初夏にうたおう〜新宿トパーズって、すごいぞ〜

4日の土曜日、新宿文化センターで開催された、新宿区合唱連盟の合唱祭「初夏にうたおう」を聴いてきました。女房が所属する大久保混声合唱団のステージと、あとは、新宿トパーズというすごい合唱団のステージがお目当て。

初夏にうたおう、というイベントは、新宿区合唱連盟が主催し、毎年6月に開催されているイベント。参加団体の数はものすごく多く、イベントはまさに1日がかりです。新宿を拠点とした合唱団は本当に沢山あるんですねぇ。新宿六中の卒業生で構成された、素敵なオジサマ方の男声合唱団「六声会合唱団」から、ロシア民謡専門の合唱団「白樺」、なんだか大学サークルノリの新宿混声合唱隊「Neo−Tokyo」、辻秀幸先生や辻志朗先生の指揮される数々の合唱団などなど。日常生活にコーラスがしっかり根付いている方々が、これだけ沢山いらっしゃるのだ、という、ある種の感動さえ感じるイベントです。これが入場無料ってのはすごいなぁ。

娘連れだったこともあり、お目当てのステージ以外のステージは、出たり入ったり、という感じ。聴きたい合唱団は一杯あったのですが、あまり聴くことができませんでした。お世話になった上江法明先生や末吉嘉子先生の合唱団、佐々木理子さんの合唱団など、聞き逃しちゃった合唱団が沢山あって、なんだか申し訳ない限り。

その中で、なんとか娘をなだめながら聞けたのが、辻秀幸先生の指揮される「コーロ・ネスポラ」と、ガレリア座でもお世話になった佐藤一昭先生が指揮され、お友達のピアニストのPさんが伴奏された合唱団「つつじ」。ネスポラは、以前、正行先生が闘病中の演奏会をステマネとしてお手伝いしたことがある、実力派女声合唱団。わらべうたを中心にした、ユーモラスな楽しいステージ。やっぱり実力があって、ハーモニーがばっちり決まっている合唱団がこういう遊びをやると、かっこいいですよねぇ。

合唱団「つつじ」は、大久保混声合唱団も歌ったことのある、「よしい讃歌」という歌を歌われたのですが、この曲、筑後吉井町という町が、いわゆる「村おこし」的な発想で作った曲。いわゆる地方讃歌なので、なんだか小学校の校歌のようなまっすぐな歌詞。一方で、安藤由布樹さんという作曲家は、とてもきれいな旋律を書く方なんですね。まっすぐな歌詞で、きれいな旋律で、しかも佐藤先生流の無茶苦茶カンタービレな演奏。女房ともども、なんだかお尻がむずがゆくなるねぇ、と言いながら聴いておりました。色んな合唱曲があるんですよねぇ。

さて、お目当ての第一番目、大久保混声合唱団です。「終わりのない海」「わたりどり」という、アンコールピース2曲をならべたステージ。前回の東京カンタートの時には、ちょっと消化不良のような感じがあったのですが、今回のステージはとても完成度が高かった。歌いなれたアンコールピース、ということもあったのかもしれないですが、変な「狎れ」を感じない、とても端正な演奏でした。特に、アルトの声の、芯のしっかりした柔らかな響きに感動。ソプラノの声もとても美しくまとまっていた。なにより、音程がとてもクリア。「終わりのない海」の「またあした」のリフレインが、本当に綺麗にハモって、思わず涙が出そうになりました。さすがです。

お目当ての二番目、新宿トパーズ。

この合唱団のステージを始めて拝見(あえて拝聴、とは言わない)したのは、もう5年以上前になります。やっぱり「初夏にうたおう」で、ミュージカル「エビータ」の曲を演奏されたのを聴いたのです。ひたすら驚愕。

文章で説明するのがものすごく難しいのですが、非常に簡単に言えば、宝塚のレビュー舞台を、8分間くらいの演奏時間に凝縮しているようなステージ、といえば一番当たっているかもしれない。ものすごい衣装です。きんきら当たり前。原色あたりまえ。新宿トパーズ、というのでYahoo検索したら、衣装屋さんのホームページが出てきて、いきなり、「キャバクラ衣裳,ソープランド衣裳,コンパニオン衣裳」なんてのにならんで、「新宿トパーズ コーラス衣装」って出てきて笑っちゃった。そのものすごい衣装が、演奏中にくるくる変わっていくんです。

要するに、「早替え」ですね。マジックテープなどを駆使しているようなのですが、どういう仕組みなのかよく分からない。「エビータ」の時には、8分間の演奏時間のうちに、5〜6回くらい衣装が変わった。それも、真っ白な衣装からいきなり原色きらきら、とか、すごいインパクト。歌に拍手が起こるのじゃなくて、その早替えのたびに、客席がドっと沸く。この「エビータ」の舞台、なにか縁があったらしく、偶然、移動中の車の中で、FMNHKから流れてきたことがあるんです。おかあさんコーラスの大会の録音。録音で新宿トパーズの演奏なんか聞いたって意味ありません。歌と全然関係ないところですごい拍手が沸くんです。音だけ聴いてると、何のことやらさっぱりわからん。今回は、「マンマミーア」などのミュージカルナンバーの舞台で、衣装替えは2回だけ。それでも最後は真っ赤なラメ入りレオタード!

でも、トパーズの舞台というのは、衣装だけではなく、その完璧なステージングが魅力なんです。一糸乱れぬ群舞。舞台全体をダイナミックに使った振付と配置の見事さ。歌、という点で言うと、どうも2・3人、すごく声の出る方がいらっしゃるらしく、その方を軸にしてちゃんとコーラスとしても成り立っている。ほんとにすごい。

失礼な言い方をすれば、一人一人の団員さんを見ると、わりと普通のおばさまだったりするんです。その方々が、真っ赤なラメ入りレオタードで見事に踊っている。私の夢の一つに、この新宿トパーズを主役にしたドキュメンタリー映画か、「Shall We ダンス?」みたいなコーラス映画を見てみたい、という夢があります。普通のママさんたちが、ここまで完成されたパフォーマンスを仕上げていく過程ってのは、プロジェクトX顔負けの感動的なドラマになると思うんだがなぁ。

5歳の娘も面白かったらしく、いつも書いている絵日記に、トパーズの方々がにこにこと踊っている絵を描いて、「しんじゅくぶんかセンターにぶたいをみにいった。おもしろかった」と書きました。先生に、「どんなぶたいだったのかな?」と聞かれたけど、答えようがないよねぇ。トパーズはトパーズでしかない。トパーズはとにかく見てみるしかない。そういう、「生で見てみないと分からない」舞台を作れるっていうのは、すごいことだと思います。