まだまだ新しい発見があります。

帰国日程もほぼ決まってきました。10月の頭に一旦私だけで帰国し、10月の最終週に、再び渡米、家族を伴って一旦帰任、という段取り。そろそろ店じまい、ということで、職場のいろんな書類を整理したり、荷物をまとめたり、とバタバタ過ごしています。

お世話になったNY混声合唱団の皆様にも送別会を開いていただきました。1年半という短い時間でしたが、本当にお世話になりました。ありがとうございました。11月の定期演奏会の成功を心からお祈りしています。

そうやって、米国生活の締めくくりを進めていく中でも、へぇ、と思う新しい発見はあるもの。今日はそんな新しい不思議発見の話を、思いつくままに並べてみます。
 
・クレジットカードって、やっぱ怖いよ

先日、しばらく米国に残ることになる女房に、銀行口座の説明をしていました。こちらの銀行口座は、いわゆるチェック(小切手)決済のできる当座預金(Checking Account)と、貯金用の貯蓄預金(Saving Account)、それに、クレジットカード口座の3種類があります。日本で個人が開設する口座は、こちらで言えばSaving Acountに相当しますが、クレジットカードの自動引き落とし、というのはこちらでは存在しません。クレジットカード口座への支払いは、自分の当座預金貯蓄預金から、その都度お金をTransferしないといけない仕組み。ところが、このクレジットカード口座がクセモノ。

例えば、私がある月、1000ドルの買い物をクレジットカードでやったとします。でも、翌月のクレジットカードの請求書には、1000ドルの請求金額は掲載されません。「あなたは1000ドルの買い物をしました。でも、あなたの当座預金貯蓄預金の残高や、過去のクレジットカードへの支払い実績から考えると、あなたは結構信用できる人だと思います。なので、1000ドルのうち、150ドルだけ払っていただければ結構です。850ドルは、一時的に銀行からの貸付、として融通してあげますよ」という請求書が来ます。Minimum Payment $150、という請求書が来る。

これで安心して150ドルだけTransferしておくと、翌月も同じように、2000ドル使ったけど、まぁ300ドル払ってくれればいいよ、という請求書が来る。そうすると、Minimum Paymentは100ドルだけど、たまった利用金額の合計は9000ドル、なんてことになる。この9000ドルは、決して支払わなくていい金額ではなくて、銀行から一時的に借りているお金、要するに借金なんです。クレジットカード口座は、すなわち「借金をためる口座」として機能している。

この借金の上限額、というのが個人の信用度によってきまっていて、信用度の高い人ほど多額の借金ができる。米国ではこのクレジットカードの借金残高が多いほど信用度の高い人と思われる、みたいな風土があって、とにかくみんな借金が当たり前、という状態になっている。気が付かないうちにクレジットカードの借金残高がどんどん増えていて、支払い不能になっちゃう、ということになる。そりゃぁ、サブプライム問題だって起きるよねぇ。
 
・25セント硬貨っていうのはいろんな柄がある

25セント硬貨、いわゆる「クォータ」という硬貨は、自動販売機その他でも最も活躍する、日本でいえば100円玉のような存在。このクォータにいろんな柄がある、というのも、こちらで生活して初めて知りました。通常は、ワシントンの横顔と、米国の象徴である白頭鷲が表裏セットになっているのですが、ときどき、全米各州のシンボルをあしらった柄のクォータが混じっている。今私の財布の中にも、ヤシの木とスペースシャトルが刻まれているフロリダ州の柄と、幌馬車が刻まれているネブラスカ州の柄のクォータが入っています。

この各州柄のクォータ、1999年から2008年の10年間にわたり、毎年5州ずつの柄を製造していった名残なのだそうな。このクォータを50州分全部集めるコレクターというのが、全世界に1億人以上いるそうです。イベント上手な国らしい話だね。ところで2000円札ってのはどこに行ったのだろう。
 
・マンハッタンには独身女性が多いです

マンハッタンは、家族で住むところ、というよりも、むしろ働く場所、ということで、働くビジネスマン、キャリアウーマンが集います。職場では男女平等でも、家庭ではやはり専業主婦率の高い米国では、自然と、マンハッタンの独身女性率が高くなる。人によって、独身男性の5倍の独身女性がいる、とか、いや、9倍だ、とか、いろんな説を聞いたことがあります。その上、男性同士のカップルも多いから、独身男性をめぐる競争率がかなり高くなっているのが現状なんだそうな。
 
・色んな割引は自分で発掘する

最近のNYでの大きな話題の一つが、NJとマンハッタンを結ぶ橋やトンネルの通行料値上げ。我が家の近所のジョージワシントン橋も、NJからマンハッタンに入る際に8ドルだった通行料が、つい最近、9ドル50セントに値上がり。NJからNYに通勤する人はみなブースカ言ってます。日本の高速道路料金も高いけど、結構いい勝負だよね。

ところが、そういう通行料が安くなる裏ワザがある。3人とか4人とか、複数の人で1台の車を相乗りすると、通行量削減に協力した、とみなされて、通行料が2〜3ドルにまで割り引かれるプログラムがあるそうです。ところがこのプログラムを利用するための登録プロセスや申込書を探すのがすごく大変。関係する会社のウェブサイトの端っこのリンクをひたすらたどっていき、さらにそこからとった申し込み書の書き方を別のページからたどり、さらに別のサイトから別の証明書を取って・・・みたいな作業を延々繰り返した挙句に、やっと申請書類がそろって、そこから3週間、みたいな話らしい。

先日マンハッタンからNJに戻るとき、NYMCの団員さんの車に相乗りしたら、その方が、駐車料金の割引クーポンを持っていた。どうやって手に入れたんですか、と聞くと、そういうクーポンを発行しているウェブサイトがあって、事前に時間予約していくと30%くらい割引になるのだそうです。知らなかったぁ。

色んな便益が得られるそういうプログラムはいろいろあるらしいのだけど、共通しているのは、利益を得るためにはそれなりの努力が必要、ということ。日本のお役所なんか、お役所仕事、なんて揶揄されますけど、そういう便益提供の窓口を誰にでも開く公平さと、定型化された仕事の効率の良さは世界一だと思います(融通はきかないけど)。こちらではどのお役所仕事も押しなべて、個人のそれなりの準備と努力を要求するし、それができない人は玄関までもたどり着けない。

先日、911テロの遺族の方に、米国から大量の英文書類が送られてきて、読み通すのにあまりに苦労が多く、結局各種の便益を受けられない、という話を新聞で読みました。英語圏以外の人だけでなく、英語圏の人でも、それだけの書類を読みこなすのは大変で、ポイントをかいつまんで整理してくれる弁護士さんという職業が大繁盛する背景にもなっています。そういう知力、あるいは弁護士を雇う財力のある人にだけ、色んな門戸が開かれる。自分を守るのは自分だけ。格差社会アメリカの一つの姿です。