浴衣はいいぞぉ

この日記では、よく着物礼賛のような文章を書いてます。でも、私が着物を晴れ着として着始めたのはかなり最近のこと。女房の実家が着物道楽で、お正月に家族で集まると、女連中が全員、着物で着飾って写真を撮る、というのが年中行事。それを見ていて、「オレだけホテルの浴衣ってのはなんだかヤダ」「オレも着物着たい」と言い出したのが最初。

とはいえ、いきなりアンサンブルの着物を作る、というのは初心者にはハードルが高い。とりあえず入門、ということで、作務衣・甚平・雪駄、というアイテムを普段着に揃える。合わせて手を出したのが、浴衣でした。これで角帯の締め方を勉強しよう、というわけ。お値段も数万円と手ごろだし、何より男の浴衣は、着付けがそんなに難しくないですから、「まずは浴衣から始めるのがいいと思うよ」という女房のアドバイスに従ったわけです。

本来浴衣というのは、名前の通り、湯上りに着る普段着ですよね。シアターコクーンコクーン歌舞伎を見に行った時、幕間で解説していた役者さんが、「歌舞伎座に浴衣のお嬢さんが沢山いらっしゃったことがあって、『ここは風呂屋じゃないんだよなぁ』とみんなで苦笑いしてました」なんて話をされてましたっけ。お芝居を見に行く、なんていう時の外出着じゃないんです。行ってみれば江戸の頃の、Tシャツと短パン、という感じなんでしょうかね。明治の頃には、既に軽い外出着としても使われていたようですが、本来は、ちょっとご近所で夕涼み、というような着物。

とはいえ、着物自体が晴れ着、あるいはコスプレの一歩手前のような位置をもってしまった現代においては、浴衣だって立派な晴れ着。結婚直後に浴衣を揃えた私も、調布の花火大会の時に2度ほど着たきり。最初に着た時には、知らないうちに角帯がほどけてしまっていて、恥ずかしかったなぁ。

先日、娘の幼稚園で「ボンファイヤー」の集い、というのがありました。「ボンファイヤー」って、フランス語の「ボン」=goodと、英語のfireが組み合わさった言葉で、「お祝いの火」という意味なんですってね。私ゃてっきり、「お盆」の「盆」かと思ってたよ。恥ずかし。

幼稚園の園庭の真ん中に大きな火を焚いて、その周りで子ども達と親が一緒に、輪になって踊るんです。子ども達も浴衣の子が多い。男の子も女の子も、カラフルな浴衣で走り回っている。折角だから、ということで、我が家は、夫婦そろって浴衣を着ました。お母さんが浴衣を着ている家は多かったけど、お父さんまで浴衣姿、というのは、我が家以外には1軒くらいしかなかったなぁ。完全にコスプレ状態。

面白いなぁ、と思ったのは、以前浴衣を着た時よりも、帯の締め方も襟元の処理も楽に出来たこと。着物のアンサンブルを買って以降、何度か着物を着て外出する機会があったせいか、少しは、着物が身についてきたかな、とちょっと嬉しい。やっぱり、ある程度定期的に着てないと、着物の方が体に馴染んでくれないんですよね。とはいえ、我流ですから、ちゃんとした人が見たら、ひどい着こなしなんだろうけど。

ちょうど昨日、ニュース10を見ていたら、若者の間で浴衣がブームになっている、というニュースをやっていました。それをレポートしていたのが、ニュース10のアイドルアナウンサー、鎌倉千秋さん。アイドルアナウンサーなので、早速浴衣姿でレポートしてたんだけど、その姿を見て、女房ともども、「あんまりきれいな浴衣姿じゃないねぇ」と言い合う。やっぱり普段着慣れてないせいか、襟元から胸元にかけての線がダランとした感じになっちゃう。

浴衣もそうですけど、着物の基本はやっぱり、帯にあるんじゃないかなぁ、というのが、さして長くない私の着物歴の中で思っていること。帯をきちんと締めることで、腰が決まるんですよね。腰が決まると背筋が伸びる。なので、私は、浴衣を着るときも、兵児帯じゃなくて角帯です。兵児帯の方が楽だとは思うんだけど、なんだか襟元がすぐゆるんじゃいそうな気がするんだよなぁ。

今時の若者たちですから、浴衣ブーム、といっても、かなり無茶苦茶な着こなしになっちゃうだろうな、と思います。でも、折角浴衣に触れてみるのなら、ただ着るだけじゃなくて、カッコイイ着方=腰の据わったいい姿勢、を身に着けてくれると嬉しいなぁ。