喉ケアグッズ

12月20日の大きなオペラ公演に向けて、色んな準備が佳境に入っています。そして、この季節の本番となると欠かせないのが喉の管理。11月後半くらいから、扁桃腺を腫らしたり、咳が止まらなくなったり、色々トラブルに見舞われる。女性と比べて男性は痛みに弱くて、ちょっとした痛みや不調でもすぐ泣き言を言う、というのはよく言われる話ですが、私もご多聞に漏れず、ちょっとした喉の不調や違和感が気になって仕方ない。というわけで、練習会場の隅に怪しげな喉ケアグッズを並べた「喉ケアコーナー」を設営して、そこに居座って色んなもの飲んだり吸い込んだり塗ったり舐めたりしながら空き時間を過ごしています。塗り薬系はかなり臭うから、「最近Singさんの周辺が膏薬臭い」と共演者に顔をしかめられる。大変申し訳ございません。今日はそんな、私の喉ケアグッズをご紹介。
 
その1:杢太郎


最近、私の喉ケアグッズに加入した新顔です。ネットで購入したペットボトル加湿器。持ち運びが大変便利、ということで、このところの練習には必ず持参。乾燥しがちな稽古場の片隅で、この子が鼻から吹き出す蒸気の近くにいると、なんとなく安心する。どれくらい効果があるか、という話よりも、この「なんとなく安心する」という気分的なものが、この手のケアグッズの共通項ですよね。最近は就寝前に、枕元で数時間稼働させて、寝室の加湿に使っています。超音波で蒸気を発生させるので、若干音がうるさいのが難点。ちなみに名前は「杢太郎(もくたろう)」と言います(娘と一緒に命名しました)。
 
その2:ヴィックスドロップ


もはや説明の必要すらない、喉ケアグッズの王道ですよね。色んな味が出ているけど、やっぱりこの緑の「レギュラー」が一番効く「気がする」。以前誰かが、「大地真央さんの付き人さんは、本番中の大事なお仕事の一つとして、このヴィックスドロップを木づちでコツコツ小さく砕いているそうな」と教えてくれて、それ以来、私も事前に小さく砕いて使用してます。出ずっぱりの舞台で、舞台袖に引っ込む時間が数分しかない、といった時に、小さく砕いておくと便利。以前、あまりに喉の調子がひどくて、一曲歌いきれる自信が全くなかった時には、舞台衣装のポケットにかけらを忍ばせて、舞台上でお客様に背中を向ける演技をしながら、こっそり口に入れてガリガリ噛んでたこともありました。
 
その3:ヴィックスヴェポラップ


これまた王道、ヴィックスシリーズの塗り薬。私はもともと胃弱で、風邪薬で胃を壊すことがたまにあったので、飲まずに使える風邪薬、というコンセプトに飛びついて、長年愛用しています。寝る前に、これを喉に塗って、タオルを喉に巻いて、マスクをして寝る、というのが最近の就寝状況。喉の炎症がひどいときには、練習中にも喉にこれを塗ったりします。難点は匂い。私の周りが膏薬臭くなる一因がこれ。
 
その4:塗るサロンパス


出てくるものがどんどん怪しくなってきます。アメリカで購入した塗るサロンパス。肩こりが原因で、首周りのリンパ腺が腫れて、その炎症が喉にまで回ってしまった経験があって以来、喉の炎症に対する消炎剤としても使っています。塗ると数分間、塗った周囲がヒリヒリ痛んだりすることがあって、若干劇薬っぽい感じ。そういう感覚もまた、「効くんじゃないか」という気分をあおります。少なくとも肩こりなどには効いているはず・・・だと思うんだけど、果たしてどんなもんなんだか。海外で購入した、というのも「効いている」気分にはプラスに働いている気がします。こうなってくるとほとんどオマジナイの世界ですね。これまたかなり凄まじい匂いがするので、練習中の苦情の種になる。
 
その5:白花油


さらにオマジナイっぽくなってきました。以前香港に行った時、現地で購入してやみつきになり、ネットで購入し続けている白花油。これまた海外由来、というところがオマジナイ度の大事な要素。鼻から吸引すると鼻の奥がすっと抜ける感じがあって気持ちイイ。医療上の効用というより、この一瞬の気持ち良さで愛用。これまた大変特徴的な匂いがします。以前は、手のひらに少量を垂らして、体温で蒸発する蒸気を吸い込んでいたのですけど、手のひらから匂いが取れなくなってさすがに困り、さらに怪しい手段へ・・・
 
その6:ということで、白花油吸引用に・・・


使わなくなった瓶の中にティッシュを詰めて、そこに白花油を垂らして、瓶から蒸気を吸引するようにしました。稽古場の片隅でこの瓶の口を鼻にあてて吸い込んでは、陶酔の表情を浮かべているワタシを見て、周囲が怯えております。はい、このあたりになってくると、周りへの受け狙いがほぼ8割。
 
有名なオペラ歌手も喉のケアにはすごく神経質で、往年のデル・モナコは、本番前ほとんど筆談だった、とか、フィッシャー・ディスカーウは、宿泊ホテルのエアコンの送風口をバスタオルで全部塞いでた、とか、色んな逸話を聞きます。私ごときの神経質な喉ケアは、そんな一流の歌い手と並べるまでもないし、むしろ、かなりの部分が、「今日の僕の歌が下手なのは、のどの調子が悪いからなんだよね〜。本当はもっと上手に歌えるんだけどさ〜。いや〜、今日は調子悪いわ〜」という周囲への言い訳になっている感がある。不快感を軽減したい、というのはウソじゃないんだけど、そういう周囲への言い訳アピールにならないように、ケアした分、パフォーマンスもしっかり出さないと。女房あたりからは「体調管理能力、というのもパフォーマーの大事な能力なんだから、自分が能力がない、というのをアピールしてどうするんだ」とか、「いかに体調不良であろうが、そういうことをおくびにも出さず、平然と一定以上のクオリティのパフォーマンスを出し続けるのが、真のパフォーマーだろう」などと、正論と軽蔑のまなざしが投げかけられ続けております。はい、おっしゃる通り、と思いながらもオマジナイに走ってしまう弱いワタクシ。体調管理含めてがんばります。12月20日、パルテノン多摩にて皆様をお待ちしております。