合唱三昧の週末で、なんとなく郷土愛を感じたりして

土曜日、合唱団麗鳴の演奏会が終了。府中の森ウィーンホールがほぼ満席に見えるお客様に集まっていただくことができて、本当に感謝です。個人的にも、人が声を合わせて一つの物語を作っていく「合唱」という表現の楽しさを、改めて感じた舞台になりました。一人で作っていくのではないからこそ、出せる表現のバラエティもあるし、指揮者からの要求に対して自ら気づくものもある。何より麗鳴の人たちはみんないい声なので、そういういい声の中から学べるものがたくさんあります。そうやって、自分の中の引き出しを、またいくつか増やすことができたような気がしています。

ガレリア座のような場所で長くやっていると、身内同士でやっていく中で、どうしても「馴れ」が出てきてしまう。それはお互いの信頼感にも通じるのだけど、逆に言えば、自分の引き出しを制限する限界にもなってしまいます。もちろん、アマチュアでオペラをやる、ということ自体、大変な挑戦ではあるのだけど、そこを越えていくための道筋やメソッドが、どうしても固定化してきてしまう。

昔から女房とよく話すのだけど、「同じ山でも、登る道はいろいろなんだよね」と。同じ山であっても、そこを登るための道というのは色々あって、断崖絶壁だけど短い道とか、楽だけど長くかかる道とか、田園風景が楽しめる道とか、森を切り開くような道とか、色んな道がある。上るための道具だって色々。徒歩で登るのか、自転車で行くのか、車で行くのか、ちゃんとした登山道具を持っていくのか、ハイキング姿で行くのか。でも、例えば同じ自転車仲間の間だけで、山登りを語っていたら、どんな山でも、自転車で登る方法しか語れないし、自転車で登れない山は「登れないね」とあきらめるしかなくなってしまう。

ガレリア座以外の場所で歌いたい、と思ったのは、そういう色んな「山の登り方」を知っておきたい、と思ったから。そうすることで、色んな山に登るための自分なりの道具や道筋を増やしたいと思ったから。やってみれば、「やっぱり自転車がいいよね」と思うことだってあったりするんですけど、でも、自転車以外の山登りの方法も、オペラの舞台で結構役に立つかも、なんて思ったりしました。

演奏会の後は、東府中の近くの沖縄料理屋さんを貸し切っての打ち上げ。色々お話をしていて、実は男性団員の中で、(指揮者の中館先生も含めて)私が最年長であることが判明してしまってショックを受ける。2周り下のヘビ年のソプラノさんがいる団体で、一緒になってNコンの中学校課題曲を歌っているってのは、相当しんどいっす。でもまだまだ老体に鞭打って頑張りたいと思います。ご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。
 
日曜日、娘の中学校が、同じく府中の森ドリームホールで開催されているNHK音楽コンクールに出演する、というので、家族で応援に出かける。聞いたのは午前の部の数校だけだったのだけど、ここでも、歌、という表現の面白さを感じました。中学校合唱というのは、とにかく指導者の力と、その学校や地域の合唱に対する熱意が反映するものだ、と思うけど、コンクールで同じ課題曲を歌っているのを聞くと、余計に学校ごとのカラーがはっきり見えて面白いよね。指導者の先生が、そういう子音の立て方や日本語の語り口を徹底しているんだろうなぁ、なんて思ったり、人数が少ないながらもしっかりまとめ上げている地元の中学校の演奏に感心したり。娘の学校は、かなり技巧的に難しい曲を、端正に清潔にまとめ上げていて、センスのいい演奏だな、と思いました。ブロック予選は金賞を取ったそうで、このあと東京大会に進むそうです。本番前の学校が出演待ちで待機しているロビーでは、緊張のあまり泣き出している生徒さんたちもいて、暑い夏だなぁ、と思ったのことよ。

土曜日・日曜日、と合唱三昧だったんですけど、調布や府中あたりのよさっていうのは、こういう微妙な地域色なんだな、と思いました。麗鳴だって、府中で育ち、府中で頑張っている合唱団、というのが団のアイデンティティで、だからこそ定期演奏会はウィーンホールにこだわっているし、そういうこだわりがあるから、常連さんのように来てくれるお客様がいるんだと思います。Nコンで地元の中学校が出ていれば、やっぱり応援したくなる。音楽が持っている、地域を結びつける力、というものにも触れた気がした週末でした。やっぱり、調布・府中ってのはいいやね。