「デスペレーション」〜スティーブン・キング版「クトゥルー神話」〜

今日から、会社のPCからHPの更新ができなくなりました。従い、この日記の更新は、夜間に自宅から実施することになります。これが当たり前なんですよ。建前上は、会社のPCを私的目的に使っちゃいけないんです。今までごめんなさい。これからは心を入れ替えます。心を入れ替えて、相変わらずすちゃらかな日々を綴っていこうと思います。すちゃらかすちゃらか。

というわけで、今日はスティーブン・キング。この日記に、ホラー小説や映画関係の記事を載せると、この日記の一番の愛読者(うちの女房)の評判が悪いんですよねぇ。「何を書いているのかさっぱり分からん」とぶつぶつ文句を言われる。とはいえ、私のフィールドにホラー系コンテンツがあるのは確かなので、インプットがあれば書いちゃうわけです。同様に、アニメ系コンテンツも評判が悪い。特撮系になるとさらに悪い。そういえば、実写版の「美少女戦士セーラームーン」に、セーラーマーズで出てた北川景子さん、ハリウッド映画に大抜擢ですってね。確かに図抜けて美少女だったけど、演技と歌はかなりヒサンだったがなぁ。大丈夫かなぁ。大きなお世話だなぁ。

えっと、何の話だっけ。あ、スティーブン・キングだ。キングの本は数冊読んでるんですが、何せ著作が多いのと、かなり多種多様なので、キングを語れるほど読んでいる気はしません。やっぱり、「ミザリー」は怖かったなぁ。「ペット・セマタリー」も無茶怖かった。「キャリー」もいい。「シャイニング」は映画の方がよかった気がする。他にも、短編集「スケルトン・クルー」のシリーズなども読みました。程よいエンターテイメント感と身の毛もよだつ恐怖感の底流に、リアルな人物造型と、どこか思索的な人間存在への視点があるところが好き。活字中毒の時間を埋めたくて、それなりに良質のエンターテイメントを読みたい、と思ったときに最適。ただ、文庫本数冊に渡る長編は図書館で借りにくいんだよなぁ。購入するほどのめりこむ気にはなれないので、結果、最高傑作と言われる「IT」を読んでいないのが致命的。文庫本で4冊ってのは無茶だろうがよ。

ホラー小説、といえば、大学時代にちょっとのめりこんだ時期があり、お定まりのように入り口を覗き込みました、「クトゥルー神話」。うちの女房に、「また全然知らないことを書きおって」と言われる前に、少しだけ解説。米国のホラー作家、ラヴクラフトの一連のホラー小説に取り上げられたモチーフで、「太古に地球を支配していたが現在は地上から姿を消している、強大な力を持つ恐るべき異形のものども(旧支配者)が現代に蘇るというモチーフを主体とする」(Wikipediaより)作品のことです。こう書いても、「だから何よ」と言われるのがおちだな。

要するに、そういう「異形の生物」が生きている世界が、我々の世界のすぐ隣にあり、その二つの世界をつなぐ扉を不用意にあけた者が、血も凍る恐怖を味わうことになる、という話です。ラヴクラフト作品で漠然と示されたこのモチーフを、後世の作家達が体系化し、何人もの作家や、その他のクリエイターたちが、「クトゥルー神話」をモチーフにした作品を発表しています。「ネクロノミコン」などのキーワードが結構一人歩きしていたりするが。

スティーブン・キングの「デスペレーション」も、モチーフとしては、「太古の謎の力」がもたらす恐怖と、それとの戦いを描いている点、「クトゥルー神話」に共通する部分が多くある。ただ、多くの作家の手で「体系化」されたクトゥルー神話が、なんだか不気味さや謎を失ってしまって全然怖くないのに比べて、「デスペレーション」に登場する「敵」は、最後の最後まで謎の存在のままです。その無名性の持つ恐怖感は、相当尾を引きます。

ホラー映画やホラー小説には、必ず「謎解き」の要素がある、という文章を以前書いたことがあったと思います。そこが結構難しいところで、全部の謎がクリアに解けてしまうと、その謎自体の重さやリアリズムが相当しっかりしていないと、「そうだったのか!」というカタルシスに欠けてしまう。一方で、最大の謎は謎のままとして残し、恐怖の余韻を残そうとすると、謎解きのカタルシスが弱くなってしまって、「結局なんだったのさ!」という気分になってしまう。スティーブン・キングという人は、そのあたりの謎の扱い方や、謎解きのカタルシスの構成が職人芸的に上手な作家で、「デスペレーション」も実に楽しめました。

「デスペレーション」や「クトゥルー神話」のように、「この世のものならざるもの」が現実世界のすぐ側に息を潜めている、というモチーフ、結構好きです。タブーによって守られた異世界への扉が、不用意な現代人によって解き放たれる恐怖。諸星大二郎の諸作品や、大好きだったM.R.ジェイムズの怪談などにも現われる構図。

・・・とはいえ、現代社会では、普通に町を闊歩している普通の人々の心の中で、「この世のものならざる」ものが蠢いていて、何の脈絡もなく突然目の前に噴き出してくることがある、そういう恐怖の方が強かったりするんですけどね。現実社会の方が、小説に描かれるよりも怖いことがたくさんあるもんなぁ。