「モンマルトルのすみれ」初練習

23日、ガレリア座の次回公演、「モンマルトルのすみれ」の初練習がありました。実際の練習はその前の週から始まっていますが、私と合唱の方々にとっては初めての練習。1幕フィナーレの練習でした。

私の役は、パリーギ、という、主役のヴィオレッタの後見人の役。モンマルトルの街角で、ヴィオレッタがマンドリンを抱えて歌を歌い、稼いだ銭を巻き上げている老人、という役どころ。そのパリーギから、ヴィオレッタを自由にしてやる、というのが、1幕フィナーレの大きなドラマになります。

これだけ聞くと、単なる悪役と思えますし、実際、パリーギの歌う旋律は、半音階のドロドロした雰囲気で、実に悪役っぽい感じがします。でも、どこかしら哀愁があって、切実な響きがする旋律でもある。悪意からイジワルをしているのじゃなくて、生活のためにやっている、という実感がなんとなく滲み出ている。そういう生活感を忘れないようにしたいなぁ、と思いました。

前回の「乞食学生」のオルレンドルフほど、高音域で頑張る必要がないので、その点は楽。でも逆に、自分の得意な低音域に行った時に、声帯の響きに頼ってしまって、鳴らしすぎてしまう。このあたりのバランスを計算できるようにしないと。

ガレリア座の公演にはPAが入ります。ワンダースリーという音響会社のKさんという、ベテランの音響マンが、床に仕込んだマイクで見事に声を拾ってくれる。なので、客席の隅々まで声を飛ばさないと、という部分については、さほど力む必要はない。

でも、女房に言わせれば、「PAってのはやっぱりクセモノだよねぇ」。非常に細かい声の表現まで拾われてしまうから、かえって怖い。ちょっとした音程の狂いや、歌いまわしの細かい癖まで、客席の奥まで飛ばしてくれる。普通ならオケの音がかき消してくれるような、そういう細かなミスまで拾われてしまう。

「だから余計に、とても微妙な歌いまわしの上手下手や、音程の確かさ、声の色とかに気を使わないといけないんだねぇ」と、女房と話していました。結局のところ、きちんと客席に飛ぶような、正しいフォームと美しい響きと、充分に吟味されたフレージングを究めていくしかないんですよねぇ。

PAが入っているからこそ、そのPAに、美しい響きだけを乗せること。そのためには、結局、正しいフォームを維持し、楽譜を読み込んで最も美しいフレーズを研究し、実践するしかないんです。日々鍛錬。