九州、といえば、水道メータの蓋

熊本を中心に、九州全体が揺らいでいて、被災地の皆さんには本当にご苦労が絶えないと思います。こういう極限状態になると、見たくなかった人の醜さが生々しく直接ぶつかってきてしんどいことも多いと思いますけど、こういう時にしか見られない人の優しさもあるかもしれない。そういうものと毎日直接相対しているのだろう現地の方々に、外から見ている私からかけられる言葉なんか本当に少なくて、早く普通の生活が戻ってきますように、と、ただ祈るしかないのですが。

熊本が被災したことで全国のトヨタの工場が操業停止に追い込まれる、とか、今の日本って、色んな場所が高度化したサプライチェーンでつながっていて、地理的な距離を飛び越えて、色んなものが我々の生活を支えてくれていたりする。インターネットというツールと、発達した国内物流網のおかげで、個人レベルでそういう距離を越えたつながりを作ることも容易になった。実は最近、個人的にそういうことを実感する機会があって、私の中で、九州、といえば、水道メータの蓋なんです。何のことやら、と思われるだろうけど、以下に詳細を。

一戸建ての我が家の玄関先はそのまま駐車場になっていて、その出口のところに、水道メーターが設置されています。そのメーターボックスの蓋が、先日真っ二つに割れてしまった。長年、車の車輪の通り道になっていたので、プラスチック樹脂製の蓋が、荷重に耐えきれなくなっちゃったんですね。


こんな感じです。

ご覧のとおり、蓋には「ち」というマークがあります。これは調布市のマークなので、調布市水道局に電話をして、修理してもらえないか聞いてみた。話がややこしくなるので端折りますが、結論としては、

「一戸建ての敷地内に設置された水道メーターボックスは、その家の所有者の私有物になるので、壊れた場合の修理責任も、家の所有者の責任となります」

ということで、水道局では修理できません、とのこと。敷地内にある電気メーターとかガスメータとかは業者が管理してるじゃねーか、と一瞬思ったんだけど、壊れたのは水道メータそのものじゃなくて、水道メータを格納しているボックスなんだね。それは所有者のものなんで、壊れたらあなたが直してください、と。なるほど、ある意味、筋は通っている気がする。とはいえ、筋が通っているからといって、納得感があるか、というとそれは別の話。正論で万人が満足するとは限らない。電話応対をしてくれた水道局の人も、申し訳なさそうに、近辺の水道工事業者さんをいくつか紹介してくれる。さて、仕方ない、では自分で直しますかね、と、水道工事業者さんに電話してみたらば、

「水道メーターボックス自体、小さな町工場みたいなところで作っているので、10年以上前に作ったものは、もう製造もしていないし、修理とかも引き受けてないんですよね」
「ましてや、蓋だけのばら売り、交換、なんてことは無理です。水道メータボックス全体の取り換えになります。現地調査をして、工事見積もりとらないといけませんね」

と、どんどん話が大きくなってくる。いや、ボックス本体は別にどうにかなってるわけじゃないんで、蓋だけ交換すればいいんだよー、と思うけど、確かに水道メータボックスみたいな小さなもの、10年以上も修理保守してくれるメーカーさんなんかないよね、と、ある意味、筋は通っている気になる。とはいえ、筋が通っているからといって納得感があるとは限らないアゲイン。

水道メータボックスそのものの交換、となると、工賃もいれて7〜8万円くらいかかる、という情報(未確認ですが)もあり、どうしたもんだろうか、と悩む。納得感のなさも手伝って、なんだか意地でも水道工事業者さんの言うとおりにしたくない、なんていう天邪鬼な思いも働く。水道工事業者さんは悪くないんだよ。わかってるよ。わかってるけどね、と、ネットで、水道メータボックスの蓋、というキーワードで検索してみると、蓋だけばら売りしているメーカーさんがいくつか見つかる。お、と思ったけど、我が家のメータボックスにぴったり合うサイズがなかなか見つからない。発注してサイズ違いでした、といっても、返品も面倒臭そうだしなぁ。

