家族でタングルウッド行ってきました

娘の夏休みに合わせて色んなイベントを企画しているのですが、先週末の土曜日は、家族3人でタングルウッドに行ってきました。今日はその感想を。
 
プレリュードコンサート(オザワホール):
ボードレールの詩による歌曲を集めて
Fellows of Tanglewood Music Center
Trained by Stephanie Blythe(Piano: Alan Smith)

メインコンサート:
Jalbert「Music of air and fire」
Mendelssohn「Violin Concerto」
Rachmaninoff「Symphony No.2」

Conductor:Sean Newhouse
Violin:Sarah Chang

という布陣。
 
昨年パパは一人で行ったので、大体どんな感じか、というのは了解しています。かなり早めに家を出て、気持ちいいにもほどがある、というほど気持ちいい緑に囲まれた道をひたすらぶっ飛ばしていく。道に迷うこともなく(1回だけ曲がり角を間違えたけど)、かなり早めに会場の近辺へ。「本当にこんな所に音楽ホールなんぞがあるのか?」という、昨年のパパと同じ疑問を繰り返し口にする女房と娘に、「信じろ」と言い聞かせながら進んでいくと、突然、立派なゲートが現れます。

到着した時間がかなり早く、まだ15時前。とりあえず野外音楽堂の近くの芝生に、準備してきたピクニックセットを広げて、お茶をする。実に気持ちがよい。コンサートのお客様の入場チェックをするために、ゲートは一旦16時に閉まります。その前に、中にいる方々は一旦ご退出ください、というのがルール。それまでの間、1時間ほど、ビールかっくらってシートでお昼寝。日の高いうちに屋外で飲むビールってのはなんでこんなにうまいのか。

17時30分に会場の門が開く。それでも、日本のイベントのように、長蛇の列になったりしません。天気があまりよくなかったせいもあるかもしれないけれど、せいぜい20人くらいの人たちがゲートの前にばらばらと集まっている程度。我々も入場し、芝生の上に陣取る。雨に備えて、先日の娘の運動会でも活躍した大きなパラソルつきのピクニックテーブルと、売店で買った大きな傘で防護して、まずは、オザワホールのプレリュードコンサートへ。

プレリュードコンサート、というのは、野外音楽堂で開かれるコンサートの前座、として、Tanglewood Music Centerで学ぶ学生さんたち(といってもプロを目指す専門家たち)の発表の場として機能しているように思いました。今回のコンサートは、ボードレールの詩による歌曲を集めたコンサートで、全部で10曲ほど。朗読者と、伴奏者と、歌い手さんが舞台に出てきて、朗読者がフランス語の原詩を英訳したものを朗読。そして、歌曲、という段取り。全部で5人ほどの生徒さんたちが次々に歌う。このコンサートが実に面白かった。

昨年は外から眺めただけのオザワホール、今回初めて中に入ったのですが、木で作られた教会のようなやわらかさと、外気に開かれた開放感が素晴らしいホールです。舞台上の音も柔らかく伸びやかに広がる感じで、決して硬質な感じがしない。とても素敵なホール。

今回の全体の企画と講師を務めてらっしゃったのが、メゾソプラノStephanie Blytheさん。どのFellowの歌い手さんの力量も素晴らしくて、立派にソリストとして立っている人たち、と思ったのだけど、先生のBlytheさんが、同じくコレペティの講師をされているAlan Smithさんの伴奏で歌った2曲は、全然スケール感と表現力が違っていて会場を圧倒。Fellowの皆さんの声や表現のオーラが、歌い手の立っている場所から5メートル、10メートルぐらいの球体のオーラを形作っている感じがして、それぞれの力量によってその球体のサイズが広がったり縮んだりする感じがしたのだけど、Blytheさんのオーラは、オザワホール全体を包み込んでさらに屋外の緑の木々を揺らしているような、世界全体がさぁっとBlytheさんの声に染まるような、圧倒的な存在感でした。伴奏のAlan Smithさんのピアノも、他の伴奏者の方々とは最初の一音からして響きが違う。女房ともども、本物の凄みを実感しておりました。やっぱり体型なんだろうか、と女房が呟く。こらこら。

TanglewoodのFellowshipは、当然ながらオーケストラから歌い手、伴奏者まで数多くのプログラムがそろっています。そう思って会場内を散策してみれば、そこかしこに、小さなスタジオが点在していて、この会場全体が、音楽家たちが小さなアンサンブルやレッスンを重ねることができる音楽村のような環境になっていることに気がつく。そんな小さなスタジオの一つ一つがとても居心地よさそうに作られていて、女房はその一つを指差して、「これ、欲しい」と言っておりました。無理だからね。うん。

メインコンサートが始まる頃には本格的な雨になってしまったのだけど、娘はシートの上に傘を二つ並べてその下にもぐりこみ、「秘密基地みたいで楽しい」とはしゃいでおりました。芝生で初めて聞くコンサートは、スピーカーを通している違和感も少なく、会場内の大きなスクリーンで演奏者の様子も見ることができ、音楽との一体感は決して損なわれません。事前に予約していたランチボックスも堪能。

メインコンサートでは、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を弾いたサラ・チャンさんがエッチ臭かった。いやいや、曲自体がエッチ臭いんだから仕方ないだろう、と女房にたしなめられる。そりゃそうだけど、なんで女性バイオリニストってのは腕と胸元を露出しようとするんだ?バイオリンとじかに触れ合わないといけない、と言う人がいるけど、男性はそんな格好しないだろう。どうも納得いかん。

それにしても、ラフマニノフってのはいいですね。適度にロマンティックで、過剰さもなければ軽薄さもない。非常にバランスが取れていて、それでいて疾走感やアグレッシブさもある。ちょっとまとめて聴いてみたい作曲家。

帰り道は例によって真っ暗な道の上に、局地的な大雨に見舞われて、昨年以上に命の危険を感じながらの帰宅だったのですけど、昨年のように一人ぼっちじゃない分、集中力が途切れることもなく、なんとか乗り切りました。初めての家族でのタングルウッド、雨になったらなったでそれなりに十分堪能した一日でした。