ちゅう

うちの娘(仮に、H子とします)は、幼稚園の年少組のころから、「私のボーイフレンドです」と公言してはばからない男の子がおります(仮に、M君とします)。今年のバレンタインデーでもチョコレートを渡し、年長組になっても同じクラスになり、仲むつまじくやっていたのですが、ここに来てちょっと雲行きが怪しくなってきた。

まず、M君が、我が家に遊びに来たときに、H子の家の車の屋根に上って屋根をぼこぼこにしてしまう、という事件があり、これで、H子の父親(オレだ)のM君に対する心証がかなり悪くなる。まぁそれが、H子のM君への気持ちに影響したかどうかは別の話。最大の問題は、年長組に、幼稚園きってのモテ男と言われる同級生(仮に、R君とします)がいたことです。

今年のバレンタインデーの時に、R君がお友達の家に遊びに行っていたら、わざわざ同級生の女の子が、「R君が遊びに来てるって聞いたから」と、チョコレートを渡しにやってきた。(遊びに行っていた先のお友達には、義理チョコすらなしで、その家のお母さんは憤懣やるかたなかったそうだが)R君についてはその手のエピソードに事欠かない。女房に言わせれば、「Jリーガーのいい男」系の爽やかな子で、中々華のあるいい男だそうだ。H子の父親(オレだよ)は見たことがないので、批評のしようがないが、まぁいい男なんだそうだ。へん。

で、このR君が、H子に急接近してきたそうである。R君には、当然のように「xxちゃんが好き」と公言している女の子(L子ちゃんとしましょう。そろそろわけが分からなくなってきただろう。参ったか)がいるのだが、先日、R君が、「僕はL子ちゃんも好きだけど、H子ちゃんが好きだなぁ」と言いはじめ、H子は照れまくっていたのだが、昨日に至って事は急展開を見せた。

工作の時間に、はさみだ紙だ、と道具の準備をしていたH子に、突然、R君が近寄ってきて、H子のほっぺに、「ちゅう」をしたのである。

H子は男の子に「ちゅう」をされるなんてのは初めての経験であり、M君からも「ちゅう」なんかされたことがない。しかもお相手が、幼稚園きってのモテ男くんであるから、これはドキドキものである。R君はさらに、「もうL子ちゃんは好きじゃない。H子ちゃんが好きだ」と言い出し、H子はさらにさらにドキドキなのである。

この報告を受けたH子の父親(オレだってばよ)が、「ぢゃあ、M君はどうなるのさ」というと、H子は、「好きなのはR君、ということで、遊ぶのはM君、ていうことなの」と説明したが、こら、そんな説明で納得できるかい。大体、いい男でモテモテの男なんてのは信用できん。心変わりされたL子ちゃんの立場はどうなる。いきなり「ちゅう」から入るなんてのは不健全である。まずきちんと文面なり言葉なりで相手の気持ちを打診してから、「ところで、ちゅうをしてもよろしいでしょうか」と確認した後に、しかるべく行動に移るというのが「段取り」というものだろう。そういう段取りを無視した仕事の進め方はよくない。各種の軋轢や抵抗勢力の台頭を生み出すもとである。

くわえて、H子の父親(オレだっての)が、昨夜、いつものように、H子のほっぺに「ちゅう」をしようとすると、H子はケラケラ笑いながら、「ほっぺの『ちゅう』はR君のだから、パパはだめぇ」と抵抗しよった。R君、許せん。娘のほっぺに「ちゅう」をするなど、20万年早い。深く地層の底で十二分に反省してから、化石になって愛・地球博で展示されて出直して来い。ええい。

といいながら、M君に車の屋根をボコボコにされたH子の父親(オレだっちゅうのに)は、「M君よりは、R君の方が爽やかそうで悪くないなぁ。人気のある子だっていうし」と、わりとまんざらでもないのである。「ちゅう」という積極的なアプローチも中々潔い。どうするM君。君はただの遊び相手で終わってしまうのか。年長組の1年は始まったばかりである。一発逆転を狙うのか、それともそのまま別の道を探るのか。今後の展開が楽しみ。以上、調布市の片隅の幼稚園の、5歳児の三角関係のリポートでした。ちゃんちゃん。