コンチネンタル航空は映画が充実しています。

今回の日本との往復は、家に近いニューアーク空港と成田を結ぶ、コンチネンタル航空の便を使いました。米国発も日本初も午後なので、時間に余裕があるのがうれしい。機内食がおいしくない、とか、アルコール飲料が有料なのは許せん、とか、いろいろご意見もあるようだけど、私は結構気に入りました。なんといっても座席埋め込み型の液晶画面で楽しめる映画の数が半端ない。古い映画から新作まで、100本以上はあるかな。時差ぼけ解消の意味もあって、飛行機の中ではほとんど映画を見て過ごす。見た映画を並べてみます。

・「ベスト・キッドジャッキー・チェンがいい味を出している、という話をちらりと聞いていて、ちょっと見たかった映画。でも前作の方が主人公がいい感じだったなぁ。ウィル・スミスの息子、というジェイデン・スミス君は、父親譲りの徹底的な肉体改造ぶりを見せてくれていて、それはそれで見応えがあるんだけど、同じく父親譲りの軽口の連発が、なんだかノーティー・ボーイっぽくてあんまり感情移入できなかった。とはいえ、ジャッキー・チェンとの間で親子のような情愛をはぐくんでいく過程とか、最後のカンフー試合とかは、前作同様わくわくする。

・「HERO」2002年の映画だから、ちょっと古い映画ですが、まだ見ていなかったので喜んで見てしまう。武侠映画の基本をしっかり押さえた、ある意味劇画的な超人たちの戦いぶりはやっぱり凄い。黒澤の「羅生門」を思わせる複数の物語を鮮やかな色彩で見せる構成もわくわくする。でも個人的には、アン・リーの「グリーン・デスティニー」の方が好きかも。なんとなく、物語に、政治的な意図を感じちゃうんだよなぁ。過去の遺恨を超えて一つの中国を達成するために自己を犠牲にしよう、という精神なんか、なんとなく中国の異民族政策の正当化に見えてしまって気持ちが悪い。監督のチャン・イーモウに対する国策監督という偏見かしらん。

・「プリンス・オブ・ペルシャ」全くの偶然なんだけど、これまた妙に政治色の強い映画でした。原作はゲーム、ということなので、映画の脚本制作段階でそういう政治色が加えられたみたいですね。武器を持たない国に攻め込んだ間違いを、時間を操る能力で過去に戻って正そうとする、なんてのは、イラク侵攻を過去に遡ってやめさせたい、と思う米国インテリ層の良心を示したつもりかね。そういう見方をしてしまう私自身がひねているのだろうか。映像はきれいだけど、あんまり中身のない映画でした。

・「ダーリンは外国人井上真央さんという女優さんが好みなのと、こういう普通の日常生活を描いた日本映画ってのが大好きなので、結構楽しめました。ちょっと井上真央さんをきれいに撮りすぎている感じはしたけどね。締切前の漫画家にしては髪形もメイクも完ぺきすぎる。大竹しのぶさんと國村隼さんがさすがの存在感で、しっかりお話を締めているところがよい。もうちょっと、日本と外国のコミュニケーションギャップみたいなところを描いてほしかった気もしたが。

・「デス・ノート」面白かったんだけど、後味は悪いねぇ。報道機関の使い方とか、なんか平成ガメラに似てるなぁ、と思ったら、やっぱり金子修介だったんだね。キラに殺される犯罪者たちの描き方が極端なので、キラに感情移入する人が増えるだろうなぁ、と思うと、元(あ)法学部生としてはなんとなくやりきれない気分になる。最近の小沢逮捕なんかを見てても、なんとなく日本全体がそういう「疑わしい奴は皆殺し」みたいな方向に流れている気がして気分が悪いんだよなぁ。中村獅童池畑慎之介がよかった。本人出てないだろう。

・「トイ・ストーリ3」やたら評判がよかったんで、一度見ておきたかったんですよね。確かにものすごくよくできた映画で、噂には聞いていたのに、やっぱりラストシーンでほろりと来てしまう。勧善懲悪のお話が単純過ぎるところは、さすがハリウッド、という感じですけど。笑える場面もたっぷりで、ケンのコスプレショウとか、スペイン風バズとか、オモチャのキャラクターが確立している分、楽しめる場面がいっぱい。いつか捨てられてしまうオモチャの悲哀、というシニカルな世界観が背景にあるところは、いつかは食べられてしまう家畜を主人公にした、「ベイブ」の世界観にもちょっと通じる気がした。米国は、捨てることを前提として成り立っている資本主義世界の中心ではあるのだけど、近所でしょっちゅう見かけるガレージ・セールに象徴されるように、意外と、みんな物を大切にしたり、古いものでも平気で使っていたりします。それでも消費意欲が減退しないのは、家の広さってのも関係しているのかも、とも思う。日本の家の狭さで、アメリカ人なみに物を買って物を大事にしていたら、寝る場所なくなっちゃうもんなぁ。

そして米国でTVをつけてみれば、ハロウィーン週間、ということで、どのチャンネルでも恐怖映画特集ばっかりです。日本の夏の怪談特集みたいなもんかね。今回の帰国で、家に置いてあったギターを持ってきたりしたので、映画を見まくっていた大学時代に戻ったような気分でいます。仕事も山積み。がんばらないと。