大久保混声合唱団 辻正行先生追悼演奏会CD鑑賞

土曜日の練習後、大久保混声の練習に出ていた女房と合流。帰宅後の深夜、先日行われた、大久保混声合唱団の辻正行先生追悼演奏会のCDを聴く。これが素晴らしかった。
まず、1曲目は、ブラームスの「Nanie」。オープニングの新交響楽団木管の響きの美しさに驚嘆。これでアマチュアオーケストラと名乗っていいんですか?深い色合いのある歌声と、ぴったりと寄り添う弦のアンサンブルの見事さ。大久保混声の声の艶やかさは勿論素晴らしいのですが、その歌に対する弦の寄り添い方が絶妙。弦がこれだけ「歌える」オーケストラ、というのは、ほんとにすごい。声とオーケストラが見事に調和した、素晴らしい演奏。
2曲目は、高田三郎先生の「わたしの願い」のオーケストラ伴。オーケストレーションの見事さに感動する。高田三郎先生、というのは、本当にすごい人だったんですね。今回、埋もれていた楽譜を発掘しての、本当に久しぶりの演奏だったそうですが、この譜面を発掘して、これだけの高度な演奏をした、という一点だけでも、日本の合唱史に残る演奏会だったのだ、と再認識。オーケストラは相変わらず素晴らしく、後半のフーガの金管の響きが、柔らかく、かつ晴れやか。こんな金管の音が出せるなんて、ほんとにアマチュアオーケストラって名乗っていいんですかい?
大久保混声合唱団の演奏としては、今回はテノールの声のつややかさと、アルトの深みのある響きが印象的でした。オーケストラ伴奏で演奏するには、ソプラノとバスには、もう少し厚みが必要かもしれません。そんな偉そうなことが言える人間じゃないし、演奏会の水準としてはほとんど文句の言えるような水準じゃないんですよ。だから、ほんとに、あえて言えば、というレベルです。スーパーアマチュアの合唱団と、スーパーアマチュアのオーケストラが寄り添った、本当に最高水準の演奏でした。
2曲目終了後、正行先生と団員の皆さんを写した写真をスライド上演し、スライドに合わせて、正行先生の思い出をナレーションで流す、という演出がありました。演出・構成をうちの女房が担当し、ナレーション原稿を、「あんたが書きなさい」と女房から指令され、大久保混声に在籍したことのない人間でありながら、私が原稿を書かせていただきました。ゴーストライターというのはこういう気分なのかなぁ、と思いながら、いただいた資料を元に、なんとも感傷的な文章を綴ってお渡ししました。
演奏の素晴らしさに比べて、安手の昼メロのような原稿だったので、正直青ざめたのですが、ナレーションを担当してくださった団員の方が、実に素晴らしい朗読を聞かせてくださいました。それこそ、いい声と、計算された演技があれば、食堂のメニューを読んでも人は感動するんです。原稿上の言葉をきちんと読み込み、とてもしっかり計算された声の色、息の混ぜ方、艶やかな声。おかげで、私の拙文が演奏の風格を傷つけることなく済んだようで、本当にほっとしました。
3曲目は、山本純之介先生の「光葬」。川井敬子先生のクリアで確かなピアノの響き。こういう曲だと、大久保混声のソプラノの硬質な響きが、かえって美しく響くんですねぇ。ここでも、テノールの、軽やかで芯のしっかりした、それでいながら艶やかな響きが素晴らしかったです。
本当に、素晴らしい演奏でした。団員のみなさん、あの安っぽい文章をあそこまで感動的に仕上げてくれたナレーションの担当の方、ステマネを引き受けてくれたOgiちゃん、M団長その他のスタッフのみなさま、本当にお疲れ様でした。