台湾人って人懐っこいんだよね〜

台南で地震があって、今こそ恩返しを、とか日本で盛り上がってますね。一方で、現地に暮らしている人が、「欠陥住宅だったあのマンションが倒壊した以外、現地の被害はほとんどない」「被害の大きいあのビルばっかりクローズアップされると、観光地としての台南のイメージが下がる」「だから、本当に恩返しを考えるなら、みなさん、台湾の京都、とも言われる台南に観光に来てください!」とおっしゃっているサイトがシェアされてきて、これは本当にその通りだなーと思う。東日本震災の時にも、被災地にとっての一番の支援は、現地に行って現地の産品を買ってあげることだ、という話がありましたしね。東北の被災地に必要なのは、寂れたシャッター通りを復活させることじゃなくて、これを機会に新しい産業を興すことだ、というのは、この日記にも前から書いていること。途上国支援のために無償の寄付金をあげるよりも、途上国の産業を振興させる方がよっぽど価値ある支援、というのと同じ文脈で、傷ついた地方を立て直すためには、流出する人口をつなぎとめるビジネスを現地にしっかり根付かせる必要がある。

てなわけで、とりあえず、お世話になった大船渡の酔仙酒造のサイトを貼り付けてみる〜ネット通販もやってるよ〜
http://suisenshuzo.jp/

えっと、そういう話をしたいわけじゃなくて、上記の記事をアップされていた方が、「自分が台湾に住むことになったのは、米国留学中に知り合った台湾人の人懐っこさに惹かれたから」みたいなことを書いてらっしゃって、すごく共感した話をしようと思ったのだった。

私も国際通信の仕事に関わってきたので、色んな国の人と話をする機会をいただきました。とはいえ、ビジネスで付き合っていると、個人的な付き合いとは別の利害関係が絡むから、あまり踏み込んだ、共感とか友情、みたいなフェーズには行きつかないことが多いんですが、台湾の人ってのは違ったなー、と思う。国際会議のタスクフォースで一緒になって、半年ほど一緒に仕事をした台湾人がいて、彼が日本に赴任することになってしばらく付き合いがあったんですが、とにかく人懐っこい。ビジネスでの付き合いでも「他ならぬあなたのためなら」みたいなことを遠慮なく言ってくるんだけど、それがそんなに押しつけがましくもなく、ビジネスライクな臭いもしない。同じように人懐っこく付き合ってきてくれた北京人の方がいらっしゃったんだけど、不思議とこの人からはビジネスの匂いがしたんだよね。個人の問題なのかもしれない、とも思うんだけど、その台湾人の友人を通して知り合った台湾の方たちはみんな、本当に人懐っこくておおらかで、一緒に飲みに行って楽しい人たちばっかりだった。

中国と日本の関係と、台湾と日本の関係を対比したがるネトウヨ的な議論をするつもりはあまりないんです。むしろ、台湾人のこの人懐っこさ、おおらかさ、良くも悪くもビジネスとパーソナルが一体化している感覚っていうのは、東南アジアの人たちにもちょっと共通している気がする、という感想の方が大きい。タイの人とか、ベトナムの人とかにも、同じような人懐っこさを感じることがありました。アジア、と一括りにするけれど、その中には、東アジア的なもの、東南アジア的なもの、南アジア的なもの、というのがくっきり分かれている気がしていて、そういう3つの精神世界の中でいえば、台湾はかなり東南アジア寄りなんじゃないかな、と思います。東アジア的なものの盟主は当然、中国本土で、南アジア的なものの盟主は、もちろん、インド。

東アジア的なものと東南アジア的なもの、という対立軸を設定してみると、中国本土と台湾の関係だけじゃなくて、日本本土と沖縄の関係というのも、この対立軸がその底流にあるのかもしれない、なんて思ったりします。日本本土が東アジア側に文化的・精神的軸足を置いているのは否定できないと思うし、沖縄の精神世界には濃厚に東南アジアの香りがする。一方で、日本本土自体も、南から海を渡ってきた海洋民族と大陸から渡来した農耕民族の混合なので、純粋に東アジア的なものでできているわけではない。そういう意味では、中国本土と日本、韓国と日本、という関係も、東アジア的なものと東南アジア的なものの対立軸から説明できる部分もあるのかもしれない、と思ったり。

個人的には、日本人はもっと東南アジア的であるべきなんじゃないかな、と思いますけどね。楽観主義とおおらかさ、コミュニケーション能力の高さ。私の知っている台湾人の方々は、とにかく一緒にいて楽しい人たちで、今回の地震みたいなことがあると、あの人たちは元気かな、大丈夫かな、と真っ先に思います。日本人が海外でどう思われているか、なんてことをネット上で一生懸命気にするより、日本人と一緒にいると楽しい、と思ってもらえるような、外向的なコミュニケーション力をまず身に着けるべきじゃないかな、と思う。内弁慶で対人恐怖症の日本人には、なかなか難しいのだろうけど。

民族的な個性を活かす、という意味では、東南アジア的なもの、南アジア的なもの、東アジア的なもの、その3つが混在している多民族国家のマレーシア(マレー人とインド人と中国人)が、東南アジアの盟主的な存在になり得ている、というのは、一つのロールモデルなのかもしれない、と思います。マレーシアで聞いた話ですけど、「マレー人は美男美女で人懐っこくてコミュニケーション能力が高いから、秘書や営業などの外向的な仕事が向いていて、インド人は理系の仕事が抜群で、中国人は事務能力が高いから管理業務やらせたら最高」なんて話がありました。マレーシアが理想形というつもりもなくて、あの国なりの問題もいっぱい抱えているんだけど、それぞれの民族の持っている個性や文化を活かせる、というのは多民族国家の大きな強みの一つだと思う。これから日本が移民を受け入れていくことになったら、そういうことも真剣に考えていかないといけないんでしょうね。差別、ということじゃなくて、国が持っている文化や精神を尊重して活かす場所、というのが必ずあるはずなので。