私が汚れているのだろうか?

40歳を過ぎてしまえば人間が汚れてくるのは仕方ないことで、色んなことに「慣れ」が出てきてしまう。知識や経験が豊富、と言う意味での「慣れ」は効率向上につながるので、そういう年の取り方というのは肯定するべきなんだろうけど、「慣れ」が「狎れ」につながってくると、これはマイナス要因になる。

今回の「美しきエレーヌ」では、結構、自分の中で、よくない「狎れ」が出てきているなぁ、という感覚があって、ちょっと焦っています。単純に、今週末が本番だ、という緊張感がなさすぎるんだよねー。仕事が忙しすぎて、中々意識がそっちに向けられない、というのもあるんだけどさ。以前は、直前の数週間、通勤電車の中はほとんど舞台のシミュレーションに費やしていたものだったけど、ここのところ、浅田次郎さんの「憑神」だの、宮部みゆきさんの「孤宿の人」だのにハマっている時間の方が長い。いかんなぁ。

舞台上での自分のパフォーマンスに中々自信が持てなくて、他のことに逃避している、という状況なのかもしれない。よくない傾向だなぁ。今回の「カルカス」という役自体はとっても楽しいし、自分の演技がボロボロに破綻している、とは思わないのだけど、何かしら不安感が残っているのは事実なんだよね。かなり緻密なアンサンブルで組み上げられた台本だから、私一人がコケるとそのシーン全体がコケる。一人ひとりの責任が重いのに、台本や楽譜の吟味が十分出来ている、という自信が持てない。まぁ、そういう危機感からくる逃避ならまだいいのだけど、舞台に対する「狎れ」が、今回の舞台に対する感度の甘さにつながっているとしたら、ヤバイ。年は取りたくないやねぇ。

全然関係ない話に飛びますけど、最近話題になった「居酒屋タクシー」の話。またぞろ官僚が叩かれて、xx省でy人、なんていうリストが出たり、ほとんど犯罪者扱いされてますけど、私にはどうもよく分からんのです。なんでタクシーがビールとかサービスしちゃダメなんだろう?

マスコミが例によって、「官僚がビールをおごってもらうとは何事か」と、ステレオタイプな反応をしているけれど、そもそもタクシーがビールを出しちゃいけないのは何故なのか、という話を誰も取り上げようとしない。個人タクシーとかに乗ると、時々、座席の前に飴玉とかが置いてあって、「ご自由にどうぞ」なんて言ってくれることがある。これは嬉しいサービスだよね。長距離で乗れば1万円以上かかる運賃と比較しても、「過剰サービス」と言われるようなサービスじゃないと思うんだがなぁ。ちょうどこの居酒屋タクシーの話題がニュースになっていた頃、朝のニュースで、乗客へのサービスということで四葉のクローバを渡す、という運転手さんの話が取り上げられていたんだけど、四葉のクローバだったらいいのか?飴玉だったらホントはダメなんだろうか?四葉のクローバを1000円で売ったらまずいのか?

タクシーというのは規制業種で、公共サービスの名前の下に、運賃などは認可制か届出制ですよね。こういうサービスにおいては、料金体系が横並びになることが多くて、中々サービスの差別化ができません。サービス自体にも料金以外の差別化要因が少ない。となれば、運転手さんやタクシー会社が、何らかの付加価値をつけることでお客様を囲い込もうとするのは自然な流れ。

乗客に何かしらのおまけサービスをすることで、お客様の満足度を上げようとする・・・でもそれって、どんな業種でもやってることだよね。お菓子を売るのに色んなフィギュアをつけたり、おまけをつけたり・・・お菓子を売る際におもちゃをおまけでつけてはならない、お菓子はお菓子だけで勝負せんかい、なんていう規制があったらおかしいだろう。でも一方で、タクシーに乗ったら、「残業お疲れ様でした」とビールを出すのは「居酒屋タクシー」なんていうブラックな名前で犯罪扱い。なんでダメなの?

ただ酒だったのがダメなのかなぁ?付加サービス部分ばかりに力を入れて、肝心の公共交通としてのサービスが低下してしまう、なんていう話なんだったら、四葉のクローバだって公共交通としてのサービスとは関係ないよねぇ。もちろん、ビールってのはちょっとまずいかな、と思うのは、酒販免許の話とちょっと絡む気がするから。乗客が未成年だったらどうするんだ、とかね。でも、その点を問題視するのであれば、責められるべきは官僚じゃなくて、酒販免許なしにお酒を「無料で」販売したタクシー業者を、「無免許でお酒を売ったらダメでしょう」と責めるべきだよね。なんでみんな官僚を責めるんだろう。

本来、タクシー業界が様々なサービス向上競争を展開していこうとするのにブレーキをかけてしまう業界自体の体質や、国土交通省による運輸行政規制のあり方について議論が展開していくべき話のような気がするんです。それが、ありきたりの官僚バッシングに変じてしまう・・・というのは、どこかに意図を感じるんだね。誰かが報道操作しているんじゃないかな・・・という所まで疑ってしまう。とにかく今、官僚を叩けるだけ叩いておけ・・・という政治的な意図が、マスコミと連携しているんじゃないか、という疑問。

そういう深読みをしてしまうこと自体、私が、年相応の「狎れ」を身につけた汚れた中年である証拠なのかもしれませんけどねぇ。別にお役人じゃなくっても、私だって深夜タクシーで冷えたビール出してくれたら嬉しいよ。カップラーメンとか備え付けた、ミニコンビニみたいなタクシーも嬉しいよねぇ。飛行機の座席みたいに、無料で見られるDVDソフトとか、ゲーム機が備え付けてあるタクシーとかも楽しいと思うぞ。そういう付加価値タクシーがどうして出現しないんだろう。美人のメイドさんが隣に座ってお話してくれるメイドタクシーとか、受けると思うけどなぁ・・・と、こういうことを言うから汚れた中年って言われるのか。ううむ。