マツケンサンバ〜ピンクレディーとの共通性〜

週末、TVをつけると、金スマでも真島茂樹さんがマツケンサンバを踊っていて、笑っていいとも増刊号でも真島茂樹さんがマツケンサンバを踊っていました。最近の真島さんの露出を見ていると、TVのバラエティ番組の思考パターンが読めて、ちょっとやな感じもするんですがね。つまり、

マツケンサンバを番組で取り上げたい。
−でも松平さんという人は、あんまりバラエティ向きのキャラクターじゃない。
−で、松平さんの脇を見てみたら、非常にバラエティ向きの方が笑顔満面で踊ってる。これだ!

という思考パターン。なんて浅はかなんだ。

でも、真島さんという方は、日劇ダンスチームのトップダンサーだった、という本格的な踊り手さんですから、そういう浅薄なTVの思惑をぶっ飛ばしてしまうくらいの「本物」なんですよね。ラッキィ池田、とか、パパイヤ鈴木、とか、ダンスという本業よりもキャラクターが立っている振り付け師さんって、結構いる。でも、真島さんは、キャラクターとダンスが完全に一体になっている。常に踊っている。パパイヤさんだって踊らせればすごくかっこいいんですけど、彼は石塚さんと肉食ってたって面白い。でも、真島さんは肉食ってても面白くない。踊らないと面白くないし、常に踊ってるから面白い。いいなぁ。本物の踊り手。

しかし、マツケンサンバが国民的現象になった理由ってのはよく分かりませんよね。よく分からないけど、至るところで聞く。先日、近所の100円ショップで女房と娘が買い物していたら、店内のBGMでマツケンサンバがかかったそうです。途端に、店内のあちこちにいた子供達がいっせいに声をあわせて、「マツケンサンバ〜」と歌いだしたそうな。うちの娘は、そういう時はゴーイングマイウェイなので、黙ってたそうですけど。

楽曲が非常に優れている、というのはもちろんあると思います。大御所宮川泰先生の息子さんである宮川彬良という作曲家のセンスが素晴らしい。この方、NHK教育の夕方クインテットという番組を担当されていますが、女房に言わせると、この番組の楽曲構成も実にセンスがいいそうです。お父さんみたいなコテコテの歌謡曲じゃなくて、力の抜けた耳に心地よいメロディの書ける方なんですね。

でも、マツケンサンバの流行には、ちょっと別の要素もある気がする。その要素、というのが、あのダンスにある気がするんです。真島さんの振付指導にあわせて、その後ろで楽しそうに踊っているバラエティタレントたちを見ていて、「そうか」と納得。「これって、ピンクレディーじゃん。」

日本人というのは、音楽に合った振付で踊る、という文化をあんまり持ってないんじゃないかな、と思います。社交ダンス、というのは、「Shall We ダンス?」以降も相変わらず一部の愛好家のものですよね。盆踊りやソーラン節、阿波踊り、ディスコとかも、「決まった振付で音楽に合わせて踊る」というものじゃない。単純な振りをリズムに合わせて繰り返すのが基本。

ガレリア座、という所は、オペレッタをやることもあって、音楽に合わせて決められた振りで踊ることが結構あります。ダンスレッスンもたまにやります。曲に合わせた振付を、ガレリア座の誇る魅惑の振付師F女史の指導で踊るんです。そういう時、F女史は、まず音楽なしで、「次は右足で、ワン・ツー、で、次に左足をスリー・フォーで回して」なんて言いながら振付けていく。これが訳分からない。何がどうなっているのかよく分からないし、足と手がバラバラに動いたりするともう頭がこんがらがってくる。そういう、意味のよく分からない体の動きを、「じゃ、音楽に合わせてみようか」といって、流れる曲に合わせて踊ってみると、これがすごく納得できる。その瞬間が無茶苦茶楽しい。

体の動きと曲がシンクロする快感。真島さんの指導を受けたタレントたちが、「え?右足?上上下下上?」とか、訳分からないままに体をぎくしゃく動かして、「じゃあ曲に合わせて動いてみましょう」と、マツケンサンバに合わせて踊りだした途端、ちゃんと踊れないまでもすごく楽しそうに踊りだす。その気持ち、すごく分かるんです。自分の体の動きが曲とシンクロした途端、ステップやポーズに意味が与えられる。その快感。

ピンクレディーがあれだけ流行したのにも、同じ構造がある気がするんです。都倉俊一の楽曲の素晴らしさもありますが、ピンクレディーのあの「決められた振付」で、曲に合わせて体を動かす快感。共通しているのは、この日記でよく取り上げられている、音楽による、自分の身体性の自覚、です。マツケンサンバの振付自体も非常にシンプルで優れたものだと思うんですが、その振付に合わせて踊ることによって、自分の身体による「表現」意欲が満たされる、その快感。

体の動きと曲がシンクロする。それってすごく気持ちいいことなんだよね。未だに、30代の女性たちに、「UFO」を聞かせると、全員があの振りで踊りだすと思う。踊らないやつはいないと思う。いや、少しはいるだろう。あんまりいないと思う。みんな手を頭の後ろからひょい、と出して、両腕を胸の前に組むぞ。少なくとも私の知っている30代の女性はみんなそうする。私の知っている30代の女性に偏りがあるのだろうか。ちなみにうちの女房は絶対踊ります。