なんでこんなに中元日芽香?

ちょっと前の日記に、BABYMETALのSU-METALこと中元すず香さんつながりで、彼女のお姉さんで乃木坂46で活躍している中元日芽香さんの話をちょっと書きました。そのあと、日芽香さんが乃木坂を卒業する、という発表があり、それから妙に彼女のことが気になって、彼女がオリエンタルラジオとMCで共演している「らじらーサンデー」の昔の放送をYOU TUBEで聞いてみたり、「乃木坂工事中」の彼女のダイジェスト映像を見てみたり、という時間が日々長くなっている。これじゃあ、ただのキモいオッサンドルオタじゃないか。でも、握手会に行こう、なんてところまでは沼にハマってないぞ。そこまではハマってないが、どうにも気になってしょうがない。

なんでこんなに中元日芽香さんのことが気になるんだろう。歌の上手な妹と、勉強のできる姉の間に挟まれて、自分は何者なんだと問い続けていた子供時代の話。妹と一緒にオーディションを受けたアクターズスクール広島は、妹が合格して自分は不合格、負けず嫌いの性格で再挑戦してやっと合格を勝ち取った努力の人。乃木坂一期生の中でも図抜けてアイドルらしいアイドルとして、根強いコアなファンを持ちながら、今一つそのスケールを広げられずに、センターを取る機会に恵まれなかった不遇の人。持ち前の真面目さが仇になって、心を病んで、それでもステージに立ち続けた健気な人。

そういうストーリは全て、ファンの側から作られたフィクションなのかもしれないけど、でも、彼女が垣間見せる姿の端々から立ち上がってくるそういう健気で不遇な女性の姿に、なんだかひどく心が揺れてしまう。自分らしく生きようとあがいて、必死に努力を重ねて、理想の姿にもう少しで手の届くところまでたどりついたのに、そのもう少しの距離が埋められないままに、表舞台から去っていく姿。志半ばで挫折した、惨めな敗残者のはずなのに、その姿にどこか凛々しさや清々しさまで感じるのは、彼女がまさに燃え尽きた、やり切った、と周りのみんなが納得しているから。一言の言い訳もせず、3年半も通院したという自分の病名も明かさず、最後まで笑顔を絶やさないプロ根性には、もうただひたすら頭が下がる。

努力するのに、運に恵まれない、というのも、彼女に共感するポイントで、引退を発表した同じ日に、でんぱ組の最上もがさんの引退が発表されて、日芽香さんの引退ニュースの扱いが小さくなってしまった、というのも彼女らしい。引退までのカウントダウンが始まった「らじらーサンデー」に、盟友の生駒里奈さんが参加する、という大事な回が、日本シリーズの放送延長でたった十七分しか放送されない、なんてのも、まさに中元日芽香。とにかくそういう負のカードを引いてしまう運命を持っている感じが、心にきゅんきゅん刺さってくる。

中元日芽香、という人が気になって仕方ないのは、きっと彼女がまとっているそういう物語の普遍性のせいなんだろうと思う。実力もある、人一倍努力もしている。それなのに、環境が、自分の心や身体が、そしてどうしようもない「運」というヤツが、理想に向かう道を固く閉ざしてしまう。そんな人って、あるいは自分がそういう人間だ、と思っている人って、私も含めて、世の中にはいっぱいいるよね。もちろん、ほとんどの人が言う、運が悪かった、とか、もう少し身体が健康だったら、とか言うのは、後付けの言い訳なのかもしれないけどさ。でも、誰もがそんな自分をどこかで美化したいと思っている。そして、近づく引退を前にアンダーライブでも決して笑顔を絶やさなかった日芽香さんの姿は、そういう「挫折した自分」を美化したい人にとって、一つの理想の姿に見えてしまうのかもしれない。

卒業に向けて、いくつもの伝説が生まれている中元日芽香劇場が、また一つ大きな伝説を生んだのが、先週日曜日のらじらーサンデー。生駒さんが来る、そして重大発表がある、というネット情報に、長い長い日本シリーズの中継が終わるのを待ち続けたリスナーの前に、たった十七分放送されたその中で、オリエンタルラジオの中田さんが日芽香さんのためにあて書きしたRadio Fishの新曲が発表される。Featuring中元日芽香、として、Radio Fishと中元日芽香さんが初めてコラボした「Last Number」というその曲は、まっすぐ直球にオリラジの二人と日芽香さんの関係を歌いこんでいて、聞いていてちょっと呆然としてしまう。こんなに人間関係が希薄になった今どきの日本で、アイドルとお笑い芸人というショウビジネスの最先端にある人たちが、こんなに生々しい人間関係や、人と人との温かい交感を真っ直ぐに歌おうとするんだ、という驚きと、この子のために何かできないか、と周囲が必死に考えてしまう、中元日芽香という人のカリスマについて。

考えてみれば、去り際で伝説になるアイドルって多いよね。山口百恵さんにせよ、古くは原節子さんにせよ、去り際の見事さで伝説になった。でも、過去、功成り遂げた人がさっと身を引く美しさで伝説になった例は多いだろうけど、最後までアイドルらしいアイドルであろうともがく姿の健気さと、それを見守る周りの人たちの温かさで伝説になりつつある中元日芽香さん、と言う人は、やっぱり特別な人なんだなぁ、と本当に思う。世の中の夢破れた人々の心を癒す守護天使。まさにアイドル。

BABYMETALにハマりまくった当初に、好きが高じて一気に書き上げてしまった、BABYMETALの三人をモデルにしたライトノベルがあって、その中でも、日芽香さんをイメージしたキャラが登場します。書いた時には、まさか日芽香さんの引退、なんてことになるとは思いもしないで書いてたんだけど、どこかで予感があったのか、このキャラもはっきり「守護天使」として登場します。今読み返すとファンの方に怒られそうな稚拙なお話なんだけど、お暇があったら読み飛ばしてみてください。

中元日芽香さんがいつまでも、どこかでファンの人たちの心の癒しになってくれることを祈りつつ、卒業までのカウントダウン、静かに見守りたいと思います。先日訪れた広島の街は、日芽香さんが普通のOLさんになってぶらぶら歩いている姿が似合う、清々しい街だったもんなぁ。