映画館も変わったもんだねー

週末、女房と娘と、府中の映画館に「のだめカンタービレ」を見に行く。女房と娘は、別の日にもう二人で見に行っていて、「パパも見た方がいいよ!」と言われ、結局3人で見に行くことにしました。府中駅前の「くるる」というビルの中にある、TOHOシネマ。シネマ・コンプレックスの中には10個くらいの劇場があるんですが、その中でも、プレミエ、という、一番ゆったりした席で見られる映画館でした。このプレミエ席っていうのが、リクライニングのできるゆったりした席で、袖に小さなテーブルまでついていてびっくり。劇場の中はとってもきれいだし、劇場の後方には数人が囲めるテーブル席なんかもある。映画館も変わったもんだなぁ。

学生時代、それなりに映画好きで色々見ていた頃は、とにかく安い名画座の「二本立て」とか「レイト・ショー」に通いまくってました。こういう劇場は汚かった。古い銭湯みたいなロビーにはかすかにトイレの匂いが漂い、劇場の中のシートは破れてクッションがはみ出しており、ごみが落ちていない席を探す方が大変だった。「禁煙」と書かれた警告灯を尻目に目の前でブカブカ煙草を吸っているおじさんに見かねて、「あの、ここ禁煙なんですけど」と注意したら、どう見ても今日の仕事にありつけなかった日雇い労働者のいかつい視線ににらみ返されて黙っちゃった、なんてこともあった。あの時見たのは黒澤明の「デルス・ウザーラ」だったなぁ。「デルス・ウザーラ」というと、あの煙もくもくの映画館のことを思い出します。

本編の前の予告編で、午前十時の映画祭という企画の紹介があり、「何度見てもすごい50本」というタイトルで、「北北西に進路を取れ」とか「カサブランカ」とか「ローマの休日」とかを上映していきます、と言われる。大画面にクリアに映写された懐かしい映画を見ると、ああやっぱり映画ってのは映画館で見るもんだなぁ、と、あらためて思う。確かに、自宅でもハイビジョンで美しい映像が楽しめるようにはなったけど、この映画館の空気とか雰囲気はやっぱり別物だよね。

のだめカンタービレ」はもちろん楽しくて、バカバカしさもスケールアップした一方で、一緒に夢に向って走っていたはずの千秋くんが、のだめにとって大きなライバルとして立ちはだかってくる、というシビアな部分もしっかり描けていてよかった。何より玉木千秋の指揮ぶりは本当に素晴らしいね。女房も「目ヂカラがあるし、ピアノの弾き振りでもちゃんとザッツが見える」と絶賛。テレビドラマの前半の頃に比べると見違えるほどの上達ぶり。指揮指導に、以前ガレ・フィルを振ってくださった角田鋼亮先生と鈴木竜哉先生がクレジットされていて、それも何となくミーハー的に嬉しい。

・・・なんてことを書きながら、何もない週末に、テレビで録りためていた映画を少しずつ見る。この週末は、今公開中の「ゴールデン・スランバー」と同じ、伊坂幸太郎原作、中村義洋監督の組み合わせによる、「アヒルと鴨のコインロッカー」。原作が大好きだった所に、小劇場でのロングラン記録を塗り替えた、という評判を聞いて録画しておりました。

原作を読んでいたから、最初からオチが分かっているのに、役者さんたちの演技が本当に素晴らしくて、ラストシーンではやっぱりうるっと来てしまう。浜田岳さんは本当にいい役者さんになったねぇ。金八先生の頃から図抜けてたけど。松田龍平さんがさすがの存在感。瑛太さん、関めぐみさん、大塚寧々さんも、原作のイメージを全く裏切らない演技で、これは監督さんが本当に伊坂作品を愛しているんだなぁ、と、なんだか嬉しくなってしまう。

去年は映画の興行収入がとてもよかったらしくて、邦画も洋画も好調だったそうです。「のだめ」を初めとするTVとのタイアップ戦略が当たった、ということらしいんだけど、それだけじゃなくて、複数の人たちで同じ空気を共有する「映画館」という場所の魅力を、シネマ・コンプレックスという場所が再度よみがえらせてくれた、という要素もあるんじゃないかな、と思う。そうやってハードが充実して、魅力的なソフトもそろっていく好循環。これから日本映画はもっともっと面白くなってくるんじゃないかな、と思います。邦画はつまらない、なんてのはもう過去の話だね。