@onefive ーNO15E MAKER:Undergroundー彼らの物語、僕らの物語

@onefiveの大阪のライブに遠征してきました。少しでも出費押さえるための夜行バスでの往復は、もう60近いジジイには相当キツかったけどねぇ。でも、このライブには行ってよかった。本当に行ってよかった。

 

@onefiveは、先日の「バズリズム02」でも、「育ちがいい」ってバカリズムさんに言われていた通り、Amuseという大手芸能事務所のKidsの中でもエリートとして育てられた子達。でも、その中でも熾烈な競争があったり、ご家族含めた色んな苦労があるってことは想像がつくし、さくら学院というグループ自体が、ステージを作り上げていくプロセスで、メンバー同士の葛藤や挫折感なども含めて、Low Teenの子供たちがスーパーレディを目指して成長していく日々のドキュメンタリーをエンターテイメントにしたグループ、という側面があった。

 

要するに、僕らは昔から、@onefiveの四人のダークな部分をチラチラと垣間見ることがあったんだよね。挫折の涙、望む場所に立てない悔しさ、メンバーとのぶつかり合い。そんな中でも、吉田爽葉香さんが日誌でチラッと触れた、お父様の早逝のエピソードは衝撃で、この人のパフォーマンスのぶれない軸や、周囲に向ける優しさの源泉って、お父様という守護天使に天から守られている強さなのかなぁって思った。メンバーの栄養管理をしてあげられるかもって栄養士を目指すって、もう聖母じゃん。

ameblo.jp

 

この子達は決して温室育ちのヤワな子達じゃない。色んな喪失や壁や熾烈な競争を乗り越えてきた子達。それでも、さくら学院を母体に、在学中から@onefiveという4人グループとしてデビューする、という路線は、同じ年代のガールズユニットと比べればはるかに恵まれたスタートだったはず。同じさくら学院から生まれたユニットである先輩のBABYMETALが、メタルという敵だらけの戦場にカワイイという武器を引っ提げて突撃していった物語に比べれば、大事に育てられたお嬢さん達が父兄やAmuseのバックアップを受けて、順風満帆なスタートを切る未来図が描かれていたはず。

 

デビューのタイミングを襲ったコロナ禍、というのは、この「育ちのいい」「恵まれた」グループに試練の物語を与えた神様のはからいだったのかもしれない。予定されていたイベントは延期や中止を重ね、配信ライブで誰もいない客席に向かって空しくパフォーマンスをする日々の中で、10代というその時しかない輝きを直接届けられないままに時間はどんどん過ぎていく。その焦燥感がどれほどだったか、僕らには想像することしかできないけど、パフォーマーの生きがいを奪われた日々は、15歳16歳の多感な少女たちにとって、自分自身の生きる意味、人生そのものの目的まで突き付けられた試練だったのかもしれない。今回のライブで、ある意味唐突な感じでラストに披露された「誰もいませんですか(仮」という楽曲は、この頃の焦燥感、自分達の将来を塗りつぶした不安の闇と、その先にある「死」まで見据えた切迫感極まる楽曲で、過去の楽曲の衣装を舞台上に残して無言で去っていく唐突なエンディングまで、このグループの持つ苦難の「物語」を象徴するような楽曲でした。

 

そうやって自分達の辿ってきた苦難の道のりを振り返っていきながら、今回のライブでの4人の視点は、既に大人のそれに成長している印象がありました。Yogibo META VALLEYという会場は、南海電車の高架下という場所のために、屋上を走る電車の走行音が時折低く会場全体を揺らす、という、ライブハウスとしては最悪の立地環境で、逆にいえばその電車音に負けない爆音とリズムを中心とするクラブ系のノリノリの音楽がピッタリ合う会場かな、という印象。冒頭のMCで宣言されたように、この電車音というNOISEを自分達の発するNO15Eでぶっ飛ばそう、という、聴衆をあおるパワー含めて全く別レベルに進化した自信が、この会場を選んだ理由なのかな、と思ったり。地下鉄が轟音を上げて通過していく冒頭の映像も、この会場の立地と「NOISE」=発声というテーマを重ね合わせていましたね。

 

デビュー曲のPinky Promiseを始めとする初期の曲も、リズムを強調したクラブ系の大人のアレンジでガッツリ乗れる曲に変身していて、聴衆を煽る声かけも、フェスやリリイベで客席との距離を詰めてきたこの半年の経験が血肉になっている感覚があって、6月のワンマンライブの時よりも、4人が一回りも二回りも大きく見える。そんなメンバーの声に応じて思う存分声を出せる幸せを、fifth(ファンネーム)の全員も共有している空間。fifthにとっても、この4人と思う存分盛り上がりたかった、声を出したかった、という思いが満たされた時間。「NO15E MAKER」というタイトルが、千葉のリリイベ会場でfifthが「SAWAGE」コールで思う存分弾け過ぎて、会場のショッピングモールから苦情が来た、という挿話から発想された、という裏話がMCで紹介されていたけど、fifthも閉塞感と開放感を4人と共有してきたんだよね。

 

彼らの苦難の「物語」は、苦しむ彼らを見守ってきた僕らfifthの「物語」でもある。グループとファンが同じ「物語」を共有しているグループは強いと思う。BABYMETALが、YUIMETALの卒業や藤岡幹大さんの昇天、その不在からの恢復、という物語を、メイト達と共有して走り続けた姿が、METAL GALAXYやOTHER ONEの神話的パフォーマンスに昇華していったように、@onefiveが自分達の「物語」を一つのLEGENDに昇華させようとしている、そして僕らfifthも、間違いなくこのLEGENDを共有しているんだと、そんな一体感で心震えたライブでした。電車音が混じるこの会場のライブは恐らく映像化されないのじゃないかな、と思うし、実際カメラもほとんど入っていなかった。この一期一会の空間と、この場所で紡がれた物語を4人と共有できたことを天に感謝しながら、深夜バスの狭い座席に老体縮めて東京に戻ってまいりました。そんなしんどさぶっ飛ぶライブだったよ。一杯レスくれた4人、そして、直前まで舞台袖から客席をうろうろしながら会場の様子を見ていた佐竹義康さんはじめスタッフの皆さんも、お疲れさまでした。最高の時間をありがとう。六本木ではまたまるで違う進化を遂げた姿見せてくれるだろうね。今から本当に楽しみです。

終演後、舞台に残された初期の楽曲の衣装たち。直接会うのは初めてだったね。僕らとの時間楽しんでくれたかな。あの子達のしんどい時間を彩ってくれて、本当にありがとう。