秋の北京

今月の頭に行ってきた北京。2年ぶりくらいの来訪だったんですが、本当にきれいになっていて、五輪効果の大きさには驚きました。いくつか感想を雑記帳風に。
 
・やっぱり秋

北京は秋が一番いい、というのは以前も聞いていたのですが、本当にその通りでした。夏はとにかく暑いし、冬は市内の湖面が完全凍結するほど寒い。春は内陸からの黄砂がひどい。秋が一番過ごしやすい。

到着した日が雨で、翌日から動いたのですが、雨が埃を洗い流してくれて、東西の最大の幹線である建国大街から遠くの山並みまで見通せました。翌日はまた白く空がかすんでしまったし、車の渋滞も相変わらずだったので、五輪中の交通規制の効果はあんまり体感しなかったんだけど、それでも随分空気が澄んでいる印象。北京近郊にあった大きな製鉄工場などを移転させた効果なのか、秋と言う季節のせいなのか、よく分かりませんが。

気温もちょうどよく、街中をぶらぶらするには本当にいい季節でした。
 
・地下鉄

最初に北京に行った時に立ち寄って以来、天安門広場に行ってなかったので、夕方の空き時間を利用して、地下鉄に乗って行ってみる。

地下鉄は全線2元で乗り放題。これは5年前くらいから変わっていません。大きく変わったのは乗車券。ICカードになっていました。自動販売機で購入できます。自動販売機は10元/5元紙幣にのみ対応していて、お釣りは硬貨で出てくる。すると、なぜか脇に立っている係りの人が、硬貨を紙幣に取り替えてくれます。なぜだろう。硬貨が足りないからだろうか。

購入したICカードを入場ゲートにタッチするとゲートが開く。日本の自動改札より小型です。降りるときには、カードをスリットに入れるとゲートが開き、そのままカードが回収される。非常に洗練されたシステム。

地下鉄の車内もすごくきれいで、山手線みたいな感じです。壁には液晶モニターがあってCMが流れている。ちょうど夕方だったので、ラッシュアワー。ほんとに山手線に乗っている気分。車内アナウンスはちゃんと中国語と英語で流れているので、初めてでも大丈夫。路線もシンプルなので、日本の地下鉄みたいに乗り換えに迷うこともない。

扉の上に路線パネルが貼ってあり、今車両がどこを走っているか、どちらの扉が開くか、などをランプが点滅して表示してくれている。東京の銀座線にあるのと同じような感じです。面白いのは、進行方向の左右の扉に同じパネルが貼ってあること。例えば銀座線なんかだと、進行方向の左右で、パネルの左右を逆にして、パネルに表示された路線の左右と進行方向の左右が一致するように配慮されていますよね。これが、両側同じになっている。

結果として、パネル上で見ると、点滅するランプは右方向に進行しているのに、実際の列車が左に走っていて、一瞬混乱する・・・なんてことが起こります。日本の地下鉄ってのはこんな所まで配慮されていて、実に行き届いているんだなぁ、と、ヘンなことに感心する。
 
天安門広場

天安門広場には、五輪記念の巨大なオーナメントが沢山あり、夜になるとライトアップされてすごくきれいです。観光客も集まる場所、ということで、セキュリティはとても厳しく、入り口で手荷物検査をしてから広場へ入場。

「同一個世界、同一個夢想」(一つの世界 一つの夢)という五輪のスローガン(これは町中のいたるところに大きな看板と沢山の言語で掲示されている)を表したオーナメントがあり、緑の木々で形作られたそのオーナメントの中に、五輪の例のキャラクターたちが、それぞれスポーツをしている立像が配置されています。広場の中央には巨大な灯籠のようなオブジェがあり、これも夜になるとライトアップされる。とにかく奇麗に飾りつけられていて、外国人も、中国全土から来た観光客も、写真をとりまくっている。


ということで私も撮りました

すると、天安門広場紫禁城側の柵に人がたかり始める。どうしたのかな、と思うと、天安門広場に立っている国旗掲揚のポールの周りに人がたかっている。18時になると国旗を降ろし、紫禁城の詰め所にしまう、という儀式があるんですね。私も広場を出て、天安門広場の向かい側に移動、柵にとりつきました。

人の肩越しに眺めていたのですが、まずは、建国大街を行きかう車が全て一旦停止させられ、天安門広場紫禁城の間の道がぽっかり空きます。そこに、紫禁城側から、20名〜30名ほどの兵士が隊列を組んで行進、国旗のポールのところまで行くと、国旗をするすると卸し、3名ほどでくるくると巻いて、また隊列を組んで紫禁城側に戻っていく、という段取りです。


