クウガはやっぱりいいなぁ

FACEBOOKにも書いたんですが、東映特撮のOfficial YouTubeチャンネルで最近毎週2話ずつ配信されていた「仮面ライダークウガ」が本日最終回を迎えました。それで、自分がこの日記でクウガのことを書いたのっていつだったかなぁ、と思って見返してみたら、書いてました、2004年4月に。この日記を書き始めたのが2004年3月からだから、かなり初期ですね。17年前に見てハマったものにまたハマっとるんですなぁ。我々夫婦が進歩していない、というよりは、この「クウガ」という作品が時代を超えた名作なんだよね、ということで、今日は2004年4月の自分の日記と同じタイトルで、「クウガ」を見直して思ったことをまたツラツラと。作品をご覧になっていない方々にはネタバレも含みますので、まずはとにかくレンタルDVDででも、この作品を全てご覧になってからお会いしましょう、ということでここでご退場いただいた方がよいかもしれません。さて語るぞ。

クウガ」の魅力が、最後までぶれなかったテーマの深さである、とか、笑顔と優しさを究極の武器として戦い抜いた五代雄介というヒーロー像の造形である、とか、その彼の優しさに協力する警察とのチーム感であるとか、色んな評論がネットにはあふれてますし、私も今日の最終回に号泣した口なので、そういう評論には全力で頷いてしまいます。でも、複数の人も指摘している、私や女房がこの作品にハマった大きな理由の一つは、敵役として設定されたグロンギ族たちに一貫するスタイリッシュな美学なんじゃないか、と思うんですよね。

グロンギ語、という未知の言語をあやつり、世界を究極の闇に葬る、という「ファイナルゲーム」(グロンギ語で、「ザギバスゲゲル」、と言う)に立つ資格を得るためのゲーム(ゲゲル)を介してクウガと対峙する戦闘民族、それが「グロンギ族」。一定のルールを自らに課してそのルールに従って人間を殺戮していく、という、人間から見れば一点の同情の余地もない最悪の存在で、特に終盤に現れた「ゴ・ジャラジ・ダ」というグロンギは、無力な高校生を苦しめるだけ苦しめて殺した挙句に、そのお葬式に姿を見せて次の犠牲者が怯えるのを楽しむ、という、最凶の極悪怪人として日本の特撮史上に名を残す非道ぶり。

でもこの極悪の連中がですね、なんだかかっこいいんですね。ファッショナブルだったり、美男美女揃いだったり。そもそもグロンギ文字の造形にせよ、彼らが入れているタトゥーにせよ、デザインが洗練されていて無茶苦茶かっこいい。制作スタッフが放送開始にあたって入念に世界観を作り上げている様子が隅々に垣間見える。

七森美江さんが妖艶かつ美しい謎めいたバラの女、「ラ・バルバ・デ」、木戸美歩さんがカッコイイ「メ・ガリマ・バ」、革命のエチュードを奏でる「ゴ・ベミウ・ギ」、無敵感半端ない「ゴ・ガドル・バ」など、どのグロンギ達もキャラクターが濃くて、そして何より、戦い方が潔い。相手の方が自分より強い、と認めたあとの散り際の見事さ。バルバ様が一条さんの放った断裂弾に倒れるシーンで、最後にうっすらと浮かべる笑みとか、痺れるものがある。

スタイリッシュな敵役の魅力が作品の人気を支える例って、昔からあって、すぐ思い浮かべるのは機動戦士ガンダムですよね。ジオン公国モビルスーツの方がガンプラの中でも圧倒的に人気があるという話を聞きますし、シャアを初めとして、ランバ・ラルやマクベなど、ジオン軍の軍人さん達には魅力的な人物が多い。銀河万丈さんの演じるギレン総統の演説に陶酔感を感じてしまった人も多いはず。ゴジラだってやっぱり悪役だから人気があるんだし、アメリカで大ヒットした「ジョーカー」のように、悪役が自分なりのロジックを貫く姿のカッコよさ、というのは、任侠映画の時代からタランティーノ作品まで続くエンターテイメントの深層流なんだと思う。

でも、やっぱりクウガの魅力は、そんなスタイリッシュな悪役たちに対峙するヒーロー側が発するメッセージが、悪役の存在感以上にリアルな重量感で、「人としていかに生きるべきか」という重たい問いかけを突き付けてくる所。悪をカッコよく描くことで、「善悪というのは相対的なものだ」というメッセージを描くのではなく、あくまで悪は絶対悪として描きながら、それに対峙する人間の強さとは何か、「善」の本質とは何なのだろう、という所を、最終回のギリギリの瞬間まで問いかけ、突き詰め続けた作品だったと思います。

人間から見れば理不尽で目的も判然とせず、そしていつどこで自分に襲い掛かってくるか分からない「グロンギ」の恐怖は、現在の「コロナ」の恐怖と理不尽さとも重なる所が多くて、そういう意味でも20年を経ても色あせない今日的な作品だなぁ、と思いました。「みんなが少しずつ、自分ができる限りの無理をしなきゃ」という五代くんの言葉とか、今の世の中でも何だかすごく沁みるんだよね。本当に、20年前にこの作品が世の中に送り出されたこと、この作品を作り上げたすべての人に、感謝しかありません。