Tanglewood、メンデルスゾーンとベートーベン〜端正さと熱狂と〜

昨日行ってきたTanglewood音楽祭、今日は演奏会そのものの感想を。
 
メンデルスゾーン 「真夏の夜の夢」序曲
メンデルスゾーン バイオリン、ピアノ、弦楽のためのニ短調協奏曲
ベートーベン バイオリンとオーケストラのためのロマンス第二番
ベートーベン 交響曲第四番

指揮:Susanna Maelkki
バイオリン:Joshua Bell
ピアノ:Jeremy Denk
オーケストラ:Boston Symphony Orchestra

というメニューでした。
 
冒頭の「真夏の夜の夢」が、あんまりTanglewoodの会場にぴったりで嬉しくなってしまう。この曲はいつ聞いてもなんだか幸せな気持ちになりますねぇ。意味もなくわくわくしてしまう。野外音楽堂なのに、音がとてもクリアに響くのにも感動。というか、ボストン交響楽団の音がよく鳴る、ということなんだろうけどね。

指揮者のMaelkkiさんは、とても表情の幅が広い方で、指揮棒なしに、10本の指と細い体を、時に繊細に、時にダイナミックに使ってオーケストラを思う存分鳴らしてらっしゃいました。意外だなぁ、と思ったのですけど、ボストン交響楽団って、すごく律儀でしっかりと音を鳴らしてくるんですね。一種職人芸的な几帳面な感じがする。

それを一番感じたのが、2曲目のメンデルスゾーンの協奏曲。ピアニストのDenkさんが、これはジャズか、と思うくらいに奔放に弾く方で。それをバイオリンのBellさん(若いイケメン)が、しっかり受け止めた上で超絶的な技巧で答える。この二人のやりとりがジャズのアドリブ合戦のような緊迫感に満ちていて、無闇に興奮する。その合間に入ってくるオーケストラが割と律儀で、この奔放さにちょっとついていけていない感じがした。でも逆に言うと、ここでオケまで奔放になってしまったら楽曲全体が成り立たなくなってしまったかもしれない。そういうきわどいところを綱渡りしていくような、それでいて一番高いところでバランスしているような、エキサイティングな演奏でした。

Bellさんのバイオリンを聞きながら、バイオリンっていうのは、人間の声と似てるなぁ、と改めて思う。弓と弦の間の、触れるか触れないか、という絶妙な圧力のかかり具合が、声帯の左右の膜がぴんと張って、一番いいところでぴったり合っていい声になる塩梅に似てる気がするんだね。Bellさんはピアニッシモの時の弦の響きが恐ろしくクリアで、グルベローバやバーバラ・ボニーのベルベットボイスのピアニッシモを思いだす。そのクリアな響きのまま、激しいカデンツァをピアノと競うように弾きまくる。すごい。ベートーベンのロマンスも、耳になじんだ曲なのですけど、これもバイオリンの響きのクリアさに驚嘆しました。

最後のベートーベンの4番を疾走するように駆け抜けて、天国の時間はあっという間に終わりました。今回は音楽堂の中だったので、外の芝生がどんな感じの音響になるのか、よく分からなかったけど、少なくとも音楽堂の中は、すごくクリアに音が響きます。面白かったのは、オケの上に何個もつりさげられたワイアレスマイク。ワイアレスマイクをピアノ線でぶら下げて、集音しているんだね。バイオリニストの立ち位置の上のワイアレスマイクの向きを、スタッフの人が少しずつ少しずつ慎重に調整しているのが印象的でした。

天国の時間は過ぎて、今日は一日家で持ち帰った仕事をしたり、テレビを見たり、のんびり過ごしております。月曜日からはまた下界の仕事が襲ってくるよ。さて、がんばらねば。