インプットに飢えてきた

日常、TV番組を見たり、普通に人と接しているだけでも、インプットは一杯あって、それをこの日記に毎日つづっています。でも、時々、無性にナマの舞台を見に行きたくなります。今週末には、山口俊彦先生のリサイタルをお手伝いするので、久しぶりのインプットです。ほんとに楽しみ。

CATVや、CS放送で、舞台専門チャンネルとかが多くなってきましたから、TVで舞台中継を見る機会も増えてきました。でも、ナマの舞台って全然違いますよね。先日も、TVの映像には「編集」がほどこされている、という話を書きました。そういう「編集」を経た、舞台中継というものは、ナマの舞台とは全く違うもの。極端な話、野球のTV中継とラジオ中継と同じくらい違う。

よく言われる話かもしれないんですが、人間が処理している情報量って膨大なものなんですよね。その場の空気の匂い、温度、湿度。全身を包む音。光。そういうものを全部ひっくるめて、舞台。TV中継だと、そういう膨大な情報の、ほんの一部分を切り取って伝えることしかできない。

以前、クラシカジャパンだったかで、確かピーター・セラーズという演出家が演出した「ドン・ジョバンニ」をちらっと見たことがあります。舞台を現代のニューヨークに移し、ドン・ジョバンニとレポレロを、ハーレムの黒人の双子と設定した、という話は聞いていて、面白そうだなぁ、と思っていたのですが、このTV中継がひどかった。やたらと歌手の顔のアップばっかり延々と撮っている。時々、不可思議なオブジェが、やっぱりアップで出てくる。要するに、舞台の全体像が全然見えないんです。これは一体どこで起こっていることなんだ?というのが、全然分からなかった。あまりにストレスが高くて、ちらっと見てすぐやめちゃいました。

ガレリア座の過去の公演も、ほとんどがビデオで記録されています。業者さんはとてもよくやってくださっているし、回を重ねるごとに、次第にこちらの意図をよく汲んでくださるようになってきました。それでも、広い舞台の中で、端っこで細かい芝居をしている姿が記録されていない、なんてことはしょっちゅうあります。逆に、「この場面は、舞台全体のバランス・美しさを見せたい!」と思っているのに、ソリストの一人がずっとアップになっていたり・・・こればっかりはどうしようもないこと。本番でしか見られない素晴らしい場面って、いっぱいあります。(だから、次回ガレリア座が公演をするときには、是非、会場に直接、足を運んでくださいね!)

もちろん、TV中継だと、別の情報を加えることができます。ズームアップとか、フェイドアウトとか、オーバーラップとか。ナマの舞台では見えない、一人一人の役者さんの汗のしずくまで見えます。でもそうやって加工「編集」された情報というのは、既に、原情報とは異なるものになってしまうんですよね。

劇場に包み込まれた中で、役者さんや演奏者の緊張感を共有しながら味わう「ナマの舞台」に勝るものはやっぱりありませんよね・・・というわけで、キャラメルボックスの西川さんの「コントラバス」のチケットを押さえてしまった。後狙っているのは、新国立の「ファルスタッフ」。とにかく、ナマの舞台に飢えてます。いくぞー。

P.S.そうそう、kyoro99さん、マリツァの台本見つかりました。ありがとうございました。ビデオの行方探しは別途やりたいと思います。