世間は狭い

先週の日曜日、娘を連れて青山教会に行く。以前さいたまオペラで舞台をご一緒した、ソプラノ歌手の岡村正子さんが、古楽器のアンサンブルの「ラ・カリテ」というグループの演奏会に客演される、というので、案内をいただいたのです。ちょうど、女房が「美しきエレーヌ」の練習で外出している時間帯だったので、娘とのデートにはちょうどよかろう、と出かける。

青山教会という所は、建物の大きさの割に天井が高くて、小さなホールでのサロン・コンサートにあこがれている私としては、とても手ごろな広さ。50名〜60名程度のキャパの教会の中は満席。演奏は、リコーダを始めとする様々な木管古楽器の温かい響きと、ヴィオラ・ダ・ガンバの優しい音色、チェンバロの輝かしい音の粒が絡み合って、とても和やかな雰囲気の演奏会でした。岡村さんの声は、まだまだ声量はないのだけど、持ち前の中音域の柔らかな響きが、古楽器の丸い響きにうまく溶け合っていて、会場の規模とのバランスもよく、耳に心地よかったです。娘に言わせると、「ちょっと地味な曲が多いね」とのこと。そりゃ、毎週オッフェンバック聞いてりゃそう思うだろうけどさ。

岡村さんはモデルの仕事もされているとても綺麗なお嬢さんなのだけど、「美人ソプラノ歌手」という言葉のイメージからはおよそ遠い、とっても愛らしい方です。岡村さん、お疲れ様でした。また演奏会があったら、是非ご案内くださいね。それにしても、古楽器の世界ってのは無茶苦茶奥が深い、というか、オタクな世界だねぇ。

演奏会のスタッフ、ということで立ち働いている女性がいらっしゃって、どこかで見たことのある方だなぁ、とずっと思って見ていました。演奏会の前半が終わり、牧師さまのお言葉があって、その女性が、「では、皆さんで賛美歌を歌いましょう」とおっしゃって、それはそれは透き通った朗々たる美声で歌い始める。入り口にあったチラシと見比べて、あ、これは間違いない、と思い、休憩時間中に声をかける。

「ひょっとして、青戸知さんの奥様じゃないですか?」

やっぱりその通り、青戸知さんの奥様のソプラノ歌手、一小路千花さんでした。青戸知さんの息子さんが、私の娘の通っていた幼稚園に通ってらっしゃったので、一度だけ、幼稚園の園庭で女房ともども立ち話をしたことがあったのです。「まぁ、こんなところで、幼稚園のお知り合いに会えるなんて」と、双方感激。一小路さんは、ご夫婦そろって、青山教会や渋谷教会などで、チェールズ・ウェスレーの賛美歌を中心としたクリスマス・コンサートをやってらっしゃっるそうです。入場無料で青戸さんご夫妻の歌声が聞ける、なんてすごいなぁ、と思ったのだけど、渋谷教会のコンサートは、残念ながら平日の夕方だったのでうかがえず・・・。教会コンサートっていうのは、意外と素敵な演奏会が多いのかもしれないなぁ。それにしても世間は狭いなぁ。

・・・と思っていたら、昨日、仕事でお邪魔した某法律事務所でのこと。ミーティングが終わって、廊下に出てきたら、廊下にかかっている絵が、どこかで見た絵である。フランス人形の絵と、バラの絵・・・絵の下に、「笠松宏有」という名前を見てびっくり。この日記にも紹介したことのある、S弁護士のお義父さまの絵じゃないですか。

ミーティングに出ていた弁護士さんに、「この画家の絵がお好きなんですか?」と伺うと、「いや、実はこの画家の娘さんが、私の親友なんです・・・」と。え、ということは?と話が盛り上がって、聞いてみると、S弁護士夫妻の大親友にあたる方でした。ガレリア座の舞台にもいらっしゃったことがあるそうで、お互いかなり驚く。亡くなった笠松画伯がプレゼントしてくれた、ちょっと嬉しい偶然でした。いやほんとに世間は狭いよ。