世の中がコロナ騒動でカオスと化す前に、娘が所属している慶應ワグネル・ソサイエティ・オーケストラの演奏旅行が開始するという。京都、福岡、とめぐって、演奏旅行の締めくくりが、2月29日のサントリーホールでの演奏になる、というのだけど、
「その日はパパは無理だなぁ。翌日、合唱団のアンサンブルコンテストがあって、29日はその直前練習なんだよ」
「えー、せっかくメインに乗ることになったのにー。マーラー10番、聞いてほしい」
というやりとりの果てに、「じゃあ演奏旅行先の福岡に来なさい!」と言われて、お、それもいいな、と思い立ってしまいました。会社に有給を願い出て、1日半の福岡弾丸旅行。考えてみれば、こういう遠征旅行は、BABYMETALで大阪とか神戸に行った以来。推しゴトと一緒にするな、と言われそうだけど、まぁ娘ってのは父親にとってアイドルみたいなもんですからね。ということで行ってまいりました、2月19日のWagner Society Orchestra福岡公演の推しゴト。
でもその後のコロナ騒動で、2月29日のサントリーホールの演奏会は延期になり、私の合唱団のアンサンブルコンテストも出場辞退となって、この週末に至ります。そう考えると、この福岡でのマーラーを聴けたのはまずはラッキーでした。
行くのを決めたのが1か月ほど前だったんですが、最近って国内の飛行機チケット安いんですねぇ。1か月前くらいに予約すると、往復でも3万円台で福岡まで行けちゃう。そして中洲のカプセルホテルを予約したんだけど、これが3000円くらいで泊まれて、大浴場とか充実していてすごく快適。今後の推しゴトの参考になるなぁ、と思いながら予約。
実を言えば、福岡空港には仕事で結構立ち寄ることが多いんですが、福岡空港を経由して博多に出てしまうことがほとんどで、福岡市内を歩いたのはこれが初めて。コンサートのあるアクロス福岡 シンフォニーホールは、天神駅と直結している商業施設の中にあるホール。内装がとにかく美しくて、特にシャンデリアが、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場のシャンパンシャンデリアそっくりのきらびやかさ。
素敵なホールでした。
オーケストラの門外漢である自分が演奏について色々感想をいうのはおこがましいとは思うんですが、ウェーバー「魔弾の射手」序曲という鉄板の前奏から、リムスキー・コルサコフの「スペイン奇想曲」という前プログラムの2曲はとても気持ちよく聞けてよかったです。メインがなにせマーラーなので、初心者でも楽しめるものを、という選択だったのかもしれませんが、個人的にも、以前ガレリア座で全幕演奏をしたことのある「魔弾の射手」はなじみがありましたし、リムスキー・コルサコフも、一部「シェーラザード」そっくりの旋律が出てきたりして、軽やかでメロディックな素敵な曲だなぁ、と思いました。
ワグネルは日本のアマチュアオーケストラのトップクラスに入るオケなので、そういう曲の魅力や感動をしっかり伝えることができる技量のあるオケ、だと思います。演奏技術にムラがないわけではないけど、それでも楽曲の本質とか全体の流れをきちんと押さえた演奏を聞かせてくれる。
メインで演奏されたマーラーの10番は、ほとんど狂気と紙一重のような躁鬱状態のマーラーが、自分の頭の中に鳴り響く音楽をスケッチに書きなぐっているような、混沌とした印象が強くて、「ちゃんと予習しておいてね!」と言われて事前に色んな録音聞いたり、解説読んだりしたんですけど、なんかピンとこなかった。でも、このワグネルの福岡の演奏では、特に第五楽章でなんか泣けてきちゃった。殉職消防士の葬送の太鼓の音、と言われる大太鼓の音が鳴り響いた後、長いフルートのソロ(絶品でした)にわし掴みにされた心の琴線を、これでもか、とばかりに何度もなぞっていく弦のさざ波のような響きが続く。安らかで平穏な境地を描いているようにも聞こえる甘美な響きなのだけど、いつまでも静かな安寧の境地にたどり着けない者の、平穏への希求の叫びや嘆きのようにも聞こえてくる。
コロナ騒動で色んなところでパニックになっていて、各種イベントや演奏会が次々中止になってます。まさに混沌と混乱。こんな状況下では、音楽には何の力もない、と言った人がいて、確かにその通りかも、とは思うんですけど、この演奏会のマーラー10番を聞いたことって、どこかで私の心の栄養になっている気がするんですよね。音楽って、危機を変える力は持たないかもしれないけど、でも、危機の中を生きようとする人の力や支えにはなるんじゃないのかなぁ。
演奏を聴いたあと、中洲の居酒屋で長浜ラーメンをいただきました。本場の長浜ラーメンって全然しつこくなくってあっさりしてるんですね。翌朝少し時間があったので、一度行ってみたかったガメラとギャオスの初戦場になった福岡ドームにも足を延ばしてみる。海辺にある地方都市って、やっぱり楽しいなぁ。
美味しかった!
一度来たかったんです。新しいビルが建っていて、ガメラの場所がなくなってた泣
また行きます!