天水タンク

根が心配性なのと、そもそも関東大震災は絶対にもうすぐやってくる、という確信を持っているので(まぁそういうヒトは多いと思うけど)、色んな防災グッズとかを見ると、無闇に欲しくなる。一度買ったラジオ付き懐中電灯は、どこにしまったか分からなくなってしまって、新しいのを買った途端に昔買ったのが出てきて、結果的に2台あります。防災バッグは大きくなりすぎて、うちの女房には担げなくなっている。意味ないじゃん。

加えて、根っからの関西人=ケチで貧乏性の私の琴線に触れたのが、「天水桶」。最初に何でその存在を知ったのか記憶はあいまいなんだけど、多分、「東京打ち水作戦」あたりで知ったんじゃないかと思います。ヒートアイランド化した東京を、伝統的な「打ち水」で冷やそう、という話の中で、「打ち水の水は、雨水を溜めた天水桶の水を活用する」という話があった気がするんだな。

雨どいから雨水を取り込んで溜め込んでおき、普段は庭の水やりや、洗車とか、打ち水なんかに使えば水道代が節約できる。いざという時の防火水にもなるし、浄水器を使えば飲み水にもなる。そう聞けば、ケチでビンボで心配性で大地震の恐怖に怯えている40過ぎのオジサンの心は揺れ動くわけですよ。いいなぁ、これ、ほしいなぁ、と。

で、ネットで、天水桶の作り方、なんてのを調べてみたりすると、一見簡単そうである。雨どいの途中を切って、同じ太さのT字パイプをつなぐ。元の雨どいの下部に、フタをつける。元の雨どいの下の部分に水が一杯になると、溢れた分が、T字パイプから、水を溜めるタンクに流れ込む。ゴミは元の雨どいの下の部分に溜まるし、タンクに流し込むところにフィルターをつけておけば、さらに水はきれいになる。雨どいの下に溜まったゴミを時々掃除する必要があって、水を溜めるタンクが一杯になれば排水できるように、タンクの上に排水パイプをつけて、タンクの下にコックをつけて…あれ、段々面倒になってきたぞ。

ネット上じゃぁ、「簡単ですよぉ」「お宅でも簡単にできるエコライフ!」なんて謳い文句が踊っているのだけど、意外と面倒そうじゃん。しかも、実際に作ってみたヒトの体験HPなんかを見ると、「いやーボウフラが大量発生して大変だったよ」なんて記事もある。そういう記事を見れば、ケチでビンボで心配性ではあるけれど、決して器用でもマメでもない、加えて蚊が大嫌いな40過ぎのオジサンの心は揺れ動くわけですよ。これ、ほしいけど、大変そうだなぁ。

今年、裏庭を整備するにあたって一念発起、自分で天水桶を作ることにして、大工センターでT字パイプだの別のパイプだの、パイプ用の接着剤などを一式買い込んだりしたのですが、面倒だなぁ、という気分はなかなか払拭できず、実際の着手には二の足を踏んでおりました。どうしようかなぁ。

タイミングってのはあるもんで、先日、蔵しっくこんさぁとで乗った東北新幹線の社内で、何気なく手にした通信販売カタログ。最近のJR東日本は商売っ気があるやねぇ、なんて思ってチラチラ見ていたら、なんとあなた、

「天水タンク」

という商品が掲載されているじゃアリマシェンカー(長新太さん風)。「誰でも簡単に接続できます。密閉型なので蚊の発生もありません。90リットルの水が溜まります。今すぐ電話を!」…ケチでビンボで心配性な元関西人のおじさんは、この手の通信販売のあおり文句に対してすごく懐疑的になるのだけど、今回ばかりは飛びついてしまいました。情けない。

というわけで、我が家に到着したでかい緑色のタンク。設置は確かにすごく簡単。コックだのフィルターだの排水パイプだのは最初から付いている。あっという間に設置作業は終了して、後は雨を待つばかり…で、設置後2度ほど調布市に降ったスコールみたいなにわか雨で、持ち上がらないくらいにたっぷりの水が、タンクの中に溜まりました。この週末、裏庭で色々と作業をするのに、早速使ってみる。びっくりするくらいきれいな水が出てくる。もちろんタンクを時々掃除したりする手入れは必要みたいだけど、これはなかなかいいじゃん、と、ケチでビンボで心配性な40過ぎのおじさんは大満足。

…と、ここまできて、また心配の虫が騒ぎだす。タンクは雨どいとの間で、ソフトパイプでつながっているだけ。簡単な台の上にぽんと置いてあるだけなんです。地震がきたら、ごろりんと転げ落ちて、折角溜まった水だって全部流れてしまうかも…

となると、タンクを倒れないように固定しないといけない。どうやればいいかしら。手入れはできるように、すぐ外れるようになってないといけないし、でも動かないように固定してないといけないし…

…結局、心配性のおじさんの心配のタネは尽きないのでした。あとは地震が来ないように、神様にお祈りするしかないと思うぞ。