追加夏季休暇

先週、父方の伯父が亡くなり、急遽、金曜日にお休みを取って、お葬式に行くことになりました。83歳の大往生ではあるのだけど、私の亡父によく似た風貌の伯父さんでしたから、父の葬儀を思い出してちょっと感傷的になったりした。

女房と娘を東京に置いての一人帰省だったので、追加の夏休みを貰った感じで、土曜日早朝に実家を出、以前から行きたかった、神戸市東灘区の近辺に向かう。私の母校の近辺をぶらついて、灘五郷と言われる日本酒製造工場の立ち並ぶあたりを歩いてみよう、という計画です。

東灘区の近辺は、95年の震災で最も甚大な被害を被ったエリアです。でも、あれから13年たって、町並みはすっかり綺麗になりました。立ち並ぶ家やビルが新しいものばかりだ、というのが、逆に被害の凄まじさを物語っていたりしますが。

高校時代によく立ち寄った商店街の食堂も、全然違う店になってしまっているんだけど、学校自体はしぶとく以前の古臭い校舎のまま。テニスコートだった所に新しい校舎が出来ていたり、多少こぎれいになったところもありますが、男子校っぽい汗臭さとほこりっぽさは相変わらずでした。職員室を覗くと、さすがに夏休みで、先生方は数少なかったのだけど、昔お世話になった物理の先生にご挨拶ができました。十二分に思い出を噛み締めて、学校を後にする。

学校と六甲山を背にして南下。住吉川の堤防を降りて、川沿いの道を海に向かって歩きます。ちょうど雨模様だったこともあり、住吉川の流れは相変わらず透き通って綺麗。阪神電車の高架の前で堤防に戻り、高速道路の下を抜けて少し西に行くと、菊正宗・白鶴・桜正宗といった地元の酒造会社が立ち並ぶエリア。灘五郷の「魚崎郷」と呼ばれる酒造りの中心地です。

在校中に、一度、菊正宗の工場見学、という授業があったのですが、近代的な工場の中に醸造タンクが立ち並ぶ様子しか記憶にない。震災前には、昔ながらの板壁の酒蔵が立ち並ぶ古い町並みも多少残っていたそうなのですが、震災で完全に破壊されてしまったそうです。昔の酒蔵の様子を再現している、白鶴酒造資料館に立ち寄る。

昔ながらの酒造りの道具を並べて、等身大の人形たちを使って、作業の様子を再現してあります。一通り見るだけでもかなり見ごたえのある展示。酒蔵というと、女房の実家の大船渡でコンサートをやった、No.3 Gallaryになじみがあるんですが、白壁で天井の高い吹き抜け空間だったNo.3とはかなり趣が違います。そもそも二階建て。1階で地中に埋め込んだ大釜で米を蒸し、蒸した米が入った巨大な桶を、滑車を使って2階に移動し、後工程へ、という構造になっています。相当大規模な酒蔵。

利き酒コーナーで絞りたての生酒をいただき、お土産物屋さんで、片口のセットと、資料館オリジナルの生酒を購入。店員さんに、「この資料館は震災でも無事だったんですか?」と尋ねてみる。

「資料館は2つの酒蔵がつながった構造になってるんですけど、片方は全壊、片方は半壊でした。半壊の方は、なんとか古い柱とかを活用して、元の形に復元してあります」とのこと。「まぁ割れるものは全部割れましたねぇ」とおっしゃっていました。本当に、よくここまで復興してきてくれたこと。

学校を卒業してから、折角魚崎近くの学校に行っていたのに、昔ながらの酒蔵の趣を知らない、というのがちょっと引け目になっていました。震災で昔の町並みが失われたことや、No.3 Gallaryで酒蔵そのものに興味を持ったこともあって、一度行きたいなぁ、と思っていた場所。伯父にプレゼントしてもらった追加の夏季休暇、有意義に過ごすごとができました。

帰宅してみれば、女房と娘が、お友達と一緒に映画館に行って、「崖の上のポニョ」を見てきたという。二人で共通の話題で盛り上がっているのを見て、仲間はずれ気分が募り、「オレも見に行く!」と、車を飛ばして土曜日のナイトショーに一人で行ってしまいました。レイトショーで「ポニョ」を一人で見ている40過ぎの男。いやだねー、かつてのアニメおたくそのものだねー。「ポニョ」の感想はまた別途。ちょっと中途半端だったかなぁ、という感じ。ではまた。