産地直送

我が家は、夫婦の実家がそれぞれ遠方にあります。年末年始やお盆の帰省は大変だし、何かあったときのお手伝いとかも期待できないし、色々とデメリットももちろんあるのだけど、うれしいこともたくさんある。その一つが、田舎のいろんな産物を直送で送ってきてくれること。

秋は収穫の季節なので、今年もそういう「産地直送」モノで、我が家の食卓はとっても潤っています。田舎の豊穣と人情に大感謝しつついただく。女房の実家の大船渡からは、大船渡港で水揚げしたばかりの秋刀魚。都内の市場に出回っているものとは色艶から違うし、身が柔らかいのに味がしっかりしていて絶品。私の実家は、兵庫県三田の近く。三田は、米も「三田米」というブランドですごくおいしいんですけど、土地が肥えているらしくって、その他の農産物もおいしいです。というわけで、実家の庭の畑で私の母が作ったサツマイモが大量に届く。これが子供の頭ほどもある大きさで、でも大味じゃなくってすごく濃厚な味。青森にいる女房の親戚からは、本場のりんごを一箱いただきました。これぞりんご、というしっかりした歯ごたえと味わい。

おととい、三田の親戚から、三田米とその家で収穫したばかりの蓮根が届く。この蓮根がまた、ものすごくおいしい。しゃきしゃきしているのにほっこりしていて、みずみずしいのにしっかりしている。スーパーに並んでいる水煮にした蓮根とは、比べ物にならないねぇ、と女房と言い合う。

同じ日、別の親戚から、今度は、すき焼き用の三田牛が届きました。早速昨夜、すき焼きにしていただく。舌の上でとろけるような霜降り牛なんだけど、味わいはすごく濃厚で、へんなクセがない。三田牛といえば、全国にチェーン展開している「三田屋」さんが有名ですけど、この親戚に言わせると、「三田屋さんの牛肉はホンマの三田牛やない」そうです。もちろん、そこまで言うことはなくって、三田屋さんの三田牛だって十分おいしいんですよ。普通のスーパーに並んでいる高級牛や、割と高級なレストランで出てくる牛肉と比べても、かなり高水準だと思う。でも、地元の人に言わせれば、もっともっとおいしい「三田牛」があるってことなんでしょうね。

そういう「ホンモノ」の味を届けてくれる田舎がある、ということ、そういう田舎の人たちが、東京に行ってしまった我々夫婦のことを、今でも気遣ってくれること、本当にありがたいことだと思います。でも、この田舎の豊穣さを支えているのは、我々の親の世代だったりするから、かなりの高齢化が進んでいるんだよね。

東京というところは、日本全国からおいしいものが大量に集まってくる場所ではあるのだけど、ある意味平均化された産物の集積地でもある。一番おいしいものは、東京の極めて上流にいる階層と、地元で消費されている、というのが、昔から変わらない構図なのかも。東京にいれば、いろんな食材、それも平均よりもかなり高水準の食材が楽しめるのだけど、図抜けておいしいもの、というのはやっぱり、「地場モノ」に限るのかもね。でも逆に言えば、図抜けておいしいものを生み出している田舎の「地力」が、高齢化や都市化によって失われてしまうと、東京を支えている「平均化された食材」自体の質も落ちてくるんだろうなぁ。

都会の生活にどっぷり漬かっている私みたいな人間が、そんなことを口にする資格はないんだけど、東京という、奇形的に発達しすぎた大都会を支えてくれている、「田舎」の底力に、改めて感謝の念を新たにする、「収穫の秋」なのでした。