映画の話

今日は、最近見た、というか、先日の北京出張の飛行機の機内で見た映画の話をしましょう。

(1)「アゲンスト・ザ・ロープ」

今年日本公開になる予定のメグ・ライアン主演の新作。実在の女性をモデルにした映画、ということで、かなり面白かったです。男性絶対優位のボクシング社会に殴りこみをかける女性プロモータ、ということで、テーマ的には「G.I.ジェーン」なんかと共通。でも、デミ・ムーアが、ひたすら「女」を捨て、「男」を獲得するために丸坊主になったりしていたのに比べて、この映画のメグ・ライアンは、「女」を前面に出して男性社会に挑む。そこがかえって世間の反発を食ったりもする。でも、育てたボクサーがピンチの時に、彼女の一言でよみがえる、というクライマックスシーンでは、女性の持っている「母性」のエネルギーが、男性社会にはないパワーをもたらしてくれるんだ、というようなメッセージを感じました。女性は女性だからこそ、男性にはない発想とパワーで、活躍できる、というような。そういう意味でも、「G.I.ジェーン」よりよっぽど健康的な気がしたな。
メグ・ライアン、必死でイメージチェンジを図っているっていう話だけど、やっぱり「恋人たちの予感」のメグ・ライアンとして見ちゃうんですよね。本人はそれがイヤなんだろうけど、そう思って見ていても、この映画でのメグ・ライアンは悪くないな、と思いました。戦闘服着たり、ヌードで濃厚なベッド・シーンとかやってるよりも、似合ってる。
どんな役をやっても、その人に見えちゃう役者さんってのもいますし、どんな役をやっても、その役に見える役者さんってのもいます。どちらにも共通しているのは、どんな役でもできる、ということ。これは確かに得な役者さんなんでしょうね。その一方で、メグ・ライアンみたいに、まとっているオーラが独特すぎて、役を選んでしまう役者さんってのもいる。損かもしれないけど、この同じオーラをまとい続けているっていうのも、一つの財産ですよね。哀川翔さんとか。並べるなっての。
 
(2)「死に花

日本映画チャンネルだったかで、予告編を見て、面白そうだな、と思っていたんですが、予想以上に面白かったです。若干ストーリに強引なところもないわけじゃない、というか、もともとすごく強引なストーリなんですけど、もう少し丁寧に伏線を張ってもよかった気がする。でも、とにかく痛快で、わくわくする展開。達者な役者さんと、その持ち味を十分引き出す軽妙な演出。みんな、日本映画はつまらない、なんて言うけど、こんなに面白い日本映画があるのに、どうしてかなぁ。宣伝費をつぎ込んで、観客大量動員する映画に限って、つまらない映画が多いからかなぁ。
前半の、藤岡琢也加藤治子の老夫婦のシークエンスは泣けました。加藤治子さんって、上品でいつまでたっても子供のような老婦人、というのをやらせたら、ほんとに見事ですねぇ。あの生活感のなさ、というのは貴重。他にも、宇津井健さんがやたら生真面目な元銀行員だ、とか、青島幸男さんが女たらし、だとか、メインキャストのキャスティングも楽しいんだけど、小林亜星さんとか、高橋昌也さんとかの脇役が、すごくいい味を出している。極めつけは森繁さん。いるだけですごい。妻夫木は、なんでいたのかよくわからない。星野真理は頑張ってた。
年齢を経た俳優さんっていうのは、やっぱり存在感が違いますね。老優の競演、という感じの映画って、それだけで見ごたえがある。若手俳優とのバランスがなかなか難しくなっちゃうんだろうけどなぁ。