日本って愛されてるよ

こっちで結構目のつくのが、いわゆる「Tatoo」ってやつです。首筋とか足首なんかに、小さな飾りみたいなタトゥーを入れている人はすごく多いし、人によっては二の腕全体に派手な模様を入れている。それ自体芸術のような立派なものもあるし、ドクロマークみたいなロックっぽいものもある。本当に、ごくごく普通の人が普通のファッション感覚でタトゥーを入れています。でもこれって、消えないんだよなぁ。ドクロマーク肩にしょって60歳70歳まで生きていくってのはいかがなものなのだろうか。

そういう中で結構目につくのが、漢字です。結構けったいなものがあったりしますけど。まぁ、「愛」とか入れているのは分かる気もするんだが、先日私が見たのは、手首のところに、「子命」と入れていたおじさん。気持ちはわかるけどね。漢字っていうのはこちらの人たちにはすごく人気で、Tシャツの柄にもなっていたりする。「只管打座」なんて書いたTシャツを着たきれいなお姉さんがリゾートを闊歩してたりする。ううむ。

カードのサインに、こちらの人にはなかなか真似できないから、ということで、自分の名前を漢字で書く日本人が多いそうなのですが、これもこちらの人にはとても「Cool」に見えるらしい。さすがにNYとか、我が家の近辺のように日本人の多い地域では、さほど目立たないようですが、先日行ったフロリダあたりでは、レジの人が日本人の漢字のサインを見て、「Wao,Cool!」とえらく興奮しているのを見ました。我々から見て、例えばマヤの象形文字とかがかっこよく見えるようなもんかね。

先日ちょっと立ち寄ったブライアント・パークのそばの紀伊国屋では、10人くらいのゴスロリファッションのお姉ちゃんたちが群れをなしていました。ゴスロリってのは多部未華子さんみたいな子がやるとかわいいけど、日本では残念ながら結構残念な方が着ていることが多い気がしてますが、こちらのゴスロリお姉ちゃんたちも半分くらいはちょっと残念な方々でした。でも似合う人はむちゃくちゃ似合う。金髪ってのはそういう意味反則だよなぁ、と思うよね。紀伊国屋では、セーラー戦士のコスプレのお姉さんもいて、これは本物と見まごうような素晴らしいスタイルと美しさ。反則だよなぁ。

アニメやマンガに対する海外の熱狂について、日本人が感じる違和感、というのは、実は浮世絵に対する海外の熱狂に通じるものがある気がしています。浮世絵、なんてのも江戸の漫画みたいなもので、そういう大衆文化が海外で熱狂的に受け入れられ、北斎漫画が欧州の絵画史を根本的に変革した、なんてのも、たぶん明治時期の日本人にはちんぷんかんぷんな現象だったんだろうな、と思う。

でも、日本が明治維新の際に植民地化を逃れた背景には、そういう日本の独自の文化に対する欧州が感じていた尊敬の念も、無縁ではなかったのじゃないか、と思います。それって、裏返せば、いまだに日本の中にある、文化とか表現というものに対する敬意の低さとも関係している気がする。欧米の人は、自分をきちんと表現できるパフォーマーに対して、非常に敬意を払います。映画とか舞台で活躍する俳優さんたちの社会的地位はとても高いし、芸術に対する尊敬の度合いも高い。

日本が、この米国で非常に尊敬されている、愛されていることは確かなことです。震災後の腐りきった政治の混迷を経た後でも、Japan Is Cool、という認識は依然として強い。でもそれは、すでに衰退に向かっている経済力のおかげというよりも、やはり日本という国が持っている文化の力によるところが大きいと思う。日本人の誇り、とか精神、なんてしゃちこばったものじゃなくていいから、地道に日本人としての美学・アイデンティティを発信していくことが、尊敬を勝ち取る近道なのかなぁ、なんて思います。