青空文庫、侮りがたし。

まだiPadMiniを購入する前、自宅の本棚をぼんやり眺めていて、何の気なしに、ドストエフスキーの「罪と罰」を手に取りました。中学時代に一度通読して、それっきりになってたなー、と思い、そういえばどんな小説だっけ、と頭から読み始めてみて、そのままのめりこみ、意外なことに結構一気に読破。もっとつっかえつっかえ読むと思ってたんだけどね。偏執狂的な描写が中学生頃には結構しんどくて、かなり読み飛ばした記憶があるけど、今読むと、そのリアリティに圧倒される。しかし、トルストイの「光あるうちに光の中を進め」を読んだ時にも思ったけど、この手のピカレスク・ロマンってのは、悪党の方が善人よりも魅力的に見えちゃうから困るよね。現代の目から見れば、完全に「ヘタレ野郎」のラスコリーニコフよりも、意外と憎めない悪党のスヴィドリガイロフの方が全然魅力的に見えるし、その破滅的な生き方の方がかっこよく見える。ラスコリーニコフの選民思想に対して共感してしまうアホタレもいるだろうなー。オレの方が絶対うまくやってやる、なんて思ったりしてさ。そう考えると、ドストエフスキー自身が、「罪と罰」の中で描ききれなかった悪に対する善の優位性をさらに完成に近づけるために書いた、と言われる「カラマーゾフの兄弟」も読みたくなってくる。

で、新刊本を追いかけるのもいいけど、こういう重量級の古典をしっかり読むのもいいなぁ、と思ったところで、iPadMiniの登場ですよ。iPadMiniを買ってはまっています、という話を前の日記に書いたんですが、この手のタブレット端末を買えば、やはりデジタル本を読みたくなる。ということで、評判になっている青空文庫をダウンロード。ご存じのとおり、著作権が切れた古典を中心としたラインアップですから、おのずと選択は、「有名だけど読んだことのない古典作品」ということになります。ちょうど古典に対する興味が高まっていた時なので、ちょうどいいじゃん、と、有島武郎の「生まれいずる悩み」をダウンロードして読んでみる。それこそ、日本文学史で作品のタイトルを聞いて、白樺派を代表する作家の代表作、なんて言われただけで、内容については全然知らなかった本。思ったより全然短くて、これも一気に読了。これまた予想以上に面白く、何よりその日本語のパワーに感動する。同じ時期に読んでいたのが、伊坂幸太郎さんの「SOSの猿」で、これはこれで十分面白い小説(伊坂さんの作品の中ではちょっと小粒な感じもするが)なんだけど、一つ一つの文章の持つきらめきとか密度が全然違う気がする。スカスカの養殖ものじゃなくて、荒波にもまれた天然ものの滋味、というか。

てなわけで、青空文庫で、次々と古典作品を読み進めています。とりあえずは以前から読みたかった岡本綺堂の「半七捕物帳」が全編収録されているのに気付いて狂喜乱舞、片っ端からダウンロードして、読み進めております。この江戸の長屋の生活臭が匂い立つような雰囲気と怪奇趣味がたまらない。