腕時計

突然ですが、腕時計です。昔、ガレリア座の中で、「あなたにとって、腕時計はどんな存在ですか?」と尋ねる、心理テストがはやったことがありましたっけ。これを読んでいる皆さんも、ちょっと考えてみてください。あなたにとって、腕時計というのはどんな存在ですか?ちなみに、当時まだ私と結婚する前だった女房の答えは、といえば、
 
「腕時計って、わずらわしいから、いらない。」
「特に歌うときに邪魔で、必ず外す。そうすると、外したあと、どこいったかわからなくなって、すぐなくなっちゃう」
「昔、気に入ってたのがひとつあったんだけど、気がついたら、なくしちゃってて、それ以来、腕時計をつける習慣がない」
「別になくても困らない。出先でも、時間知りたいなと思ったら、お店とか適当にその辺で時計探せばいいし、十分間に合う」

でした。種明かしは後ほど。
 
腕時計ってのは不思議な品物だなぁ、と常日頃思っています。不思議、というか、中途半端な感じがするんだね。女性のイヤリングとかネックレスのような装飾品と同等に並べるには、実用性が高すぎる。かといって、実用一点張りでは説明しきれない装飾品的要素も強い。さらに、小型精密機械なので、高性能であること自体がステータスになったりする。

結果的に、数百万円するような腕時計が男のステータスになったりする。個人的には、腕時計にそんなに金をかける感覚がどうも理解できない。だって、たかが腕時計じゃないのさ。ただの時間見る道具だよ。しかも、身の回りの小物をなくすことがとても得意な私としては、そんな高級時計怖くて身につけられないですよ。そもそも100万円もするような腕時計買えない、という財政的な理由もあるけど、10万・20万円する時計、なんてのも、なんだか怖い。なくしちゃったらどうすりゃいいのさ。礼服とか、スーツとか、着物とか、衣服にお金をかける、というのはまだ理解できるんだけど、腕時計、というのはどうもピンとこない。

本当にいい腕時計を使いこなしている人からすれば、「ホンモノを知らない人間が何を言ってるの」と思われるだけなんでしょうけど。そりゃね、重厚なスーツやコートで全身びしっと決めた人が、安物の時計してたらそれでお里が知れる、ってもんだろうけどさ。でも、どこかで、「道具じゃないかよ」という気分が抜けないんだなぁ。日常使う道具だから、使いやすさ、身につけやすさにこだわる、というのは分かる。でも、装飾性や、高級さにこだわる、というのは理解できない。たぶん、本当にいい腕時計を、本当に使いこなしている人は、値段とかとは無縁に、「自分にぴったりフィットして、便利なもの」というのを追求していった結果として、数十万円、数百万円する高級時計にたどり着いているんでしょうけど。でも、金ピカのロレックス、なんて話になると白のベンツみたいなもので、別のステータスシンボルになってる気もしますよね。使い心地、というのとは別の次元の話。

というわけで、私はずっと、実用一辺倒の1万円〜2万円程度の時計を愛用してました。この程度の値段の時計だと、同じ時計をずっとしている、という感じじゃなくて、3台くらい持っていて、日によって付け替えたりする。週末はアウトドア向きに、ちょっとスポーティな感じのもの。会社に行くときはビジネス風の重厚なもの。日付付のも持っているんだけど、月によって日付調整しないといけないのが面倒なんだよね。

なんでこんなことを突然書いているか、というと、3台で使いまわしていた腕時計の1台が故障しちゃって、ずっと「新しい腕時計が欲しいなぁ」と思っていたから。先日、42歳(ひえー)の誕生日を迎え、女房と娘におねだりした所、誕生日プレゼントに腕時計を買ってもらった。これがすごく気に入っちゃったんです。娘と女房で選んでくれた、SKAGEN、というデンマークのメーカーの製品。別に、すごい高級時計、なんてわけじゃないんですけど、北欧風のシンプルなデザインがすごくすっきりしていて、厚さも薄くてフィット感がとてもいい。これだけ身体にしっくりくる腕時計に会えたってのは、生まれて初めてかもしれない。こういう腕時計に出会えてしまうと、今までみたいに、「TPOに応じて別の腕時計を」という気にならなくなっちゃうのが不思議。てなわけで、このところ毎日同じ腕時計です。私としては結構珍しい現象。

で、腕時計です。最初のテスト、皆さんの答えはいかがだったでしょう?この心理テストを出題した人によれば、「腕時計は、あなたの恋人観を表しています」とのこと。このテストがガレリア座で流行った頃、私もまだ独身で、当時の私の答えは、「3台持っていて、TPOに応じて取り替える」という答えでした。実態はほど遠い状況だったんだが、願望ですかね?現状は、「やっとお気に入りの一品に会えて落ち着いた」ってところかなぁ。ううむ。落ち着いちゃったか。ううむ。

そう思って、冒頭の我が女房どのの回答を見ると、これがなかなかすごい回答である。ちなみに、別の女性団員さんは、「腕時計はアクセサリーよ、美しいものをたくさん持っていることが喜びなの」と優雅にのたまいました・・・えっと。

腕時計だけじゃなくって、ペンや万年筆、手帳、メガネ、カバンといった、日常生活で自分の手足や感覚器の延長線上で使う道具には、結構自分の好みが反映するものですよね。値段だけじゃなくって、自分の身体にどれだけしっくりくるか、自分がどれだけ使いやすいか、という観点から選ばれる日常的な道具たち。そこには意外とその人の人柄とか、センスが現れてきたりするものなのかもしれないなぁ。