日曜日、「南の島のティオ」の朗読パフォーマンス舞台が終了。予想通り、客席の3分の1くらいを子供の観客が占める、という会場で、精一杯演じさせていただきました。と同時に、やはり、朗読、という表現形態の難しさ・・・も痛感した舞台でした。普通のお芝居にはない、「地の文」の処理に最後まで苦しめられた・・・という感じです。当日の午前中の通しから、本番まで、ずっと演出家と一緒に、「ああでもない、こうでもない」と吟味し続け、本番特有の興奮状態からくるテンポ感のずれを矯正し・・・今までの舞台にない苦労が多かった・・・というのが第一の感想。
前々回の一人芝居「コントラバス」の時もそうでしたが、一人でやる舞台、というのは、自分自身のテンポ感だけが頼り。二人芝居だと、相手と自分の間でテンポ感を矯正できるんですが、一人舞台はそうはいかない。自分自身とお客様の間だけでテンポを測っていかないといけないんですが、本番の興奮状態の中で、そのテンポ感をいかにコントロールするか・・・というのが大きな課題になってきます。
「地の文」の処理は、最後まで苦しみました。「地の文」だから出てくる連続した表現。特に、文末の「だった」「した」といった頻発する文末表現の処理をワンパターンにしてしまうと、それが耳についてしまって、肝心の文章の内容がきちんと伝わっていかない。本番の休憩時間まで演出家にダメを出されながら、本当にギリギリまで作りこみを続けました。
逆に言えば、100%満足のいくパフォーマンスが出来たわけではなく、もっと違う表現、もっと自在な表現もできたはず・・・という悔いが随分残っています。沢山のお客様からお褒めのお言葉もいただいた一方で、途中で寝ちゃった人もいたみたいで、自分としては、満足感と不満が相半ばする舞台となりました。寝てる客ってのも舞台上から結構見えるんだよね・・・
でも嬉しかったのは、小さな子供のお客様たちが、プレゼントに用意した絵葉書を大喜びで受け取ってくれたこと。受付のKさんが工夫してくれて、出口に葉書を並べて選べるようにしてくれました。並んでいる葉書を「これがいいな」「これもいいな」と眺めている子供たちの楽しそうだったこと。何人かの子供さんたちが下さった小さな花束も、本当に嬉しかった。自分としては、自分の未熟さや、作りこみの甘さばかりが心に残る舞台ではありましたが、Yくんのファンタジックなイラストと、演出家の遊び心一杯のアイデア、ティオの世界そのもの、という感じの印象深いBGMと、スタッフの皆さんの細かい気遣いのおかげで、子供のお客様方はとても楽しんでくださったようです。
私の朗読に合わせて変わる、目の前の画面のイラストを指差しながら、「これ、ティオ?」なんて隣のお母さんに聞いている子供たち。天井ドームの照明が変わると、見上げて指差している小さな顔。舞台上で演技をしながらでも、そういう子供たちの反応は結構見えます。そういう子供たちの姿に、逆に、演じているこちらが癒された、そんな舞台でした。
自分の中での不完全燃焼の感覚っていうのは、ちょっと引きずるもので、会社に出社してもちょっと気分的に落ち込んでいる。この「南の島のティオ」は、今後10年間(!)続くロングシリーズになる予定なので、これからの舞台で、今回の色んな失敗や経験を活かしながら、もっといい舞台に仕上げていきたいと思います。美しく幻想的なイラストで子供たちの心をしっかりつかんでくれた美術のY君、舞台を支えてくれたスタッフのみんな、そして何より、出来の悪い役者を相手に、ギリギリまでダメを出し続けてくれた、最高のパートナー、我が女房どのに、心から感謝。10年後も少年を演じられるように(ううむ)、体調管理含めて自己鍛錬に励みますので、今後とも何卒、よろしくお願いいたします。ご来場くださったお客様、本当にありがとうございました。舞台って、というよりも、お客様っていいなぁ。本当にいいなぁ。