ラララ歌唱

週末のガレリア座の合唱練習は、音採り練習。まだ訳詞が届いていないので、各パートごとの音採りの際には、みんな、「ラララ」と歌います。でも最近、どうもこの「ラララ」歌唱が気持ち悪くて仕方ない。

「la」という音は、発声的にそんなにいい音だと思えないんですよね。「l」の子音って、舌がどうしても上に上がってしまう。舌が上がると、ひきずられてアゴも上がってくる。結果的に、口腔の中全体が平べったくなる。当然、続く「a」の母音も、口の中が縦に開いた深い「a」ではなくて、日本語的な平べったい「ア」になりやすい。

きちんとした深い「a」を保ちながら、「la」と言うというのは結構大変だと思うんです。アゴが開いているから、舌と上あごの距離が遠くなる。その遠い距離を、舌先が行ったり来たりしないといけない。音採りの段階で、なんで、そんな大変なことをしないといけないんだろう?

・・・とはいえ、なぜか、音採りの時には、「ラララ」で歌う、というのが一般的なようで、みんな疑いもなく「ラララ」とやってるわけですけど、なんでなんだろう。これって、世界的に一般的なことなのかなぁ。逆に、「la」以外に、音採り用にいい子音と母音の組み合わせって、どんなのがあるだろうか。ちょっと考えてみました。

まず、「la」のように、「子音+母音」という形をとるのは、子音によって、拍や音の変わり目を明確にする意図があるのでは、と想像します。全部が「a」だと、どこで音が変わったのか、どこで拍が変わったのかが分からなくなってしまう人が多いでしょうし。なので、「子音+母音」の形は残すことにしましょうか。(本当は、子音のように母音を鳴らす、というテクニックがあって、これを使えば、拍はきちんと見えるらしいんですけど、そんな難しいことができる人は、そもそも「ラララ」でなんか歌わない。)

では、「l」+「a」以外の組み合わせで、最も口腔内が自然に開く組み合わせってのはどんなのでしょうか。まずは子音について考えてみる。口腔内を自然に開けた状態で、唇や舌が忙しくない子音、というと・・・

と考えると、意外とこれが難しい。「s」や、「h」といった子音は息を十分送り込んでやらないと鳴らない。「k」とか「j」なんかはノドの奥が閉まりやすい。「t」は「l」より大変だろう。「m」は「l」より大変そうだ。「w」なんかとっても大変。「n」も悪くないけど、鼻腔共鳴に頼りすぎちゃう弊害がありそう。

とすると、あれ、意外と、子音の中でも、「l」って悪くないんですね。やっぱり、伝統にはそれなりの理由があったんだなぁ。ということで、子音は「l」をそのまま採用。

次に母音なんですけど、「a」というのは、日本人にとってはあんまりいい素材ではない気がする。ただでさえ口腔が狭くなりがちな「l」と、日本語の「ア」の組み合わせはやっぱりまずい。ということで、口腔の奥が開きやすい、「u」または「o」の母音でどうだ。

ということで、「ラララ」じゃなくて、「ルルル」あるいは「ロロロ」での音採りというのはどうですかね?「夜明けのスキャット」みたいだな。知らない?そういう若者は出て行っておくれ。

でも一番いいのは、音採りの段階から、きちんと原語で歌うことでしょうね。どんな訳詞がきたとしても、もとの音符を生み出しているのは、原語の子音・母音・イントネーション・音価。もとの音符を理解するためにも、原語で歌っておくのが一番いい。もちろん、ガレリア座の場合には、最終的には訳詞で歌うので、原語歌唱のテクニックを身につける時間がもったいない、という話もあるとは思うんですが、多少怪しい原語でもいいじゃないですか。今回の演目は、ウィーンの香りあふれる生粋のウィーナ・オペレッタ。原語の洒落た響きも合わせて、楽しみたいもの。

というわけで、週末は、オルレンドルフのリートを、怪しいドイツ語で歌ってみました。怪しい上に舌も回ってないぞ。途中「ラララ」になってるぞ。ダメじゃん。すみません。