「新耳袋」〜世に怪談のネタは尽きまじ〜

東映チェンネルで、「新耳袋」のTVシリーズと劇場版を一挙に放送するというので、思わず録画。週末、早朝に起きだして一人で見てしまいました。全部で6時間以上ぶっ続け。女房と子供には見せられないからねぇ、そういう時間にしか見られないのだよ。

怪談、というのは昔から好きなんです。「新耳袋」は、実話を元に脚色したもの、とのことですが、ネット上なども、この手の「本当にあった怖い話」が溢れてますよね。都市伝説が生まれてきたりする温床だったりする。ネット上の「本当にあった怖い話」から都市伝説に至る一つの現象というのは、神や仏と密接につながっていた昔の豊かな精神世界がやせ細っていく過程で、補完的に発生している現象のような気もする。そういう社会的な背景は別として、「新耳袋」というのは、短編の怖さ、という点で、「トワイライトゾーン」から脈々とつながる短編ホラードラマの一つのジャンルと考えていい。かつての「世にも奇妙な物語」にも通じる、短編ドラマの秀作群。短編ドラマの中で、恐怖、という感情をきっちり表出させるためには、相当洗練された演出技法が必要です。この作品群が、清水祟を初めとするジャパンホラーの旗手を数々生み出している、というのもうなづける。

東映チャンネルで放送されたのは、「新耳袋」のシリーズの全部ではなく、一部の抜粋だったようです。放送された中で、特に印象に残った作品を、思いつくままに並べてみます。「エレベータ」「さとり」「待ち時間」のシリーズは、まさしく「呪怨」ビデオ版の原型のようなテイスト。清水祟さんの作品なんですね。「背広返し」は好きでした。同じく「石つぶて」とかの妖怪話もとぼけていて大好き。何より怖かったのは、「妹の部屋」。「開けちゃだめ」とか、「修学旅行」、「恋人」「正座する影」とかも怖かった。劇場版では、「姿見」が結構効いたなぁ。

吉田秋生さん、という演出家は、TBSの秀作ドラマを次々手がけている方で、ホラーものにも強い方なんですが、まさか小川範子さんと結婚したとは知らなんだ。この二人、随分昔に、「魔夏少女」という2時間ドラマで、主演女優と演出家、という形で一緒に仕事をしていたはずですが、その頃から目をつけてたのかねぇ。このドラマも中々怖かったです。日本版キャリー、という感じ。

こういう怪談話、自分自身はそんなに経験したことはないんですが、友達から聞いた話とか、いくつかネタを仕入れたことはあります。最近も、ガレリア座で、怖い話知りませんか、という話を聞いたら、

・冬場の旅館で、夜、外を眺めていたら、常人とは思えないスピードで滑っている女の子がいた
・ドライブ中に、電柱の下に立ってる女の子の腰から下が見えなくて、慌てて逃げた

なんて話を聞きましたっけ。

幽霊やお化け、というのは、生きている人間の感情が、その場に淀んだいろんな死者たちの感情の残像に共鳴して起こす現象なのかな、と、個人的には思っています。最近は幽霊よりも生きている人間の方がよっぽど恐ろしい時代。幽霊や妖怪にシンパシーを感じるのは、ファンタジーの欠落した現実社会を補完するものを、無意識に求めてしまうからでしょうかねぇ。