と色々悩んでいる暇があったら、今真っ二つに割れている蓋をなんとかしないと、車を出すにも難儀する。ということで、まずは我が家にあった合板の余りを使って、蓋を手作りすることにしました。少し大きめに木の板をノコギリで切り出し、蓋のサイズにぴったりはまるようにヤスリで成型、引き開けるための取っ手部分を切り取って、防水のために全体にビニールテープを巻き、銀色のペンキをスプレーして出来上がり。


こんな感じです。

意外といい感じに出来上がったじゃん、とかなり自己満足。製作時間は2〜3時間くらいだったかな。慣れない大工作業で、翌日から数日間全身筋肉痛になりました。

やるなオレ、と、出来上がった当初は自己満足したんですが、写真でもお分かりの通り、巻きつけたビニールテープの一部が数日後には剥がれはじめ、素人作業の限界が早くも露呈する。雨にさらされる場所ですから、これだと早晩合板にまで水がしみ込んで、木も腐ってくる。毎日車が通る場所ですから安全性も不安。仕方ない、これはあくまで一時しのぎ、なんとか恒久解を見つけないと、と、再びネットサーフィンしていたら、「オーダメイドで水道メータボックスの蓋を作りますよ」というサイトを見つけました。鉄板コンビニ、というサイト。

↓こちらです。
http://www.teppan.co.jp/

これいいじゃん。と思って早速見積もり依頼を出してみる。1万円ちょっとで作ってくれるとのこと。実際の蓋のサイズを計測して連絡したり、簡単な設計図面を送ってくれたり、と何度かメールをやりとりして、最終的に佐川急便で送られてきました。新しい蓋。


鉄板!!

いい感じじゃん、と大満足。もちろん、耐久性とか色んな要素考えるなら、メーターボックスごと取り換えるのがベストなのは間違いないと思いますし、工賃7〜8万円、というのも確認したわけじゃないので、自分の選択が最高、と自慢する気はあまりありません。もし同じ悩みをお持ちの方がいらっしゃったら、こういう選択肢もあるよ、程度のご紹介。

随分回りくどい話になっちゃいましたが、ここで話が冒頭に戻ります。この、鉄板コンビニ、という会社があるのが、九州なんですね。福岡の会社。さすが、八幡製鉄所以来の鉄の街なんだなー、と思うんですが、それに加えて、ネットというツールと、佐川急便、という「翌日配達」が可能な日本の優秀な物流網があれば、東京の調布と福岡の会社がこんなに簡単につながるんだなー、ということにも感動。20年前には想像もできないB2C型のビジネスモデル。

そういえば、前回やったサロンコンサートのチラシ印刷を発注した、プリントネット、という印刷会社も、鹿児島の会社だったんです。ネットって本当に簡単に地理的距離を飛び越えるんですね。逆に言うと、それを実現している物流網が寸断されてしまった熊本が、今どれだけ厳しい状況にあるか、ということも考えないといけないな、と。東日本震災の時も、物流網が機能しなくなったことが復興や支援の大きな障害になってましたが、道路が寸断されてしまった熊本や大分も大変な状況なんだろうな、と思う。そういう中で、JR九州の在来線が一部復旧した、とか、熊本空港が復活した、なんて聞くと、それによって人の行き来が可能になることよりも、物流網が復活することの意味の方が大きいのかも、と思ったりします。陸の道、空の道、海の道が早く完全復旧すれば、スーパーの店頭から消えた商品も戻ってくる。復興物資も流れ始める。物流網の復活、それを支えるインフラの完全復旧を、まずは祈ろう。震度7地震の5日後には在来線を復活させられる(信じられない・・・)日本の世界一のインフラ回復力と、それに関わっている全ての人たちの底力を信じて。

https://www.youtube.com/watch?v=UNbJzCFgjnU
こちらは、ネットで話題になっている九州新幹線開通CM。今見返すと本当に泣けてくる。くまモン頑張れ。