さくら学院公開授業「映像パフォーマンスの授業2」参戦記~やっぱり唯一無二のエンターテイメントだと思うんだよね~

1月20日(日)に開催されたさくら学院の公開授業「映像パフォーマンスの授業2」に参戦してきました。さくら学院の現場は、ライブビューイングを入れるとこれで4回目になりますけど、映画館で楽しむライブビューイングと、本人達を目の前にして客席との一体感を味わえるイベントでは密度が違う。しかも今回、非常にくじ運に恵まれて、1時限目から3時限目の一日3回公演を全部、それも全て7列目より前の席、という良席で楽しむことが出来ました。初めて生で見た新谷さんや日高さんに、「ああ、この人たちは実在してたんだ」という感動もあったんですけど、一方で、改めて、このグループの活動のユニークさと、エンターテイメントとしての完成度の高さを実感しました。ということで、今日は、さくら学院がやっているこの「公開授業」というエンターテイメントについて存分に語らせていただきます。ほんとに、こんなエンターテイメント他にはないぞ、と。

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会場で、なんと無料!で配布されていたファンブック、SDC(Sakura Data Collection)。さくら学院の今年の卒業生の過去の様々なデータを見事にまとめた、まさに父兄愛の結晶。プロの編集者の女房に見せたら、「このイラストと記事をこのレイアウトでまとめるのはプロの仕事だし、それを無料で配るってのはちょっと信じられない」と舌を巻いておりました。こういうファンブックとか、他のアイドルでももちろん存在するとは思うけどさ。でもね、「2018年度のこの子達の記録を、今残さないと後がない」みたいな焦燥感って、さくら学院固有のものだと思うんだよね。

さて、さくら学院の一つのユニークな舞台パフォーマンスである「公開授業」というのがどういうものなのか、という点を簡単におさらいしておくと、学校活動をエンターテイメント化した、というさくら学院のコンセプト上、授業そのものもエンターテイメントとしてファン(さくら学院では、父兄、と呼ばれる)に公開する、ということで、落語の授業や剣舞の授業といったパフォーマンス系の授業や、書の授業、アートの授業といった自己表現に関わる授業、または世界の授業、宇宙の授業、といった一般教養の授業まで、生徒の成長に資する授業を公開して実施する、というイベントです。呼ばれる講師は各界の第一人者なので、テーマだけでなくて授業そのものも面白くて、聞いている父兄にとってもためになる、と人気のイベント。今回、私が参戦した、「映像パフォーマンスの授業2」の講師は、白Aさん。紅白でSexy Zoneのパフォーマンスを演出した映像集団、ということで、講師陣がどれだけ豪華か、推して知るべしですよね。

本当にユニークだと思うのは、普通、エンターテイメントというのは、舞台作品として完成したものを製作して、それを披露するものだと思うのだけど、この「公開授業」という舞台作品は、授業の中で一つの課題(それは舞台パフォーマンスであったり、形のある作品だったりするのだけど)を製作していく、そのプロセスを生徒さんたちと一緒に共同体験することがエンターテイメントになっている、という点。「生徒と一緒に父兄も成長しよう」という謳い文句が、掛け声だけじゃなくて現実なんだよね。共同体験のプロセスでは、非常にテクニック的な「舞台裏」を見ることもできるし、さらに深い演者の内面に触れる瞬間もある。演者の成長を見せる、という意味では、声楽などのクラシックの世界でよくある「マスタークラス」というエンターテイメントにも通じるけど、さくら学院の「公開授業」は、生徒たちが基本的に「初心者である」ということが前提になるので、逆にそのパフォーマンスの持つ本質が見えてくる瞬間がある気がする。まだ真っ白な素材である演者自身の思わぬ能力が発揮される瞬間や、苦闘の結果与えられた課題を克服した瞬間のカタルシスなど、一期一会の時間を共有する楽しみもある。

今回の「映像パフォーマンスの授業2」で具体的にそれを感じた瞬間を並べると、制作のプロセスとして、白Aさんが、ホリゾントスクリーンに番号のついた格子を映写して、「この格子に合わせて白い箱を置いていくんです。その置き位置がずれると映像がうまく映らない」と解説している瞬間とか、生徒さん一人一人に、カウントを取りながらポーズのタイミングを確認していくプロセスなどが、まさに「製作の舞台裏」を見ている楽しみだったんですね。プロジェクションマッピングという技術がココまで進化しているんだ、という純粋な驚きを感じる、という意味では、教養番組的な側面もあった。さらに、2時限目で麻生真彩が難なくこなしていたギターのステップを、3時限目の八木美樹が無茶苦茶苦労しているのを見て、麻生真彩の身体能力の高さに改めて驚いたり、八木美樹がそれを何とか克服した姿に拍手を送るカタルシスも味わえたり。

