅で殴り合いをしている新人たちもいる。そのエネルギー、私にもちょうだい。会社の大規模な組織改編や、人事異動があるのもこの季節。自分の周囲が変化する時、自分自身の変化のなさ、成長のなさに愕然とする。それが毎年の恒例行事。成長がないならまだしも、退化してないか?成長したのはこれだけか?と去年より出っ張った腹を見つめる寂しさ。そして、何とかせねば、と突如思い立つわけです。

てなわけで、私が何度となく手を出したのが、「NHKラジオ講座」のテキスト。おお、なんて王道なんだ。にわか学習意欲の終着駅。駅の混雑緩和にご協力ください。すみません。ちなみに、最近の韓国ドラマ人気で、あざとく韓国ドラマをテキストに使った「NHKハングル語講座」のテキストが馬鹿売れだそうだが、全然関係ないですね。すみません。私が今までに2度手を出したのは、「ビジネス英語」ですよ。おお、なんて俗物なんだ。すみません。そしてこれがまた続かないんだ。なんて根性がないんだ。すみません。さて、何回すみませんと言ったでしょう。すみませんねぇ。

語学力、というのは、身体トレーニングに似ていると思う。とにかく反復すること。あるいは、反復せざるを得ない状況に追い込むこと。昔、ある筋骨隆々たる人物が、「この筋肉、酒屋のバイトで鍛えたんです」と言っていたのを聞いたことがある。同じことだ。自分の英語力が格段に向上したのは、会社で、英語を使って米国人と交渉をする部署に配属されたとき。そういう環境に追い込まれないと、人間は、特に火急に必要のない反復行動を維持できない。維持するためには強固な意志が必要。そして私には強固な意志はない。あるのは腐った豆腐だけ。豆腐は腐ってるからいいのか?これ前も書いたな。豆腐自体は、腐ってるわけじゃなくて、漢字でこう書くだけらしいぞ。そんなことはどうでもいいんだよ。

というわけで、五月は挫折と自己嫌悪の季節である。この頃には、電車を埋めた新入社員や、大学生活を張り切って始めた新入生の多くが脱落し、通勤電車の混雑ぶりが大幅に緩和される。GWの前と後で、混み方が全然違うんだよね。みんなどこに行ってしまうんでしょうねぇ。また春が来るまで、土に穴掘って眠ってるんですかねぇ。腹とったら死ぬだろうね。死ぬのはやだね。草野心平

私が今まで、突如として向上心に襲われ、思わず手を出してしまったものは、ビジネス英語だけではない。CNNニュースをヒアリングする、という教材もあった。交渉相手が南米人のこともあったので、スペイン語講座に手を出したこともある。昔大学で習ったことがあるから、と、ドイツ語講座をかじろうとしたこともあった。語学が中心ですね。もちろん、全部1か月で挫折したぞ。どうだ参ったか。自慢してどうする。

あと、珍しいところでは、簿記3級の勉強、というのがありました。これは意外と続いたんだけど、やっぱり2ヶ月は続かず、試験を受ける、と言う当初の目的まで到達せず。時間が取れない、というのはただの言い訳で、本当にやる気があるのなら、時間をきちんと取る努力をするべきなんです。それができない、というのは、やる気がないからですよねぇ。

この向上心の発作は、我が家のAV環境が向上する、という副産物を産みます。MDプレーヤも、CDからMDへの録音ができるミニコンポも、この向上心キャンペーンの中で我が家にやってきました。通勤電車の中で、録音教材を聞くために必要だ、と張り切って購入。そして今、ミニコンポは娘の童謡を奏で、MDプレーヤは、女房の歌のレッスンを録音したり、ガレリア座の音取りMDを再生したりしています。なんだ、役に立ってるじゃん。ということで、ま、笑って許してちょうだい。