小学館版「少年少女世界の名作」

女房が小学生の頃に買い揃えてもらった「少年少女世界の名作」という小学館が出していた小学生向けの文学全集があります。女房がすごく愛着を持っていて、娘が小学生になったら読ませたいなぁ、とずっと思っていたそうな。全55巻。今、ぼちぼちと岩手の実家から送ってもらっています。

娘は、といえば、細かい字がびっしり詰まった分厚い全集本よりも、図書館で幼年向けの本を借りてきたり、学校で写し書きをしている岩波子供の本のシリーズを読むほうが好きらしく、送られた文学全集をむさぼるように読んでいるのは、女房と私だったりする。これが結構面白いんだよねぇ。

川端康成先生も監修されているこのシリーズ、いわゆる定番の古典を小学生にも読めるように易しくリライトしたものから、ドキュメンタリーや伝記、昔話や神話まで網羅している守備範囲の広い全集です。女房に至っては、「私はこれを小学生時代に繰り返し読んで、その財産だけで大学まで行ったのだ」と豪語しております。それでいいのか。

…と批判的な目を向けながらも、いざページを開いてみれば、小学生向けとあなどるなかれ、文章は読みやすいし、取り上げられているのはなんと言っても古典ですから、物語は当然のように面白い。挿入されているドキュメンタリーとかも、なんだか子供時代のワクワク感が甦ってくるような懐かしさもある。結構のめりこんで読んじゃうんだよねぇ。ある意味、NHKの「週刊こどもニュース」がすごく面白いのと同じような感覚かもしれん。

先日読了したのは、アメリカ文学編、と題された1冊で、掲載されていたのは「小公子」と「小公女」。小学生向け名作文学の王道って感じでしょ?しかしこのお話、出生の秘密あり、突然の転身あり、イジメあり、財産目当ての陰謀あり、やっとることは大映ドラマと全然変わらんなぁ。極めて「純粋ないい人」に理想化された主人公たちよりも、周囲の人たちやシチュエーション(豪勢な館だの、馬車だの、屋根裏部屋だの、窓から迷い込んでくる小猿だの)の方がインパクトがある、という所も、大映ドラマっぽい感じがする。物語の解決に向かう偶然があまりに出来すぎている、という部分も含めてね。

でも、子供の頃の、「小公子」「小公女」の世界にわくわくした気分を思い出して、なんとも懐かしい気分になりました。間に入っていた「ドリトル先生航海記」は、抄訳になっていたので、完訳本を子供の頃に読んだ身としては、ちょっと物足りなかったけどね。娘はまだこの本に見向きもしませんが、もう少し大きくなったら読み始めてくれるかなぁ、と期待しています。親としては、自分が子供の頃に「面白いなぁ」と思ったものを、子供も同じように感じてくれると、すごく嬉しいもの。もちろん、そう期待通りにはいかないんだけどね。子供の興味は親の興味とはなかなか一致しないから…でもそうと分かっていても、少しでも同じワクワク感を共有できれば…と願っています。全巻そろえば55巻。いっぱいのワクワク感の詰まった全集、楽しんでくれると嬉しいなぁ。その前に本棚をなんとかしないといかんのだが…