道路の真ん中を隊列が行く

何もわざわざ大通りの交通遮断しなくても、広場側に詰め所を置けばいいじゃん、と思ったりもしたんですが、国威発揚という意味では大事な儀式なんだろうな、と思いながら見ました。
 
・物価の二極化

北京という街の東西を走る建国大街沿いには、巨大で奇麗なオフィスビルや官庁が立ち並んでいます。私が止まったホテルは、長陽区という所にある国貿飯店の近くで、国貿飯店の下にあるショッピングモールには、お洒落なブティックや奇麗なレストランが一杯。このショッピングモールにあるスーパーとか、パン屋さんで簡単なランチを買ったりしたのですが、50元(750円強)くらいかかってしまう。日本で買うのとさほど変わりません。

一方で、建国大街から少し外れた裏通りあたりを歩いていると、泥で汚れた通りにテーブルを並べた食堂や、野菜や果物を無造作にならべた露店などがある。そのあたりの普通のレストランで腹いっぱい食事をすると、1人あたり20元(300円くらい)でお釣りがくる。


こんな街並み

要するに、北京の表通りと裏通りで物価が二極化しているんです。例のメラミン入り粉ミルクの問題が報道された時にも、「金持ちはそんな安い粉ミルクは買わない」という話がありましたけど、建国大街沿いのスーパーで売っている商品と、裏通りの泥に汚れた露店で売っている商品では、値段の格差が10倍くらいある。そんな安い商品に品質を求めること自体間違っている、というのが現状なのかな、という気がしました。

娘のお土産のチャイナドレスを買ったのは、秀水市場(Silk Street)という大きなテナントビル。昔の「秀水市場」というのは、秀水地区に広く広がる露店街だったそうですが、今では全て壊されてしまって、お店はこのテナントビルに収容されてしまったそうです。観光客が沢山いるので、地元の人は立ち寄らないようなお店みたいですが、ここでも価格はあってないようなもの。娘のチャイナドレスも、最初580元、と言ってきたのだけど、250元まで値切って買いました。でも多分、地元の人が買えば100元を切るくらいの品物なんだろうな、と思います。
 
チベット料理とチベット音楽

会合相手の方が夕食に招待してくれて行ったのが、秀水南街という、北京の中ではちょっと洒落た通り(近くに各国の大使館街がある)にあるチベット料理のお店「瑪吉阿米 (Makye Ame)」。同じ店に行った方が店内の写真を載せているページを見つけました。http://www.geocities.jp/mk88km/2004/0409beijing/049beijing.html

料理の味についていうと、中華料理とは明確に違って、香辛料の使い方などが、トルコ料理やインド料理のような感じがしました。実際、串焼き料理を頼むと、トルコ料理ケバブのような感じのする料理が出てきました。どの料理も実に美味しい。肉料理が多い感じがするのだけど、チベットだからラマ肉だけ、というわけでもなく、鳥も豚も牛もあります。

面白かったのは、店内で演じられたチベット音楽のライブ。上記のサイトでも紹介されていますが、5人くらいが並ぶと一杯になるような小さなステージでの歌と踊り。どれも素朴なメロディーと土臭いステップの民族舞踊なんですが、伴奏にはアコースティックギターや電子楽器も使われていて、どことなく現代的なアレンジが加わっています。多分オリジナル曲はもっと土臭いものなんじゃないかと想像。歌手の顔などを見ると、漢民族よりも日本人に似ているような感じがします。日本に来たらすげぇ人気が出るんじゃないだろうか、と思うようなイケメン兄弟のデュエットとかが出てきたりする。


こんな感じ

アコースティックギターだけでなく、胡弓も勿論使われているのですが、マンドリンくらいの大きさで平べったい琵琶のような形状の弾弦楽器も使われていました。一番圧巻だったのは、全員が1.5メートルくらいの棒を持って無伴奏で歌った歌。棒の先端には厚みのある円盤がついていて、その円盤で床を叩きながら、足踏みでリズムを合わせて歌う。その棒で、地面をならしているような動作。想像ですが、畑の地ならしか、あるいは家を建てる時の整地のときの歌ではないかな、と思いました。

驚いたのは、この歌が、日本の民謡にそっくりなんですね。音階もアジア音階なんだろうけど、いわゆる中国音階ではなくて、日本民謡の音階なんだと思います。リズムの取り方、メロディーとこぶしの入れ方など、「最上川舟歌」なんかと聞き間違いそうなくらいによく似ている。

中国の内陸部には日本にそっくりな生活様式を持っている少数民族がいる、という話を聞いたこともあります。同じモンゴリアンとしての文化の共通性を実感した夜でした。