「アドリアーナ・ルクヴルール」〜継続は力〜

週末、埼玉オペラ協会の「アドリアーナ・ルクヴルール」を見に行く。この協会が以前上演した、「カルメン」の舞台で助演させていただき、ちょっとご縁ができた関係で、ブイヨン公爵夫人役の田辺いづみさんが、チラシを送ってくださったのです。田辺さんがキープしてくださった席が、ほぼ中央の無茶苦茶いい席で、目いっぱい堪能いたしました、女の戦い。
 
指揮 高野秀峰
演出 中村敬一
管弦楽 埼玉オペラ管弦楽団

アドリアーナ: 栄 千賀
マウリツィオ: 持木 弘
ブイヨン公爵夫人: 田辺 いづみ
ミショネ: 村林 徹也
ブイヨン公爵: 大澤 恒夫
シャズイユ僧院長: 吉田 伸昭
ジュヴノ:折山 千津子
ダンジュヴィル:杉下 友季子
ポアソン:園山 正孝
キノー:田中 健晴

合唱 埼玉オペラ合唱団
バレエ スタジオF
 
という布陣でした。

まずは、「アドリアーナ・ルクヴルール」というオペラ自体、題名くらいしか知らなくて、有名なアリア「私は創造の神の下僕」も、ちらっと聞いたことがあるかないか、くらい。一応筋書きは予習して行ったんだけど、いや面白かったです。第一幕は、「ナクソス島のアリアドネ」みたいな感じなんだけど、舞台の奥に劇中で上演中の舞台のステージがある、という入れ子構造がすごく面白かった。手前の楽屋で繰り広げられる陰謀と、奥の劇中の舞台のアドリアーナの演技がシンクロするラストシーンとか、かっこよかったなぁ。

第二幕・第三幕は女の一騎打ち、という感じ。アドリアーナとブイヨン公爵夫人の衣装が、それぞれ、青と赤のテーマカラーに分かれていて、対立軸が明確に表現されている。かなりシンプルな演出で、もう少しメリハリがあってもよかったんじゃないかな、という感じもしましたけど、アドリアーナの栄さん、ブイヨン公爵夫人の田辺さん共に、存在感溢れる歌唱力と立ち姿の美しさで、火花散る女の意地のぶつかりあいを見事に演じてらっしゃいました。

個人的に好きだったのは、ミショネ、という舞台監督役のバリトンで、こういう役になんとなく入れ込んでしまうんだよね。アドリアーナの側にいて、恋心を隠しながら彼女のことをずっと見守っている初老の裏方・・・なんて、泣かせる役じゃないか。村林さんがやりすぎもせず、出すところはしっかり押し出しての好演。

栄さんは、これがオペラ初挑戦とは思えない美しくかつ可憐な存在感。大女優、というにはちょっと線が細くて、もう少し押し出しがあってもいいかな、という気もしたけれど、立ち居振る舞いが優雅で実に素敵。

田辺さんは、メゾソプラノの憧れ、という敵役のブイヨン公爵夫人を、颯爽とカッコよく(楽しそうに?)演じてらっしゃいました。ただ嫉妬に狂うむき出しの感情を出すだけじゃなくて、どこかしら高貴なたたずまいがないといけない役だ、と思うのだけど、強い視線と軸のぶれない姿勢と声の圧力で、登場した瞬間から、まさに「公爵夫人」という感じ。プリマと敵役が双方美人だ、というだけで、観客としては嬉しい限りやね。

持木さんはさすがの存在感で、キャラクターテノールを楽しそうに演じてらっしゃった吉田伸昭さんも素敵でした。バレエシーンもとても美しく、全体にとっても高いクオリティの舞台だったと思うのに、客席があんまり埋まってなかったのが残念だなぁ。こんなにいい舞台なのに。

埼玉オペラ協会は、きちんと定期的にオペラ公演を続けてらっしゃって、そういう継続が一番力になるんだ、と思います。持木さんや吉田さん、協会長の宮元聡之さん、田辺さん、そして合唱団の中にも、以前教会コンサートにお邪魔した岡村正子さんのお顔を見つけて、そういう常連の協会員さんがきちんと柱になって、団体を支えてらっしゃるんだなぁ、と改めて思いました。そういう中で、栄さんのような新しいメンバーがオペラデビューを飾り、また活動の柱になっていく・・・そういう好循環が生まれてくればいいですね。

田辺さんはじめ、出演者の皆様、スタッフの皆様、素敵な舞台を本当にありがとうございました。今後も埼玉オペラ協会が素晴らしい舞台を生み出していかれることを、1ファンとして応援していきたいと思います。