名曲喫茶ミニヨン Cafeconc〜「アメリカ」異郷の夏〜

女房と二人して、「都内で、小さなサロンコンサートを開けるようないい場所はないかねぇ」と最近話しておりました。わりと近所にいい場所を見つけて、何度か使ってみたりしたんですが、そこの経営方針として、「大きな声で歌う方々にはお貸しできません」(?)というご方針をお持ちとのことで、今後は使えそうになく、別の場所を探していたのです。すると女房が、

荻窪の駅前に、名曲喫茶ミニヨンという所があって、ここがなかなかよさそうだ」

と言い出す。ネットで見つけたのだそうです。「定期的な演奏会のプログラムも持っているみたいだよ」と、ネットに出ている演奏会スケジュールなどを見ておりましたら、演奏者の中に、大船渡の演奏会でご一緒した、ヴァイオリンの漆原直美さんのお名前を見つける。うるちゃんに会えて、サロンの雰囲気も味わえるとなりゃ、一石二鳥じゃん、と、昨日、行って参りました、名曲喫茶ミニヨン、Cafeconcシリーズ。

〜「アメリカ」異郷の夏〜

〜演奏者〜
道橋倫子(ヴァイオリン)
漆原直美(ヴァイオリン)
冨田大輔(ヴィオラ
藤井泉(チェロ)

というタイトルと布陣で、ドヴォルザーク弦楽四重奏アメリカ」を中心としたプログラムでした。

荻窪の駅から5分くらいの雑居ビルの2階の店舗。さほど広くはない店内。普通の雑居ビルによくある喫茶店と同じくらいの広さだと思うんですが、壁をびっしり埋めたクラシックのレコード(CDではない!)にまず圧倒される。カウンターの裏がギャラリー兼控え室になっていて、出演者はそこに控えている。フロアにあるグランドピアノと、落ち着いた感じのいろんなインテリアがとっても素敵。これはいい空間、と、女房と頷きあう。客席は全部で30くらいなんですが、次々とお客様がいらっしゃって、補助席のパイプ椅子を沢山並べて、結局40名くらいのお客様が入りましたか。1ドリンク付きで1500円。それで、本当に目の前に演奏者が座る。これはいいですよ。

ちなみに、うちの女房はドヴォルザークがあんまり好きじゃないんですって。「田舎モノが東京に出てきて、シティ・ボーイのファッションだけ真似したけど、方言は丸出し、みたいな感じがするんだぁ」とのこと。メロディーは本当に美しいのだけど、なんかもっさりした、くさーい感じが、垢抜けなくて好きになれないんだって。

そういうことは私にはよく分からんですし、そもそもが、弦楽四重奏の演奏をこんなに間近で拝聴したのは初めてだったもんですから、十二分に堪能しました。前半のプログラム「糸杉」からの抜粋で、「ああ、かけがえのないいとしい人」という曲とか、とても胸に響きました。

弦楽四重奏って、すごく濃密な会話劇を聞いているような感覚がありますね。一人が語り、次の人物が語り、まわりが相槌をうち、全員が口々に喋り、全員が一斉に同じ言葉を喋りだす。すごく濃密な感じがする上に、空間自体がとても圧縮された空間ですから、客席と演奏者が本当に一つになった、一体感のあるライブ空間を楽しむことができました。1stヴァイオリンの道橋さんもシカゴで学ばれているそうですし、漆原さんはサンフランシスコ出身ですから、アメリカ的な色合いを出すのはお得意なんでしょうか。ヴィオラの冨田さんも落ち着いたトークと安定感で全体を支えてらっしゃいました。

個人的には、チェロの藤井さんが見ていて楽しかった。「見ていて」というと失礼で、演奏も勿論、安定感とスピード感があって見事なんだけど、とても可愛い顔立ちのお嬢さんで、通奏低音をただ鳴らしている間でも、大きな丸い目をくるん、と見開いて、メロディーとフレーズを一生懸命追いかけているような感じ。全身で音楽をつかまえて、全部楽しんじゃえ、というような、明るい楽しげな表情が可愛らしくて、オジサンはかなりメロメロになってしまいました。漆原さんにも、「確かに藤井さんって、ロリコン好みですね。」と一刀両断されてしまった。悪かったね、ロリコンで。途中で弓を取り落としてしまうトラブルもあったのだけど、ペロッと舌でも出しそうな笑顔で何事もなかったかのように演奏に戻っていって、さらにオジサンはドキドキしてしまったのでした。まだ大学3年生なんだねぇ。今後のご活躍をお祈りしております。

お目当ての漆原さんは相変わらずとてもお美しくて、きりりとした安定感ある演奏。終演後、少しお話できたのですけど、この秋に横浜でコンチェルトを演奏されるそうで、なんとか都合をつけて行けたらなぁ、と思っています。漆原さんはもちろん、他の演奏者の皆さん、ミニヨンのオーナーさん、本当に素敵な時間と空間をありがとうございました。この空間で自分達も、小さなサロンコンサートとか、開けたらいいなぁ、と思います。