2018年度のさくら学院を押し上げた、転入生たちと日高麻鈴さんのこと

 

先日のFreshマンデー全員集合回や、その前の週の中三回、アイドル三十六房など拝見していて、なんとなく思ったこと。2018年度のさくら学院の魅力の一つは、間違いなく転入生3人が生み出していて、それを引き出せたのは、日高麻鈴さんの存在が大きかったのかもしれない、と。(日高の高ははしご高、以下同様)

 

2018年度の中三3人の個々の能力の高さ、というの勿論あるのだけど、2018年のさくら学院のパフォーマンスの魅力は、この3人の能力の高さだけでは説明できなくて、むしろ個々の個性の魅力が強烈に輝いているところにある。2017年のBDと比較しても明らかに違って見えるのは、フォーメーションの美しさが多少犠牲になったり、あるいは多少のポジションのミスがあったとしても、恐れたり萎縮することなく自分を表現しようとする意欲がメンバー一人ひとりにあふれていること。そういう2018年度の魅力って、新谷生徒会長の控えめな性格によるのかな、とも思っていたのだけど、先日のFreshマンデー全員集合回を見ていて、むしろ転入生3人の存在が一つの大きな要因なのかも、と思った。

 

既にある程度の芸能界でのキャリアを持っていた野崎結愛が、完成されたプロフェッショナリズムで、積極的に自分を前に押し出そうとするのは勿論なのだけど、野中ここな、白鳥沙南の中一コンビが、とにかくガンガン前に出てくるのがすごい。野中さんの弾けたキャラクターは、学院祭の「なすお」で大爆発したけど、彼女の魅力はそれだけじゃない。アドリブで選んでくる言葉のセンスの良さ、ダンスの中に自分なりの物語を作り上げている表情の豊かさ、まだ粗削りでしょっちゅう破綻するんだけど、そこかしこに原石の輝きが見えるのを、まず迷ったらやってみよう、という思い切りの良さで前に出してくるのが素晴らしい。

 

白鳥さんは、そういう自己表現の部分ではまだ発展途上で、学院祭で折角「ペリーさん」ネタのコメントを振られたのに言葉が出てこなかったり、ダンスの時の表情も少しまだ単調だったりする。でも、負けん気の強さと意欲は野中さんに全然負けていないし、そして何より、日本人離れした透明感と品のある美少女ぶりが異次元。自分の未熟さについてもしっかり自己評価ができる方なので、この人も今後の成長ぶりがとっても楽しみ。

 

この3人の転校生がガンガン積極的に前に出ようとして、自然と、八木美樹さんや田中美空さんが押し上げられてくる。そういう下級生の積極さがあって、個々の能力の高い中三3人になんとか追いつこうとする中二4人の努力が積みあがる。そこに、「それぞれの個性を爆発させても、それでも高いレベルのパフォーマンスの軸がぶれない」という一つの理想的なロールモデルとして与えられたのが、はみ出せ委員長日高麻鈴なのじゃないかと。

 

日高さんの天然の癒しオーラや、超マイペースなキャラが、年度初頭で自分の立ち位置に悩んだ麻生さんや新谷さんの救いになった、というのは、三十六房でお二人が言っていたことだけど、転入生の、時には破綻(はみ出)しながらもガンガン前に出よう、という姿勢を支えたのも、実は日高さんの存在だったのかも、とも思う。それで完全に破綻してしまったらロールモデルにならないんだけど、日高さんの安定した歌唱とキレキレのダンス、どんな非現実的な設定でも自然に演じてしまう演技力、そしてそういう高い能力を日々進化させる努力が、転入生や下級生の自由度を上げながら、パフォーマンスの質を高めていく推進力につながったのじゃないかな、と思うんです。それにそもそも日高さんは、実はそんなに「はみ出し」ていない部分もあって、アイドル三十六房でのMV解説で一番常識的なコメントをしていたのが日高さんだったり、Freshマンデーのプレゼン回でも構成のしっかりしたプレゼンのできる自己プロデュース能力の高い人。そういう人が天然にボケてくる部分を、「それでいいんだよ」と肯定したのが、「はみ出せ委員長」という役職で、それが個々のメンバーの自由度を引き上げたのだったとしたら、間違いなく2018年度の職員室の生徒会人事のスマッシュヒット。

 

森先生は以前から、「役職が人を作るんじゃない、人がその年度の役職を作るんだ」とおっしゃるけど、「はみ出せ委員長」という、何をやればいいのかわからない役職を与えられて、「ほっとした」と言った日高さんが、2018年度の中三の緊張感を救い、下級生の個性の爆発を導いたキーパーソンになったのかも、と思います。だとすれば、昨年の「顔笑れ委員長」岡崎さんが2017年度のさくら学院の危機を救ったのと同じ構造が、ここでも現れて見えるよね。組織を安定させるのに、一人、その組織のシステムに捕らわれない自由なポジションを持つ人がいるとよい、という説をくみ上げたのは、マイケルクライトンの「アンドロメダ病原体」(オッドマン仮説、と言いましたね)だったですけど、日高さんは、2018年度のさくら学院において、オッドマンとしての役割を担い、それを見事にやり遂げた、と言えるのかもしれない。

 

さくら学院について語ることって本当に尽きないんだけど、2018年度ももうすぐ終わりだなぁ。卒業公演も、びっくりするくらい良席が確保できて、2018年度のくじ運の強さに驚いているんだけど、そういう縁で結ばれた2018年度、しっかり最後まで見届けなければ、と思います。