ライブってチーム力なんだなぁ

大坂なおみさんが全豪オープンで優勝した時に、「私のチームに感謝します」とコメントしてましたね。彼女も含めたトップアスリートの高いパフォーマンスが、様々な裏方さんの努力に支えられている、というのは最近結構フォーカスされることが多い気がする。コーチは勿論、フィジカルだけじゃなくメンタル面も含めた様々なトレーナーさん達がいて、さらにそのチームを支えるスポンサーや、そのスポンサーをつなぎとめるためのマネジメントや広報、果ては栄養士さんからコピーライターさんまで。アスリートがビッグになればなるほどチームの規模も大きくなってくるし、まさかそんな人が、と思うような人までがチームの一員として汗を流していたりするんだろうなって思います。

そういう構造って、スポーツのアスリートだけじゃなく、私が多少関わっている舞台活動や音楽活動にも当然共通することで、芸能人さん達なんかは、マネージャーさんや所属事務所などの様々なスタッフさんで構成された「チーム」に支えられて輝いているわけだし、逆にそういうスタッフさんに恵まれるかどうかが成功のカギになったりする。大物芸能人さん達がそういうチームに支えられているっていうのは色んな所で実感しますよね。でも、大物芸能人さんではなくても、私みたいなアマチュア楽家であっても、スタッフやマネジメントのチーム力が活動を支えている、というのが舞台活動なんだと思う。よく言われる話だけど、アマチュア合唱団を支えているのは、有名合唱指揮者のネームバリューも大きな要素だけど、練習会場を確保したり、指揮者やピアニストや団員のスケジュールを管理したり、団費や演奏会費などを管理したり、演奏会の日程や会場を確保したりするマネジメントの力が相当大きかったりするんです。有名指揮者に率いられた素晴らしい合唱団が、支えていた団長さんが海外赴任で不在になった瞬間に解散しちゃう、なんて話も昔からしょっちゅう聞く話です。

特にライブ活動っていうのはそういうチーム力が問われるパフォーマンスだと思うんだよね。TikTokYouTubeなどの配信動画でも、もちろん完全一人作業でコンテンツを作り上げているわけじゃないと思うんだけど、かなりの部分はグレン・グールドみたいにスタジオの中で発信する内容と一人で向き合ってる感じがする。でも「ライブ」となった瞬間に、配信ライブであったとしても、一気に「チーム」としての瞬発力が表に出てくる感じがするんだよね。それはやっぱり「ライブ」という一期一会のパフォーマンスが持つ特性のような気がする。それは例えば自宅から配信しているLine Liveのような極めてプライベートな配信コンテンツにも感じること。

コロナ禍が「ライブ」を中心とした舞台表現を瀕死の状態に追いやっている、と思うのは、「ライブ」という表現が失われることで「ライブ」を支えていた「チーム」が存続できなくなる、という危機感も大きいんですよね。パフォーマーを支えているマネジメントチームだけじゃない、単純に、舞台を裏から支えてくれていた照明スタッフ、舞台スタッフ、音響スタッフ、大道具から小道具、衣装スタッフ。練習会場を経営しているホールスタッフも加えて、氷山の頂点で輝いているパフォーマーを支えている広い裾野の「チーム」が瓦解してしまうのが一番怖いと思う。

そういう「チーム」の大切さって、色んな所で感じることで、最近それを3つの「ライブ」で実感したんです。一つ目は、スケールの大きなイベントで、例によって月イチペースで通っているBABYMETAL武道館10daysのシリーズ。SU-METAL、MOA-METALの二人の輝きはもちろんなのだけど、二人を支えるサポートダンサーの岡崎百々子さん、もう家族と言ってもいい神バンドの面々、様々なマネジメント上の課題を克服して、新しい挑戦を続けるプロデューサのKOBA-METALの奮闘、そして何よりも、武道館を光と音の異世界に仕上げたステージスタッフの技術の高さ。ツイッターでも話題になっているFrom Dusk Till Dawnのステージは、スクリーン映像と照明とパフォーマンスの作り上げた神秘的な世界観に、自分が現実世界にいるのを忘れさせるような渾身のステージで、コロナで表現の機会を奪われた照明クリエーターさん達の執念を見た思いでした。

もう一つが、今日仙川フィックスホールで開催された、末吉朋子さんと和田ひできさんのデュオリサイタル。お二人がじっくり練りこんだプログラムの充実感と、パフォーマンスの見事さ、それを支える田中知子さんのピアノと、これまた凄く濃密な「チーム」力を感じさせるライブでした。この時期なので、150名のキャパの会場に30名程度しかお客様を入れない小さなコンサートでしたが、この時間、この空間に聴衆としていられることを本当に感謝した密度の濃い時間。ラヴェルの「ドゥルシネアを思うドン・キホーテ」、素敵な曲だったなぁ。自分もちょっと歌ってみたいなぁ、なんて思ったけど、それこそ10年くらいかかりそうだ。

もう一つが、これも最近毎週のお楽しみになってしまった遠坂めぐさんのYouTubeの配信ライブ。遠坂さんがお一人で、ご自宅のスタジオからピアノに向かって歌ったり喋ったりする1時間の配信ライブで、一瞬見ればどこにも「チーム」感なんかないんだけどさ。そのスタジオの仕立てとか、ちょっとしたインテリアとか、ライティングや音響の調整、遠坂さんの衣装とかに、ご家族含めた「遠坂チーム」のサポートが見え隠れするんだよね。推しのさくら学院の子達もそうだけど、若いパフォーマーが活躍できるのは何よりも、いわゆるステージ・ママさんのサポートを中心とした「家族」という「チーム」の支えが一番必要だったりすると思います。2番目にあげた末吉さんと和田さんのご夫婦という「チーム」にせよ、「ライブ」を一番根っこで支えているのは「家族」のような極めて緊密なチームの力で、そういう密な絆が見えるからこそ、「ライブ」というパフォーマンスには人間の温もりや体温まで感じられる気がするんです。だからこそ、だからこそ何があっても、コロナがどれだけ暴れようが、絶対に「ライブ」は戻ってくるって信じてるんですけどね。