アメリカン・バレエ・シアター「白鳥の湖」

7月の頭くらいから、家族で色々と活動しておりますが、中々この日記でご報告できていませんでした。今日は一気に総ざらえしてみます。まずは、7月2日(土)に家族で見に行った、アメリカン・バレエ・シアターの「白鳥の湖」。

今はメトロポリタンオペラがオフシーズンなので、METのオペラ劇場では、アメリカン・バレエ・シアター(ABT、と略されるそうな)のバレエ公演があり、そのあとはマリンスキー劇場のバレエ公演が行われます。考えてみれば、家族できちんと通しのバレエを見に行ったのは、「くるみ割り」くらいしかないね、という話をして、では一度、「白鳥の湖」を見に行ってみよう、ということになる。土曜日のマチネで、ABTの舞台を見てまいりました。

METに行ってみると、いつものオペラの時とずいぶん客層が違うのに驚く。明らかにバレエをやっている、と思われる8等身くらいのお嬢さん方やお兄さん方がうろうろしているし、ピンクのチュチュを着たチビッ子がお母さんに手をひかれていたりする。いつも以上に華やかな雰囲気。

私自身も、「白鳥の湖」をちゃんと見たことはなかったのだけど、こうやって頭からしっかり見てみると、なんとも不思議な話ですよね。そもそも、何だってロットバルトはオデットに呪いをかけるのかよく分からない。元のお話では、オデットは継母の魔女に呪いをかけられる、という話だったらしいのだけど、ロットバルトが男性になり、しかも第三幕でジーグフリード王子の求婚者を次々にメロメロにしていく、なんてシーンを見ると、なんだか余計に混乱する。見終わった後、パパは、「これってひょっとして、ロットバルトはオデットのパパで、娘を他の男に取られたくなくて白鳥に変えるんじゃないのか?」と言いだす。そうすると、最後に王子とともにオデットが湖に身を投げて昇天する時の、ロットバルトの断末魔の意味がよく分かる気がしたのだけど、そういうパパを見るママの視線は割と冷たかったです。何故だ。

オデットを演じたJulie Kentさんは1993年からABTのPrincipalとして活躍している大ベテランで、見ていても本当に素晴らしい安定感。黒鳥のオディールも肉感的でありながら鳥のような可憐さは失われない。惜しむらくはオケで、特にコンマスのソロはかなりしんどい感じだったんですが、踊り手さんたちは本当に素晴らしかった。かなり大きなソロの役の中に日本人の名前を見つけて嬉しくなってしまったのだけど、この加治屋百合子さんという方は、2007年からABTのソリストに抜擢された方だそうですね。日本でもかなり話題になっていたようですが、多国籍が当たり前のABTの中で、全く違和感なく、ノーブルでしなやかな踊りを見せて下さいました。

多国籍、ということでもないのでしょうが、女房に言わせると、ロシアバレエの群舞に比べると、単純に「そろっていない」そうです。ロシアバレエの白鳥の群舞は、見ているとゾワゾワしてくるくらいにそろっているのだそうな。一種、北朝鮮マスゲームのような統一感があるのかもしれないけど、ABTの群舞にはそこまでの迫力はない。でも逆に、一人ひとりの個性が見えている中で、群舞として自然にそろって見えてくる美しさ、みたいなものを感じました。家に帰ってから、娘は突然、「やっぱり柔軟をしなければ」と言いだし、渡米してから久しくやっていなかった側転なんかをやり始めたりしております。時々「ちゃーらららららーららーら」なんて言いながらくるくる回ったりしている。ううむ。