面食らうこと

海外生活とはこういうもの、と分かっていても、日常生活で面食らうこと、とまどうことはいっぱいあって、そういう経験が海外生活の醍醐味なんだろうな、と思いつつ、やっぱり毎日面食らっております。今日はそのあたりのことを。

・セールス電話

セールス電話ってのは、日本でもおなじみで、どこで嗅ぎつけたのかこちらの電話番号を調べて、「資産運用に興味はありませんか?」なんて言ってきますよね。同じようなセールス電話はこちらでもあって、「セキュリティサービスですが」とか、「新聞とりませんか」なんて電話がかかってきます。まぁ日本と同じだなぁ、と思うのだけど、結構面食らうのが、自動音声のセールス電話。電話がかかってきて受話器を取ると、録音されたメッセージで、「あなたはラッキーです、この番号に折り返しいただければこんなサービスを受けられます」という電話がしょっちゅうかかってくる。人件費を節約して興味のある人だけをピックアップしようという、きわめて合理的なアプローチ。とはいえ、やっぱり、受話器を取っていきなり流れてくるテープ音声には面食らう。

・トイレットペーパ

トイレットペーパってのは新しい部分が上にくるもので、だから日本では、紙を切るカッターが上についていたりするんですが、こちらでは新しい部分が下に垂れさがっているのが普通。その代り、切れ目が細かくついていて、簡単に切れるようになっている。そうは言っても、トイレに駆け込んで、さて、ペーパを切ろうと思うと、どこから引っ張ればいいのか、と一瞬面食らう。ちなみに、こちらではウォシュレットには一切お目にかかりません。日本に帰って真っ先にやりたいことの一つは、ウォシュレットで用を足すことです。

・レストランの分業体制

レストランに足を踏み入れると、入り口できれいなお姉さん(普通のおじさんの場合もあるが)が、席まで案内してくれます。でも、このお姉さんはオーダを取ってくれるわけではない。オーダを取る人は別にいて、しかもテーブルごとに担当が決まっている。隣のテーブルのオーダを取っているお兄さんに、「オーダいいかい?」と声をかけても、「ちょっと待って」と断られて、担当の人を待たないといけない。テーブルの上の水を補充してくれるお兄さんも、オーダは取ってくれません。案内役・オーダ担当・水差し及びテーブル片づけ担当、という分業体制がきれいに出来上がっている。オーダ担当のお兄さんが別のテーブルに引っ掛かっていると、いつまでも待たないといけない。別の人に声をかけて断られると、やっぱり一瞬面食らう。

・お勘定

レストランといえば、お勘定をそれぞれのテーブルでやる、というのもちょっと違和感がある。日本みたいに、入り口にレジがあって、ちゃんと勘定書きとお金を照合している方が安心だと思うんですが、テーブルに勘定書きを持ってきてもらって、チップを上乗せした金額を挟んで出ていく、というシステムは、ある意味お客様の良心にゆだねている部分があって、これだけモラルのない国に見えるこの国で、このシステムが成立しているのが面白いなぁ、と思う。

・ドア

モラル、と言えば、こちらの方がモラルが高いなぁ、と思うのが、ドアの扱い方。ビルの出入り口や乗り換えのドアなど、たくさんの人が出入りするドアでは、通り過ぎた人が必ず後ろの人を気遣ってドアを手で押さえていてくれます。混んだ電車の中でも、お年寄りや病人や子供に席をゆずる、というのは当たり前に行われているし、そういうモラルの高さには感心します。一方で、ゴミの扱いだの車の運転に見られるモラルのなさとのギャップにも結構面食らう。頼むからウィンカー出して車線変更してくれ。

・Bless You!

常識として頭では知っていたのだけど、こちらの人がくしゃみをするたびに、周りの人が、「Bless You!」と言い、言われた人が「Thank you!」と言うのにも結構面食らう。もちろん、全然知らない赤の他人が目の前でくしゃみしても、誰も何も言わないんですが、知ってる人だったら必ず、このやりとりが行われます。声のでかい人がくしゃみをすると、遠くの席から「Bless You!」が聞こえてきて結構面食らう。同じように、頭では分かっていたけど、「Good Morning」の後に必ず付け加えられる「How are you?」にも、ときどきどう答えていいものやら、と面食らう時があります。寝不足や二日酔いの朝は特にそう。

以前もこの日記に書いたことにも重なるのだけど、米国と言う国の強みは、個人と個人の間の言葉のコミュニケーションをしっかり維持していることだと思います。「Bless You!」「Thank you!」や「How are you?」「Good!」という言葉のやりとりを大事にしているから、言葉に対する信頼度や依存度が高い。それが彼らの会話力・ネゴシエーション力を高めている基礎のような気もします。