単純な言葉で言い換えると、学校生活をテーマにした生のドキュメンタリーを見ているような感じなんだよね。ドキュメンタリーと教養番組と舞台パフォーマンスを一期一会の「コト」体験として楽しめる、という、多分、さくら学院以外にはほとんど体験できないエンターテイメント。

と言いながら、パフォーマーの勉強の真っ最中である小学生から中学生の子供達が舞台に立つ以上、パフォーマンスとしてはまだまだ未完成な部分が沢山出てくることも否定できない。そこを補う仕掛けがいくつか必要になってきて、もちろん、未完成な生徒さんたちが少しでも完成に近づいていくプロセスをドキュメンタリーとして楽しむのも、その仕掛けの一つではあるのだけど、それ以上に、一線で活躍している講師陣が見せてくれるパフォーマンスのクオリティがすごく高くて、それ自体で十分に楽しめるんです。前回参戦した「アートの授業」でも、イラストレーター、山下良平さんの素晴らしい作品が紹介されたり、山下先生自身が即興で画面に描いた木の枝の表現など、ちょっと鳥肌が立つような高度なパフォーマンスがあった(それを白鳥さんがざっくり消しちゃったんだけどねww)。

そして今回は、なんと言っても白Aさん。白Aさんの自己紹介、ということでまずは彼らのパフォーマンスを見せられるのだけど、これがとにかくカッコイイ。シンデレラ城で初めて見たプロジェクションマッピングが、こんな風にリアルな肉体と絡んでいくのか、という興奮。しかも、最後に、直前に撮影した父兄さんたちの写真との共演、なんてものを見せられてしまうと、舞台と客席が一体になる「特別な瞬間」を提供する一期一会のパフォーマンス、という、このブログで何度も書いている舞台の魅力が、最新のテクノロジーで100%発揮されている感覚に震えてしまう。だから舞台はやめられないんだよなぁ、という。

そしてこれにさらに付加されるのが、生徒達が過ごした時間の経過、その個人個人が持っている物語自体を楽しむ、さくら学院というグループ特有のエモーショナルな側面。少ない練習時間で白Aさんのパフォーマンスをやり遂げてしまう個々の能力の高さ、そんな力を身につけた中三3人がこれまで積み重ねた日々。その中三3人へのサプライズメッセージ、3月に迫った卒業を前に流す涙、そして冒頭に書いたSDCのように、その時間を共に過ごしてきた父兄さんたち自身の物語など、重層的な物語世界が重なって、本当に充実感が半端ない。

既存のエンターテイメントに、これに似たようなエンターテイメントがあるかしら、と思ったら、多分、歌舞伎と宝塚、あたりじゃないかな、という気がしますね。成田屋中村屋の家族の成長の物語とか、宝塚の学校感とか。でも、その成長の過程自体を舞台パフォーマンスとしてお金取って見せてしまう、というのは、多分さくら学院が唯一だと思います。ひょっとしたら、世界的にも珍しいパフォーマンスグループなんじゃないかなぁ。

今回の舞台で、唯一、ちょっと気がかりだったのは、2時限目の麻生さんの表情が、授業の後半、少し暗かった時間があったんだよね。特に、サプライズがあった後、楽器パフォーマンスあたりで、ちょっとつまらなさそうな顔をしている瞬間があって。麻生さんというのは、自分が真ん中で注目されていないと落ち込む、というか、ちょっと反省モードに入ってしまう人だから、楽器パフォーマンス中に、自分が一生懸命やったギターよりも、後ろで苦労していた吉田さんのトランペットが注目されてしまったことに反省しちゃってたのかもな、と思ったりもするんですけど。でもひょっとして、前日の書の授業と、さらに今回のサプライズで、「これが自分にとって最後の公開授業なんだ」という気持ちが前面に出てきてしまったのかも、と思うと、ちょっとこの先心配になってしまう。本当に、麻生さんにはずっと笑顔でいてほしいんです。卒業後も、ずっとね。

恐らくは、白Aさんのプロジェクションマッピングを意識したと思われるグッズ、バーチャルドアスコープは、麻生さんを2個、新谷さんを1個、吉田さんを1個ゲット。今年度は、バレンタインライブの夜の部と、3月30日の卒業式に参加予定。今までライブビューイングでしか参加できなかったライブに、ついに初参戦です。歌の考古学には用事があって参戦できないけど、この3人の笑顔を、3月末まで見守っていければと思います。