色んな方法がある

週末、台風の接近する中、川崎まで、大田区民オペラ合唱団の合宿に行ってきました。

今回の合宿のメインになるのは、演出家の三浦安浩先生のワークショップ。団員の中には、「ワークショップって、なんですか?」というところから入るような方もいらっしゃって、そういう方々に対して、どういうワークショップをやるのか、すごく楽しみにしながら合宿所に向かう。

三浦先生から自己紹介があり、あとは、団員1人1人から、自己紹介がてら、ノルマに対する思いを語ってもらう、という時間を取る。演出家が団員さんたちを把握するための大事な時間ですね。さらにそのあと、振り付け師の先生から、舞台上に存在する自分自身の体をどれだけ意識するか、という実習。これが面白かった。

「自分のお腹と背中にチャックがあって、それを開いて、体に窓を開けて、お腹から背中に風が吹き渡るようなイメージで歩く」とか、「地面が鏡になっていて、自分の下に自分がぶら下がっている、その鏡の向こう側の自分と、足の裏をぴったり合わせるのを意識しながら歩く」とか。ただ「歩く」という姿だけでも、舞台上にいて存在感を示すことができるような歩き方、というのがある。それをひたすら探していく。

自分自身の体の大きさをあらためて意識してみよう、というのもありました。自分の両手で、頭の先からつま先まで、目を閉じて自分の体を触っていく。頭から耳、首筋、肩・・・と、自分の体を手で確かめていく。そうやって、これが自分の体の大きさなんだ、というのを再認識する。

自分の身体との会話、を、きちんとすること。舞台を作っていく上では、色んな方法があって、多分、今回のワークショップで示されたメソッドも、その中の一つのやり方に過ぎない。いい指導者というのは、こういうメソッドの引き出しをすごく沢山持っていて、この団体にはこれ、この団体にはこれ、という感じで、うまくメソッドを変えてくる。私にとっては、今回のワークショップ、そういう色んなメソッドを勉強する、とてもいい機会になりました。色んな団体の活動に顔を出すメリット、というのはこういうところにあって、色んな指導者や色んな指揮者のノウハウやメソッドを自分で体験することができる。

でも本当は、そういう「批評家」的な視点で人の指導を見ているようではダメなんですけどね。そういう色んな指導者の引き出しから、どこまで盗めるか、というのも大事なことなのだけど、1人のパフォーマーとしては、その指導者の指示や意図をどれだけきちんと汲み取って、その求めているアウトプットをきちんと出すか、ということが全て。そういう意味では、中々、自分の身体ときちんと自然な会話をすることってのは難しいことです。自分の意識と自分の体だけが存在している時間・・・というのをきちんと意識すること。全てのパフォーマンスの基礎なんだけど、それがどれだけ難しいことか、その入り口を垣間見せてもらえたような気がしました。舞台って、ほんとに奥が深いなぁ。