素敵な夜

昨夜、勤務しているビルのロビーでイブニングコンサートがありました。今日はその話。
ソプラノ:林 満理子 バリトン:中西 勝之 ピアノ:島内 亜津子
というキャストで、「進化したオペラ オペレッタとミュージカル」というテーマでのコンサートでした。
奇しくも、中西さんはうちの女房と、林さんは私と、舞台をご一緒したことがあります。中西さんは、以前この日記にも書いた、新宿オペレッタ劇場の「ヴェロニク」にご出演。女房は合唱団の一員として、共演させていただきました。林さんは、大田区民オペラ合唱団の「コシ・ファン・トゥッテ」でデスピーナを演じられ、私も合唱団の中にいて、ご一緒させていただきました。世間は狭い、というか、何というか。そんなご縁もあり、今回は、女房にも声をかけ、娘ともども、一家総出で拝聴させていただきました。
 
プログラムは、オペラ座の怪人・ウェストサイドストーリ・マイフェアレディなどのミュージカルナンバーと、メリーウィドウ・小鳥売り・マリツァ伯爵令嬢などのオペレッタナンバーを並べた親しみやすい選曲。お二人とも、とにかく持ち声が素晴らしくきれい。林さんの声は何ともいえない潤いがあって、色気と若々しさが同居した、実に瑞々しいお声です。中西さんは、ヴェロニクの時にも思いましたけど、つやがあって張りがあって、豊かな響きを持った、まさに「美声」の持ち主。声の色の鮮やかさだけで、十分楽しめました。
また、お二人とも容姿に恵まれた方。林さんは実に表情豊かで、笑顔がキュートだし、中西さんはちょっと野村萬斎に似た感じで、上背があって押し出しが立派。そういう意味でも楽しめた1時間でした。
毎回思うことですが、ビルのロビーでの無料コンサート、というのは、歌手と聴衆の間の距離感が掴みにくくて、大変だろうな、と思います。今回のような選曲だと、歌い手は色々と聴衆に絡みたい、というか、ただ舞台上だけで演技するだけじゃなく、客席も巻き込んだパフォーマンスを見せたくなるだろうし、実際そういう場面もいくつかありました。でも聴衆側が、それに対する心構え、というか、準備ができていない感じがある。歌手側も、そのあたりを手探りしながらの、ちょっと遠慮がちなパフォーマンスになる。先日の「カルメン」抜粋コンサートのように、観客に遠慮なく、舞台上で世界を作ってしまうことができればいいんですが、今回のような選曲だと、聴衆との距離感を計りながらのパフォーマンスになってしまう。そういう「遠慮」が、所々で見え隠れしてしまった気がします。
もう一つ言うと、やっぱりミュージカルナンバーというのは難しいですね。まず音域が広い。低音から高音まで、まんべんなく鳴らす必要があって、しかもオペラよりも「言葉」をきちんと聞かせる必要がある。さらに、やっぱり、歌だけじゃない、別の表現能力も問われる。お二人とも、オペラ歌手の中ではとても「色気」のある方々だと思うのですが、ミュージカルナンバーを歌っているときよりも、オペレッタを歌っているときの方が活き活きして見える。ミュージカルになると、ちょっと勝手が違うぞ、というような感じがちょっとしました。曲のせいもあるのかなぁ。マイフェアレディはとっても楽しかったんだけど、オペラ座の怪人とウェストサイドはちょっと手探りな感じがした。無茶苦茶難しい曲ですもんねぇ。
終演後、お疲れのところ、ちょっとだけご挨拶することができました。お二人とも、舞台を降りても、本当に素敵な方々です。
 
コンサートの後、O夫妻と待ち合わせをし、夕食をご一緒する。Oさんには、今度、大久保混声合唱団のコンサートのステマネをお願いしているので、その打ち合わせも兼ねて。ご家庭での小事件も一段落した、とのことで、よかったですねぇ。
素敵なコンサートを家族で楽しみ、気の合う仲間と夕食をご一緒する。いい夜だったなぁ。また、こういう楽しい夜が過ごせますように。