新宿芸術祭〜裏では色んなことがあるんですよ〜

なんかこの日記も全然更新できてなくて、いつも読んでくださっている皆さんには申し訳ありません。仕事が無茶苦茶に忙しいのがとにかく最大の理由。さらに、先週末には一つ大きな舞台のお手伝いの仕事があり、公私ともにジタバタ状態でした。産経新聞に連載されている「ひなちゃんの日常」が単行本になっているのを買ってきて、家族そろってほんわか楽しんでいたり、ついに最終週を迎えた「ちりとてちん」で盛り上がっていたり(うちの女房は、「来週から何を支えに生きていけばよいのだぁ」と泣いている)、「美しきエレーヌ」の練習もどんどん面白くなってきていたり・・・と、それなりにインプットはあるのだけど、書いている暇がない・・・

今日はそんな中で、なんともお腹一杯の気分にさせてくれた、3月22日に新宿文化センターで行われた、新宿芸術祭のことを書きます。

新宿芸術祭を企画した、新宿文化センターの職員であるY氏というのは、非常に貧乏症の性格なものですから、今回の芸術祭、とにかくテンコ盛りの演奏会でした。出演団体は全部で6団体。1時間おきに大ホールで開催される本公演とは別に、休憩時間にロビーコンサートや楽器体験教室が開かれる。しかもそれが、入場券1000円で、ホールの出入り自由、というんですから、まぁ贅沢な企画。

・・・と他人事のように思っていたら、女房の所属する大久保混声合唱団に出演依頼があり、当事者として関係するハメになった・・・と思っていたら、Y氏から、「Singさん、ステージマネージャやってくれない?」との依頼がきて、すっかり関係者の一員に。テンコ盛りの演奏会の裏方仕事ですから、そりゃあジタバタです。毎日仕事で深夜帰宅してから、夜中にタイムスケジュールを作って、関係者にヘロヘロとメールして・・・という日々がここ数週間続きました。何とか苦労の甲斐あって、演奏会は大過なく終了。細かいミスや段取り違いは一杯あって、出演者の皆様には「なんだありゃ?」という場面が多々あったとは思いますが・・・色々と段取りが悪くて申し訳ありませんでした。ご不快な点も多々あったかと思いますが、何卒ご容赦くださいませ。

ステージマネージャの腕の見せ所、というのは、全体の流れをどれだけ事前に「想像できるか」という想像力の勝負。特に、こういう複数の団体が同時に動いている企画となると、全体の流れ、それぞれの団体の動線、練習場所を含めた各会場のタイムスケジュールなど、いくつもの視点で「いつ何が起こるのか」を整理していかないといけない。こういう複数の団体が関わる企画、というのは今回初めての体験だったので、ものすごく勉強になりました。ラ・フォル・ジュルネの裏方やっている人なんか、脳みその構造どうなっているのか覗いてみたいもんだよ。

さらに必要なのは、実際に演奏会が始まってしまってから出てくる様々な想定外のトラブルに、どれだけ迅速かつスマートに対応できるか、対応できる体制を整えていられるか、ということ。いくら事前に頭の中でシミュレーションを繰り返していても、いざ演奏会が始まってしまえば、色んなトラブルは絶対に起こります。話を受けたときから、「一人で回したら、何かあった時に絶対に対応できない」と思ったので、いつも頼りにしている助っ人のSさんにサポートをお願い。こちらの目配りのできない部分や、突然のトラブルを、どんどん先回りして解決してくれて、本当に助かりました。今回もチーム力で乗り切った感じだなぁ。

大久保混声さんと、新宿オペレッタ劇場の皆さん、というなじみの方々が参加してくださっていたのも、私としてはとてもありがたいことでした。きっちり信頼関係のある団体さんがいてくれると、その人たちから、「このステマネさんは信頼できる」というオーラが出てくるし、私の方も、「この団体さんは信頼できる」という安心感がある。そういう関係っていうのは周囲にも伝染するもので、多分、大久保さんや新宿オペレッタ劇場の皆さんと私の信頼関係が、初顔合わせの他の団体の皆さんにも、ある程度いい影響を与えてくれたんじゃないかな、と想像。頼りない部分は多々あったと思いますが、ご協力ありがとうございました。大久保混声のM島さん、K西さん、朝の仕込みを手伝ってくださってありがとう。お二人が手伝ってくださらなかったら、午前中のリハがあんなにうまく行ったかどうかわかりません。

各ステージの舞台袖では、すっかり一聴衆として演奏会を楽しんでしまいました。新宿オペレッタ劇場で、私と女房がレパートリーにしている「東京証券取引所の歌」を、嶋崎裕美さんと北村哲朗さんが歌われて、これは本当に勉強になった。久元裕子さんと中村初穂さんの2台ピアノによるベートーベン「皇帝」は圧巻だったし、シエナ・ウィンド・オーケストラの金管アンサンブルも素晴らしかった。

美人オルガニスト高橋博子さんや、これまた美女ぞろいのハープ・アンサンブル、ラ・ラミュールの皆さんとお知り合いになれたのも嬉しかったです。オルガンってのは本当に圧倒的な楽器で、ハープってのは本当に繊細な楽器で、そういう両極端の楽器をたおやかな美女が見事に操って、素晴らしいハーモニーになる・・・、というのが面白い。またどこかでご一緒できると嬉しいなぁ。大久保混声合唱団の木下牧子作品集も実に瑞々しい演奏でよかった。高田三郎作品は少し気負いが勝ってた気がするけど・・・と、若干身内には厳しくなってしまうのである。グランド・フィナーレの「威風堂々」も盛り上がりました。ご来場くださったお客様は、本当にお得な演奏会だったと思います。もっともっと沢山のお客様に聞いていただきたい演奏会でした。

終演後、Y氏が、「文化センターで、同じようなテンコ盛りの企画演奏会をやっても、ステマネは置かないのが普通なんだよ」と言っていて、びっくり。確かに以前、あるホールでステマネをやった時、「今回の演奏会はステマネさんがいらっしゃるから、会館側のスタッフが必死にフォローしなくて済むので、ありがたいです」なんていわれたことがあったなぁ。Y氏曰く、「大きな演奏会で、ステマネがいないと、全体像を把握している人が誰もいなくなる。結果として現場は大混乱したりするんだけど、でも、中々、そういう『ステマネ』という役割が大事だ、ということが、企画側には理解してもらえないんだよね」。

今回、私にステマネのお声がかかったのも、「こんな大規模な演奏会はステマネが絶対必要」と、Y氏が企画方に掛け合った結果だったんだって。スムーズな運営で出演者のストレスをできる限り軽減すること、演奏者が演奏会そのものに集中できる環境を作ることって、演奏会を成功させるために実はすごく大事だったりするんだけど、客席からは中々見えないことだからねぇ・・・